第拾八話
命の選択


エヴァ参号機を吊り下げた巨大な全翼機は低空飛行を強いられていた。
十字架に張付けられた格好で吊されたエヴァ参号機。

「エクタ64よりネオパン400へ」
「ネオパン400了解」

「前方に積乱雲を確認した。指示を請う」
「ネオパン400より、積乱雲の気圧状態は問題なし。航路変更せずに到着時間を遵守せよ」

「エクタ64了解」
全翼機は雷鳴の轟く積乱雲の中に吸い込まれるように入って行った。



「じゃあ、松代まで行ってくるから」
ミサトは、玄関で靴を履きながらアスカに告げる。

「行ってらっしゃぁい、お土産よろしくねぇ」
アスカは脳天気に送り出す。

ミサトは松代での起動実験で参号機に搭乗するために、朝から移動だ。
そして、ミサトの居ない間、加持が泊りに来る事になっていたが、

「14歳の少女をわざわざ狼の前に差し出す気?!」
とアスカに言われ、加持に限って子供に手を出す事は無いとミサトは思っているのだが、当のアスカが拒絶するならしかたないと諦めた。

大体、今更、家を空けるからと代理を頼むのもわざとらしい。
今までだって帰って来ない日はあったのだ。

前の世界でも、アスカとシンジ二人っきりにする事が単に心配で加持に頼んだだけだ。

ミサトが出ようと玄関の扉を開け様とした時チャイムが鳴り、ドアが開くとケンスケが現れた。

「おはよう御座います!」
深々と頭を下げるケンスケ。

「本日は、葛城3佐に御願いに上がりました!」
「自分を!自分をエヴァンゲリオン参号機のパイロットにしてください!」
ケンスケはミサトを真っ直ぐに見、その様な言葉を発すると頭を直角に下げた。

「へ・・・・」
「クエ・・・」
ミサト、ペンペンは突然の事に呆気に取られる。

「あんた馬鹿ぁ?犯罪者が人類を護るパイロットに成れる訳ないでしょ!」
アスカは辛辣な言葉を浴びせる。

「犯罪者ってアスカ・・・」
ミサトは、単にシェルターを抜け出した少年としか認識していなかったので、アスカの言い方は余りだと感じ庇おうとする。

両者の立場など理解しようともせず、ただその場の感情で行動するミサトのミサトたる所以だろう。

「だって、こいつ盗撮した写真を売ってたから、今も保護観察が付いているんでしょ!」
「な、なんで惣流がそこまで知ってるんだよ!」
ケンスケは自分が学校に再登校した時には既にアスカは居り、大人しくしていた自分のそんな過去等、知る故もないと思っていたのだ。

「あんた馬鹿ぁ?あたしが転入した時には、皆、あんたの事を盗撮魔って言ってたわよ」
「くっ!」
ケンスケは涙を流しながら走り去っていく。

「アスカ、そこまで言わなくても・・・」
「あいつがパイロットなんかになれば安心して更衣室に入れないわよ?!」

「た、確かにそうね・・・」
ミサトも自分が盗撮されるところを思い浮かべ身震いする。
ふと今日の下着の色と形を思い浮かべ安心するミサトだった。

「じゃぁ行って来るわね、留守中もあんまり羽目を外さないようにね」
「はいはい、解ってるって」
そう言いながらもアスカはお泊まり気分で顔は綻んでいた。



「どう言う事ですか?ゲンドウさん」
「・・・・・」
病院ではユイがゲンドウに詰め寄っていた。

「綾波レイ・・・私の代りにサルベージされたリリスの欠片。それを利用してゲンドウさんは一体何を企んでいたのです?」
「・・・お前にもう一度会いたいと思ったのだ」

「はぁ・・・何を仰って居るのです?貴方はあの頃ナオコさんとお付合いしていたでは無いですか。私の実験を諸手を挙げて賛同してらしたわ」
「・・・・・」

「そして、娘のリっちゃんにまで手を出して、どの面を下げて私に会いたいと?」
「・・・そうするより、彼女らの協力を得る手段が無かったのだ」

「本当に可愛い人、でも私の邪魔をするのは許せませんわ、今すぐキールお爺さまに会わせてくださいな」
「・・・それは出来ん」

「私がサルベージされた事を黙っていらっしゃるから?そんな事は関係ありませんわ。それとも、私が勝手に連絡を取って宜しいのかしら?」
「・・・わ、解った、連絡を取るから待っていてくれ」

