蒼と紅の狂気 --Side Rei--


聳え立つ紫の凶器。
エヴァンゲリオン初号機を見上げ私は思考に耽る。

私の髪の蒼と瞳の紅はこの凶器から授けられた物。
蒼と紅が交われば紫になるから。

ならば私は狂気に堕ちよう。
彼と一つになるために。
他の事は瑣末で無為な事。

そう、人類は一度滅んだ。
ならば躊躇う必要は無い。

私は、そのために十年も待ったのだ。
ふっと浮かぶ薄ら笑いを押し殺す事が出来ず、私はケイジを後にした。



私が目覚めたのは、LCLの漂う水槽の中だった。
目覚めた私は、周りに居る私と同じ存在を認識して暫し戸惑ってしまった。

それは、十四歳の私の容姿ではなく4〜5歳の少女の容姿であったからだ。
それよりも、彼女達は既に壊されたはず。

「なぜ?」

そう口に出したつもりであったが、それはLCLの中にコポッと気泡を生み出しただけだった。

思い出す。
絶望に打ちひしがれ、紅い世界で膝を抱えて蹲る碇君。
世界中に生命と呼べるものは、唯一彼独りしか存在しなかった。

アダムと融合し、全世界をアンチATフィールドで包んだ私には、既に実体も無く、ただ彼を見守る事しか出来なかった。
良かれと思い、弐号機のエントリープラグから再生させた弐号機パイロットを何故か彼は首を絞めて殺してしまった。
いや、彼女自身にも生きようと言う意思がなかったのだろう。

この世界で自らの存在を否定すれば容易くその命の灯火を消す事が出来る。
彼女が、自ら生きる事を拒否した結果なのだ。

私には、ただ彼を見守る事しかできなかったはず。
しかし、この状況は二人目の私が目覚めた時。
以前とは違い一人目は元より三人目の記憶までがある。
まだ記憶のバックアップと言う処理が未完成であり、一人目の身体を零号機に取り込ませたにも関わらず。

良いだろう。
私は永遠にこの時間軸を輪廻する存在になったのかも知れない。
だが、そんな事は些細な事だ。
誰の計画も成功しない事を私は知っている。
彼以外の誰一人戻らなかった事を私は知っている。
私が彼と一つになりたかった事を私は知っている。

ならば、私は彼を待とう。
彼がここに来る事は決定している。
彼は私の唯一。
その時、私が彼の唯一となれば良い。

私はリリス。
嘗てアダムと対等の立場を望んだ者。
そして、アダムを見捨てた者。



歴史を変えると、どの様なイレギュラーが発生するか解らない。
それをタイムパラドックスと言うらしい。
元々言われた事だけを行ってきていた私が、以前と同じ行動を取る事は容易かった。

その代わり、私は以前興味のなかった知識を得る事にした。
この十年間に得たはずの知識は既にある。
別に自らの境遇を変える必要は無い。
ただ世間一般の取る行動や求める物を知識として蓄えたのだ。

そして漸く迎えた、零号機起動実験。
今の私が起動に失敗する理由は無い。
しかし、シンクロ時に入ってくるノイズ。
紛れも無く零号機暴走は作為的な物だと言う事が確信される。

打ち出されるエントリープラグ。
その中でシェイクされる体。
この痛みさえ彼がここにやって来る時が近づいている事を確信させてくれる甘美な物として受け入れられる。

「レイ!」

エントリープラグの緊急ハッチを開け顔を覗かせる司令の顔に、彼の顔が重なる。
私は司令の言葉に一つ頷くと意識を手放した。



気がつくと、ゴーストタウンのように閑散な街中で私は佇んでいた。
その視界に彼が飛び込んでくる。
彼が居た!!