「明日までに返事を下さいな。それ以上は待てません」
「・・・問題ない」

「全く、エヴァを量産して儀式を行うなんて本末転倒だと解らなかったのかしら」
「・・・・・」

「綾波レイ・・・危険ね。自我を持ったリリスに成りかねないわ。下手をするとシンジのための世界に成りかねない。そしてシンジに対する待遇。どう転んでも人類は破滅だわ」
「・・・何故だ」

「自我の欠けた人間は他人による補完では満たされない。既に他人を拒絶しているから。愛情に満たされた人間こそが他人により補完され完全になる可能性がある」
「・・・・・」

「現状で神に近付くことが出来るのは、私達から見ても満たされている人間が、その意志を持っていないと無理ですわ。その意志がなければ他人を受け入れる事なんて出来ませんもの」
「・・・だからお前はエヴァと言う箱船に乗ったのか?」

「そうとも言えるかも知れませんわね。でも私こそ人類に絶望していますわ。10年経っても何も変っていませんもの。セカンドインパクトを経たと言うのに学習していませんわ」
ユイはそう言うと窓の外に眼を向けた。
差し込む光を悲しそうに見つめながら。

「・・・ユイ」

「シンジと綾波レイに会わせて下さいな」
「・・・解った」

八方塞がり状態のゲンドウ。
ゲンドウは色々とユイに隠しておきたい事があるのだが、冬月がユイに頼まれると何でも渡してしまい隠す事ができない。
現在のNERVの状況や、ここに至った経緯は概ね正確にユイに掌握されていた。



翌日、松代で事故が起こる。

『松代で爆発事故発生、被害不明』

「救助及び第3部隊をすべて派遣、戦自が介入する前に全て処理しろ」
冬月が現場が離れている事に焦りを覚え指示を出す。

情報の隠蔽作業に支障をきたすと考えたのだ。

「了解」

「事故現場に正体不明の移動物体を確認」
「パターンオレンジ、使徒とは識別できません」

「第1種戦闘配置」
パターン青が使徒とされている。
しかし、パターンが発生する時点でそれは人類にとって驚異のエネルギーを有しているのだ。

それを知っているゲンドウは直接指示を出した。

『総員第1種戦闘配置』
『地対地戦用意』

「野辺山にて目標の移動物体の光学で確認」
メインモニターに参号機が映し出され、発令所にざわめきが起こった。

「やはりこれか・・」
冬月は呟いた。

「活動停止信号を発進、エントリープラグを強制射出」
相手がエヴァであれば、こちらからの信号により停止する可能性がある。
ゲンドウは指示を出した。

「駄目です。停止信号、及びプラグ排出コード認識しません」
マヤが報告する。

「パイロットは?」
「呼吸、心拍の反応はありますが・・・恐らく・・・」

「厄介だな・・」
「エヴァンゲリオン参号機は現時刻を持って破棄、目標を第拾参使徒と識別する」

「しかし!」
「予定通り、野辺山で戦線を展開、目標を撃破せよ」
オペレータが何か言おうとしたが、ゲンドウが高圧的な命令で黙らせる。

昨日のユイの要望から、シンジとレイはNERVに呼び出されていた。
そこへ松代の事故の報告が入り、シンジとレイはユイと接見する間もなくエヴァに搭乗する事となった。

「目標を確認」

『・・・これが目標ですか?』
シンジは静かに確認した。

シンジの眼に映っているのは、モニターに映し出される黒いエヴァ。

「ああ、そうだ」
何の躊躇もなく答えるゲンドウ。

『使徒に乗っ取られたの?』
アスカが呟く。

『・・・誰が乗っている?』
『あんたまだ知らないの?!キャアア!!!』
『アスカ!!』

弐号機が参号機に攻撃され、ビルを突き破り山に激突した。
「弐号機、目標により攻撃を受けました」
「弐号機中破、セカンドチルドレンは脱出しました」

参号機は弐号機に一瞥をくれた後、道を進んだ。

「レイ、目標はそちらへ向かった。近接戦闘は避け、攻撃しろ、初号機を向かわせる」

『・・・了解』

『・・・乗っているわ・・・彼女』
レイが呟く。

『ハッ!・・ウッ!速い・・・』

参号機が突然、視界から消え、激痛が走った。
零号機が参号機に押さえ込まれたのだ。

レイは慎重に警戒していたのだが、参号機のスピードは想像を上回っていた。

『ゥゥゥ・・ゥゥゥ・・』
参号機から液体の様なものが零号機に滴り落ち、レイが苦痛の声をあげる。

「零号機、右腕、侵食されています」
マヤが叫ぶ。

「切断しろ」
静かに指示を出すゲンドウ。

「えっ?し、しかし・・・」
マヤがその命令に困惑して振り返る。

「切断だ」
有無を言わせぬゲンドウの命令が下る。

「は、はい」
その恐ろしさに返事をし、神経接続を切らぬまま零号機の右腕を切り離すマヤ。

「ゥハァー!ゥゥ・・」
右腕を切断された痛みがレイを襲う。

『綾波!』
一気に参号機との間を詰め、蹴り上げる初号機。

『大丈夫か?!綾波!』
『・・・えぇ』

「何をしているシンジ!使徒を殲滅しろ!」
零号機に駆寄るシンジに対しゲンドウが冷酷な命令を告げる。

『何故切断した!答えろ!ゲンドウ!』

「・・・使徒の侵食を食い止めたまでだ」
『そんな事は聞いていない!何故、神経接続を先に切らなかった!』

「・・・迅速な処置を施したまでだ」

『ふざけるな!腕が全て侵食されるまでは時間があっただろ!』

「シンジ君、そうしなければ零号機が使徒に乗っ取られていたかもしれないんだ」
おろおろするマヤを見かねてマコトが口を開いた。

『しかたがなかったと言うんだな。その言葉を忘れるな!日向マコト!』
シンジはそう言うと参号機に向かい一方的殺戮を行う。
手を引き千切り、胴体もぐちゃぐちゃに潰す。