公衆電話に向かって溜息を吐いている彼。

やっと、やっと待ち侘びた時が来た。
これで彼と一つになれる。
身も心も一つになれる。

私の全てを差し出す用意は既にある。
この身体を彼に差し出す事は決定している。
そう、私には他に何もないもの。
体中の穴と言う穴で彼を迎え入れたい。
私の全身全霊が彼を待ち侘びている。
私は彼のためだけに存在する。

彼と目が合い安堵した私は再び意識を手放してしまった。
大丈夫、彼は来た。



初号機ケイジに私は呼び出された。
ストレッチャーに乗せられ運ばれる。

「レイ、予備が使えなくなった。もう一度だ」
「…はい…くっ」

この後の展開は、知っている。
でも、今は、少しでも早く彼を見たい。
そう思って身体を起こそうとしたが、思うように動かない。

「いつまでそこに居る!お前など必要ない!さっさと帰れ! 人類の存亡をかけた戦いに臆病者は不要だっ!!」
「乗りなさいシンジ君!!シンジ君が乗らなければ、あの娘が乗る事になるのよ!恥ずかしくないのっ?!」

周りが煩い。
彼に向かう言葉に苛立ちを覚える。
そして辺りが激しく振動した。

「ちっ、奴めここに気付いたか」

折畳み式の脚が折れ、私はストレッチャーの上から滑り落とされた。

「くぅっ…」

身体中に激痛が走り、思わず声を漏らしてしまった。

その私の身体を優しく抱き起こしてくれる腕。
私は苦痛に耐え眼を開けると、そこには思い浮かべていた彼の顔。
慈しみが篭った優しい瞳。
この時を…この時をどんなに待ち侘びた事か!!

「乗ります!僕が乗ります!」

彼の声が聞こえる。
それまでの私の中での禁忌が弾ける。
碇君…甘美な響き。

まだ、その名を呼ぶわけにはいかない。
でも、もう押さえが利かない。
私は、碇君の頬へと手を伸ばしてしまった。

キョトンとする碇君の顔が可愛い。
早く…早く私を呼んで欲しい。
その思いの中、私はまたも意識を手放してしまった。



夜、ストレッチャーに乗せられ運ばれている私。
碇君と眼が合う。
碇君を呼びたい。
今すぐに縋り付きたい。
でも、まだ駄目。
まだ時は満ちていない。
私はずっと彼を眼で追う。

ふとストレッチャーが止まる。

「レイ」
「…はい」

「身体の調子はどうだ」
「…問題ありません」

それだけの遣り取りで司令は踵を返す。
私はそのまま病室へと運ばれた。
ただ、悶々とする夜が更けていく。
あと少し、明日にはきっと、そう思うと目が冴えて眠れなかった。



翌日、葛城一尉が碇君を連れてやって来た。
普段は役に立たないけど、今日だけは、重要な役。
でも、貴女には、まだ大事な役目があるの。

「レイ、入るわよん」

ミサトは、病室の扉をノックもせずに開けて入って来た。

「…葛城一尉」
「な、何かしら?レイ」

私は、葛城一尉を睨み付けた。
今まで私から彼女に話しかけた事は無い。

「…ノックもせずに勝手に入って来ないで下さい」
「な!ご、ゴミン」

この女は、赤木博士の執務室にも何時もノックもせずに入ってくる。
その度に赤木博士から注意されているのに、一向に直そうとしない。
ふざけた謝罪の言葉。
はっきり言って不愉快だった。