「シ、シンジ君!それには葛城さんが乗っているんだ!」

『だからどうした?使徒を殲滅するためには仕方ないんじゃないのか?』

「シゲル!」
「まだ、パターン青は健在だ」
マコトの叫びにシゲルは小さく答えた。

参号機の首を折り、エントリープラグを抜き出す初号機。

「パ、パターン青消滅!使徒消滅しました」
今、まさにエントリープラグを初号機が握り潰そうとした時にシゲルの報告が響く。

ちっと舌打ちをし、エントリープラグを放り出すと、シンジは零号機の元へと向かった。

『フハッフハッハッ・・・』
レイは未だ、強制的に切断された腕の痛みに呻いている。

零号機を優しく抱き上げ本部に戻る初号機。



「何故、神経接続を先に切らなかった」
発令所に戻ったシンジは、入るなり、そう言った。

後ろには、片腕を三角巾で吊したレイを伴っている。

「・・・お前には関係のない事だ」
ゲンドウが威圧的に答える。

「伊吹マヤ!」
「ひっ!」
びくびくとしていたマヤがシンジの声に裏返った声をあげた。

「神経接続を切る時間はあったな?」
「は、はい」

「何故、神経接続を先に切らなかった?」
「そ、それは司令の命令が・・・」

「命令なら隣人でも殺すか」
「そんな事は言っていないだろうシンジ君!」
マコトがシンジの言葉に大人のプライドだけで言い返した。

「ふん!」
「きゃっ!」
シンジはそんなマコトに目もくれずマヤの右腕を掴みあげた。

「何をするつもりだ?シンジ君」
「綾波と同じ痛みを味わえ」
そう言うとシンジはマヤの右腕を引き千切る。

「ぎゃぁ〜!!」
肩から腕を引き千切られ夥しい血を噴出させながらマヤが床でのたうつ。

「マ、マヤちゃん!」
シゲルが慌てて救護班を呼ぶ。

シンジは既に興味を無くしたようにマヤの腕を投げ捨てるとゲンドウ達が居る発令所の上段に来ていた。

「シ、シンジ君!君は何をしたか解っているのかね」
冬月がシンジの異常な状態にも情勢を自分達に優位にしようと試みる。

「ぐはっ!」
シンジに突き飛ばされ壁に激突する冬月。

階下では、マヤの腕とマヤを担架に乗せ救護班が運び出していた。

黒服達が発令所に雪崩れ込んで来る。
事態の異常さにゲンドウが呼び出したのだ。

しかし、レイがその行く手を阻む。

「・・・レイ!何故だ?」

「・・・碇君の邪魔をする者は許さない」
黒服達はシンジとレイの異常さを知っている。
とりわけレイが人外の力を持っている事は衆知であり、シンジがやったこともレイがやった事として皆、納得していたのだ。

そのレイが行く手を阻んでいる。
黒服達もそこから先に進む事はできなかった。
何より命じられている事はシンジの拘束だったのだ。
レイに対し危害を加える事は出来ない。

「・・・シンジ貴様・・・」
ゲンドウが何かを言い終わる前にシンジはゲンドウの机に肘を付けて組んでいる右腕を掴んだ。

「綾波と同じ痛みを味わえ」
そう言うとマヤと同じように右手を引き千切るシンジ。

「ぐはぁ!」

「シンジ君!」

シンジはゲンドウの右手から手袋を外し、発令所に向かってその掌を見せる。
「貴様らは自らの身体にこんな物を植え付けている人間の言う事を聞いていたんだ」

「「「!!」」」

「・・・ぐぅっシンジ・・・貴様・・・何を知っている」

シンジはゲンドウを一督すると、ゲンドウの右手をシゲルに投げつけた。

「ひっ!」
「加持一尉にでも聞くんだな、それが何なのかを」
そう言ってシンジはレイを伴い発令所を出て行こうとした。

「・・・ま、待てシンジ、こんな事をして只で済むと思っているのか」
肩を押さえ出血多量のため顔を青ざめさせながらもゲンドウが声を発する。

「お前達こそ、今まで生かして貰っていたことを知るんだな」
そう言うとシンジは、何かを思い出した様にゲンドウの右腕を掴みあげ、発令所を後にしようとする。

「・・・ど、何処へ行く」
「母さんの所さ、今日はそのために呼びつけたんだろ?」
その言葉を聞くとゲンドウも倒れ落ちた。

既に出血量が多く限界だったのだ。

しかし、マヤのためにはすかさず救護班を呼んだシゲルだったが、ゲンドウのために救護班を呼ぶ人間が発令所に居ない。

漸く正気に戻った冬月が慌てて救護班を呼びつけていた。



ユイの病室に入るとゲンドウの腕をユイに放り投げるシンジ。
「お土産だよ」

「きゃっ!」
叫びながらもその手を観察するユイ。

「こ、これは・・・」
「ゲンドウが神経接続も切らずに零号機の右腕を切断したんでね、同じ眼に遭わせてやっただけさ。そいつが欲しいならあげるよ」

「貴方はシンジなの?」
「そのようだね」

「後ろに居るのが綾波レイちゃんね」
ユイはここに来て優しい母親を演じるつもりのようだ。

「・・・そうよ」
レイはユイを睨付けていた。

「まぁ僕は有る意味母さんに感謝しているよ、母さんが馬鹿なことをしなければ綾波には逢えなかったからね」
「シンジ・・・貴方何を知っているの?」

「質問責めだね。自分の欲望のために捨てた子供に何の罪の意識も感じないか。まぁそうだろうね」
「悪かったわ、でも貴方には謝っても許して貰えるとは思っていないのよ」

「僕が許す許さないと、貴女が罪の意識を感じているのかいないのかと言う事は全く次元の違う話だと思いますけど?」
「そうね、貴方の言う通りだわ」
ユイは、自分の息子ながら頭が切れ論理的に物事を判断する能力に驚いていた。

それは、とても中学生の言葉とは思えなかった。

「私が出てきたのはレイちゃんの力かしら?」
「さぁ?綾波なんかしたの?」

「・・・私は何もしてないわ」
そう、レイはシンジに手伝ってくれと言われたが、実質的にはユイに関しては何もしていない。
どうすれば良いのかシンジに聞いた時、シンジはただ抱締めていてくれれば良いと言っただけだったのだ。