「し、シンジ君、彼女が綾波レイ、ファーストチルドレンよ」
「レイ、こちらがサードチルドレンの碇シンジ君、仲良くしてね」

ミサトがニヤニヤとしながら碇君を紹介する。

この人は何がそんなに可笑しいのだろうか。
あのニヤケ顔は気持ち悪い。
嫌な感じがする。

私は意識を碇君に向けた。
なにか落ち着かない様子で、手をワキワキと握ったり開いたりしている。

「み、ミサトさん、彼女、怒ってますよ?」
「え?大丈夫よん。ねぇレイ?」

「…人の言葉が理解出来ないのね。碇君?」
「え?な、何?」

やっと呼べた。
私の胸の鼓動が早くなり、顔が熱くなる。
下腹部まで熱くなっていくのが解った。

「…起き上がれなくてごめんなさい。これから宜しく」
「あ、うん、気にしないで。僕こそ急に訪ねて来てごめん」

私はこの十年間誰にも知れずに練習していた笑顔で応えた。

碇君の顔が少し紅くなった。
作戦成功。
葛城一尉が引き攣っている。
どうでも良い事だ。

「じゃ、レイまたね」

葛城一尉は早々に引き上げようとしていた。
この人が私を苦手なのは、知っている。
私は碇君の顔をじっと見詰める。
何か話したいが、何を話せば良いのだろう?

「じゃ、じゃあまたね綾波さん」
「…えぇ待ってるわ」

ちょっと残念だったが、ここで引き止める理由もない。
私は、出来るだけ平静を装い答える。
葛城一尉は、今度は眼を丸く見開いて、口までポカンと開けていた。

私はこの十年間何もしてこなかった訳ではない。
如何に効率よく碇君を私の物にするか、いや、私を碇君の物にするかを思案していたのだ。

今回は思っていた通りに出来たと思う。
出来れば、もう少し碇君を見ていたかったが、焦りは禁物だ。
一瞬の欲望のために、この10年間を無駄にするわけには行かない。
決戦の日は近い。
私は綻ぶ顔を押さえ切れず、ギプスをしていない方の手を股間に伸ばした。

やはり濡れている。
クリトリスに当てた指に少し力を入れる。

「…くぅっ」

ふぅ、軽く逝ってしまった。
早く、碇君に直接触れて貰いたい。
私は、碇君のためにこちらの知識も勉強していた。
その際に自慰と言うものを覚えてしまったのだ。
でも、まだそれは、軽く圧迫を与える程度のもの。
小学生の女の子が机の角に擦り付けているようなものだ。

私の作戦は、かなりな戦果を上げた。
碇君は、翌日、一人で見舞いに来てくれたのだ。
私はこの十年間の調査活動が報われた事に歓喜していた。

しかし、ここで一つの不安も起こる。
未だ計画の初期段階である。
この事がこれからの事象にどの様に影響してくるのか。
だが、賽は投げられたのだ。



碇君は、お見舞いに持ってきてくれた果物を剥いてくれている。
あれは、多分、林檎か梨。
知識では知っているけど、見たのは初めてなので判断が付かない。

「…碇君」
「何?」

「…碇君は、何処に住んでるの?」
「昨日ね、あの後、ミサトさんのところに住む事になったんだ」

「…じゃぁ、食事とか掃除とかは葛城一尉が?」
「それが、ジャンケンで負けちゃって、殆ど僕がやることになっちゃって…アハハ」

思った通りね。
私は、それからポツポツと碇君が不振に感じない程度に待遇に付いて情報を得ていった。
勿論、碇君が剥いてくれたのは梨だと言う事も確認した。

「でね、ミサトさんって、ビールばっかり飲んでるんだよ」
「…そう、あの胸はビールで出来ているのね」

碇君は、楽しいそうに葛城一尉との生活を話す。
でもその楽しさは一時の迷いなのよ碇君。



あれから一週間、何はともあれ、今日は退院後の初登校の日だ。
私は念入りに身嗜みを整える。
勿論、化粧品やなんやらと言う無粋な事はしない。
あくまで清潔にがコンセプト。

部屋の佇まいも以前と何ら代わり映えしない物としてある。
強いて言えば若干の掃除を行い清潔さだけを保っている。
違いと言えば例の眼鏡が無い事だが、然したる問題ではない。
その代わりと言っては何だが、ヘアブラシ程度の物は存在する。
シャンプーとリンスと言う物も使用するようにした。
この髪は、すぐパサパサになるからだ。