「レイちゃん、貴女はリリスなの?」
「・・・そうよ」
事も無げに真実を告げるレイ。

基本的にレイは嘘を付かない。
言っては行けない事は黙ってしまうのだ。

そして、今、レイにその命令が出来るのはシンジだけである。
しかし、シンジはレイにそんな命令はしない。

「シンジはそれでもレイちゃんが好きなのね」
「それでもって何さ?僕に取って綾波は何者にも勝る存在なんだよ。例え全人類が滅亡すると言っても、僕は綾波を選ぶよ」

「自分よりも?」
「くっくっく、そうだよ、でも僕が居ない世界を綾波は望まないだろうし、僕も綾波の居ない世界は望まない」

「そう、私はどうすれば良いの?」
「そんな事、自分で考えてよ。少なくとも僕達はNERVから追い出されるだろうから、もう会う事もないと思うよ」

頭の良いユイは、既に自分達の計画は瓦解していると知った。
そしてNERVはシンジ達に弄ばれていると言う事も朧気ながら理解した。

「使徒は倒さなければならないわ、今、NERVは貴方達を追い出す事は出来ないわ」
「どうかな?司令の腕をもぎ取った凶悪犯だよ?」
そう言ってシンジは笑う。

その笑顔は、天使の様であり、そして悪魔の様でもあった。

ぴとっとシンジに寄り添うレイ。

「・・・碇君は私が護る」

ユイは、備え付けの電話を取ると冬月を呼び出した。

「えぇ、今回のシンジ達の行いを不問にする事、でなければエヴァに乗る人間が居なくなりますわ」
「弐号機だけで今後の使徒に対抗できるとでも?結局シンジ達を呼び出す事になるなら、追い出すのは得策では無いのではないですか?」
「貴方達に二人を止める力があるのですか?追い出した二人を呼び戻す力があるのですか?」
「怒らせれば、それなりの報復をする人間、そして報復される事をしたと言う事を認識されていないのではないですか?」
「えぇ解っていますわ、ゼーレには私の方から報告致します」
「それではよしなに」

ユイは最善の選択をした。
シンジはこの後、マナ達を連れて第三新東京市を離れようと考えていたのだ。
次ぎの使徒はゼルエル。
いくら今のアスカでも弐号機単独で勝つのは不可能である。
それより、アスカ自身が弐号機単独では出撃しないだろう。
今のアスカはエヴァに拘っていない。
むざむざと痛い思いをし、死ぬかも知れない戦場に出る事を選択しはしないだろう。
何よりシンジ達がこの街を離れると知ったら付いてくる可能性の方が高い。

電話を切ったユイは二人の方を向く。
「これで貴方達はお咎め無しで今まで通りNERVに接する事ができるわ」

「まぁ公式見解がどうだろうと、僕達が発令所に居る人間達に受け入れられる事はもう無いと思うけどね」
「ゲンドウさんの腕をもぎ取ったから?」

「実施したオペレータの腕も引き千切ったから」
「それって誰?」

「伊吹マヤ」
「!!リっちゃんの片腕ももぎ取ってしまったのね」
「すぐに救護班が来たから、彼女の腕はくっつくんじゃないかな?」

「何故、そんな事を」
「綾波の痛みを味あわせてあげただけさ」
そう言いながらシンジはレイを抱き寄せる。

レイはシンジのそんな動作に抗う事はなく、そして恍惚の表情を浮かべる。

「解ったわ、今後は私が貴方達に危害を加えるような真似はさせない。だから全ての使徒を倒してくれないかしら」
全ての使徒を倒した後に初号機が残っていればユイは自分の望みを叶える事をゆっくりと行えると考えたのだ。

しかし、使徒戦でシンジ達がエヴァに乗って戦わなければ、NERV本部は破壊されてしまうだろう。
そうすれば初号機すら跡形もなくなってしまう可能性が高い。

ユイは咄嗟にそこまで計算したのだ。

「ふ〜ん、まぁやって見れば良いよ。皆を抑えきれるならエヴァに乗ってあげても構わない。でも二度目は無いよ。今度はエヴァでNERV本部を破壊する」

「解ったわ」


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新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAX の作品です。
拙著は当該作品を元に作成した代物です。
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