そしていつも通り学校に向かう。
学校に着くと、自分の席に座り、いつものように本を開く。
これは話し掛けられるのが面倒だからだ。

窓際の席の私は、本を開いているが、視線は窓の外へとやっている。
そこにやってくるはずである碇君を見つけるために。
窓から見ていると、皆同じ服を着ているため、誰が誰か解らない。
でも碇君だけは、解る。
そこだけ私には眩いばかりに輝いて見えるから。

今日は、あのジャージも登校してくる日。
案の定、碇君は屋上に呼び出された。
私は、こっそり後から付いて行く。

屋上に出ると丁度ジャージが碇君に殴り掛かろうとするところだった。
全く、油断も隙もない。
私は、ジャージの脇腹に軽く回し蹴りを入れる。
碇君に掴み掛かろうとしていたジャージは、真横に吹っ飛んだ。

「…碇君、非常招集。急いで」
「う、うん」

「ぐぅっ…何さらすんじゃわれ!」
「…貴方こそ、NERVのたった3人しか居ない貴重なチルドレンに手を出して無事で済むと思わないことね」

お腹を押さえて呻いているジャージ。
私の言葉を聞いた眼鏡が、顔を青褪めさせている。
少なくとも使徒の脅威から守る事の出来る、あまりにも希少な人間に手を上げたのだ。
下手をすれば、今日死ぬかも知れない二人だが、もし生きていたなら、今度は碇君に近付けさせない。

NERVへ向かう車の中で私は、碇君に告げる。

「…この街は、使徒迎撃都市。死にたくなればシェルターでじっとしていなければいけないわ」
「え?」

「…戦闘により誰かが怪我しても、例え死んだとしても、それは碇君が責任を感じる事じゃない」
「な、何を言ってるの?綾波」

「…さっきみたいに勘違いで碇君を責める人が、これからも居ると言うこと」
「彼は、怪我したの?」

「…妹さん。でもそれも昼間の話。碇君には本当に関係のない話。単なる八つ当たり」
「そうだったんだ」

「…誰もエヴァに殴り掛かろうとはしないわ。碇君が軟弱に見えるから付け上がってるだけ」
「軟弱って…」

「…でも、そんな碇君が私は好き」
「え?」

言ってから恥ずかしくなった。
つい、窓の外に視線を逸らしてしまう。
シナリオ通りじゃないわ。
ここで微笑む予定だったのに。



予定通り、ジャージと眼鏡は、戦場に出てきた。
葛城一尉のNERVの人間とは思えない指示で、二人はエントリープラグに入り一命を取り留めた。
LCLの中に泥だらけの人間を入れる事が、どう言う事か本当に解っていない様子だ。
今度機会があれば、葛城一尉をLCLに沈めてあげよう。
それよりも、二人も異物を入れて撤退しろって、シンクロ中に異物が入るとどうなるか予測も付かないのに勝手な事ばかり言っている。
私が少し苛立っているうちに碇君が特攻を行った。

本当に、ここの人間は無能だ。
私は、潔癖症の童顔女を押しのけ、コマンドを打った。
腹部の神経接続を切ったのだ。

「キャッ!」
「レイ!何をしているの?!」

「…貴方達は、お腹にあんなものが刺さっている痛さを知らない」

私は、オペレータ達を睨み付ける。
葛城一尉と赤木博士は顔を逸らせた。
戦闘中にこれだから、駄目な二人。

「パターン青消失、使徒沈黙しました」
「シンジ君!シンジ君!返事をしなさい!」

葛城一尉は現実逃避に入ったようだ。

「…貴方達は本当に無能ね」
「どう言う意味かしら?レイ」

反応したのは赤木博士のみ。
葛城一尉を除く、他の人間は少なからず意味が解っているのだろう。

「…何も考えずにエヴァを発進させるだけ。サポートと言う言葉を知らないのでしょう?」
「私が居なければエヴァは動かないわよ」

「…動かすだけが仕事なのね」
「何が言いたいの」

「…あんな状態で正常な判断が出来るわけは無い。あんなシンクロ状態で撤退など出来るわけが無い。貴方達は本当に使徒に勝つ気があるの?と言っているの」
「・・・・・」

馬鹿な女。
誰も何も言わなくなったため、私は発令所から出て行く。
司令の居ない今、碇君が回収する前にやっておくべきことがある。
私は、ターミナルドグマに向かった。

ターミナルドグマで、私は十字架に貼り付けられているリリスと同化する。
これで私は、完全なリリスとなった。
その力を以って沢山居る私のスペア達をLCLに返してあげる。

やる事を終え、更衣室付近に戻ると、案の定、葛城一尉が回収されて来た碇君に「どうして命令を聞かなかったの?!貴方は私の命令に従う義務があるの」とか喚いている。
自分たちのシェルターの杜撰なセキュリティー管理やまとなサポートをしない事を棚に上げて。
葛城一尉の八つ当たりで碇君は独房に3日間入れられる事となった。

私は、司令室へと向かった。
現在、司令が居ないのは、好都合だ。
良識ぶってる副司令の方が、頑なな司令より融通が利く。

「何か用かね?」
「…今日の戦闘について」

「何のことかね?」
「…勝手にエントリープラグに異物を2つも入れ、動かないエヴァで辛勝した碇君が独房に入れられました」

「それは、仕方がないのだよ。組織では命令違反は厳罰だからね」
「…碇君は、負けていた方が良かったと言うのかと思うでしょうね。彼は軍人ではないわ」

「う、うむ。そうなのだがね」
「…碇君が同居している葛城一尉から直接言い渡された懲罰。しかもそれは理不尽な八つ当たり。戦闘中も傷ついた箇所のシンクロカットすらしない無能な集団」

「・・・・・」
「…貴方も無能だったのね」

「それは、どう言うことかね」
「…今の対応が最善だと思っているのでしょ?私が同じ事をされたら、ここを潰すわ」

「いや、レイの時は、そんな事はさせんよ」
「…口から出任せね」

私の時だって、神経接続を切らずに腕を切断された。
私が死んでも変わりが居ると思っているからだろう。

「わ、解った。シンジ君は、釈放する」
「…葛城一尉は、碇君をまるで家政婦のように家事を行わせているわ」

「それぐらいは、共同生活なのだから当たり前じゃないかね」
「…だったら人類を守る為などと言う大義名分をひけらかさない事ね。世界に3人しか居ないからと言われ、いつ死んでもおかしくない戦場に送り出される事に対し、あまりにもお粗末な待遇」

「どうしろと言うのかね」
「…少なくとも家事を行う必要がない所に転居させるべき」

「そこまでする必要があるのかね?」
「…もう良いわ。やはり貴方も無能だったのね」

私は、そう言って踵を返した。
面倒臭い。
NERVからお金をくすねてNERVを潰して碇君と二人で暮らすのも悪くない。
私は、ATフィールドで司令室の扉を破壊した。

「ま、待ちたまえ。レイ!」
「…煩いわ」

私は、副司令を一瞥すると、司令の机をATフィールドで粉々にして歩き始める。
副司令は、電話で、「警報を止めろ」とか「御報だ」とか喚いている。

「ま、待ってくれ。レイ。シンジ君の転居を考える」
「…何処に?」

大声で叫ぶ副司令の話を少しは聞いてみようかと、私は、足を止めた。

「ど、どうすれば気が済むのかね」
「…そうね。第三新東京ホテルのスイートルーム辺りで構わないわ」

「わ、解った。そのように手配する」
「…そう、今後は気をつけて」

副司令は、コクコクと頷いている。
でも駄目ね。
きっとまた、同じ過ちを繰り返すわ。
私は、その足で独房に向かった。



「綾波」
「…出ましょ」

一応、ちゃんと手配をしていたようね。
守衛も、釈放するように副司令が言ったと言うと何も言わずに通してくれた。
碇君、このままホテルのスイートルーム暮らしよ。

「でもミサトさんが」
「…副司令が釈放と言っていたわ」

「そうなんだ」
「…それと葛城一尉の部屋は出るようにって」

「え?じゃぁ何処に行けば?」
「…案内するわ」

そして私は、碇君を自分の部屋に連れて行った。

「綾波、僕は、ここに住むの?」
「…違うわ。ここは、私の部屋」

私は、数枚の下着を鞄に詰める。

「…行きましょ」
「う、うん」

ホテルに着き、フロントに話をすると、こちらもちゃんと副司令から伝わっていたようだ。
仮に伝わっていなければここから連絡して直接交渉させるつもりだったけど、稀有に終わった。

「うわぁ〜、僕こんな部屋、初めてだよ」
「…今日から、ここが碇君の家よ」

「え?」
「…洗濯は、ホテルのクリーニングに出せば良いし、食事もここでルームサービスでもホテルのラウンジでも構わないわ」

「そうなんだ…」
「…私も一緒に住む」

「え?」
「…ここには寝室も何部屋かあるから心配ないわ」

「凄いね。でもどうして?」
「…碇君は、世界中で唯一使徒を倒した人間なの。これでも待遇としては大したことないわ」

解っているわ。
葛城一尉との仮初めの家族ごっこが居心地が良かったのね。
でも、あそこに居ると碇君は壊れるの。
セカンドも来るし、今のうちにあそこは出た方が良い。
これは、私が立てたシナリオのひとつ。

「そ、そっかなぁ?」
「…えぇ、何か食べる?」

そして私は、ルームサービスで碇君が食べる物を注文した。
その後、葛城一尉や発令所がどんなに無能な判断をし、何もしなかったのかを教えてあげた。
勿論、神経接続を私が切った事もそれとなく伝える事も忘れない。
碇君は、「有難う」と言ってくれた。
これだけでも今日の私は満足。

葛城一尉は、暫く碇君が部屋から居なくなったことにも気付かないはず。
後は、司令と赤木博士がどう出てくるか。
でも、その前に今夜のうちに既成事実を作る。

「あ、あ、綾波ぃ!」
「…何?」

シャワーから出た私を見て、碇君が慌てている。
私は、タオルで頭を拭きながら出てきた。
当然、何も身に付けていない。
私は、碇君が何を慌てているのか不思議な振りをして碇君に近付いて行く。

思惑通り碇君は、慌てて私を押し倒してくれた。
そう、あの時の再現。
ちゃんと碇君の手が私の胸の上にある。

「…どいてくれる」とは、言わない。

私は、碇君の首に腕を回し、碇君の唇に自分の唇を付けた。
驚いている碇君。
胸の上の手に、私の手を乗せて軽く揉む。
碇君は、慌てて手を離そうとするけど、離させない。

「あ、綾波ぃ」
「…碇君、私は貴方が好きだと言ったわ」

そう言って、ゆっくりと碇君の首に回した手に力を入れ、再び碇君の唇を塞いだ。
今度は、舌を入れゆっくりと碇君の舌に絡める。
最初っからこれをすると碇君なら驚いて身体を離すだろうと思っていた。
だからゆっくりと誘導する。

「…碇君が欲しい」

唇を離して、今度は、碇君のシャツを脱がし始めた。

「あ、綾波!」

作戦成功。
碇君は、もう止まらない。
私の唇を強引に陵辱してくる。
胸を揉む手も力が入っていて痛い。

焦っているのね。
でも構わないわ。
私は、碇君のズボンのベルトを外し、チャックを下ろしてあげた。

「綾波!綾波!」
「…碇君」

自分でズボンと下着を膝まで下ろした碇君を私は、押しのけて仰向けにさせた。

「あ、綾波?」
「…碇君、初めて?」

碇君は、コクリと頷く。

「…そう、私も初めて」
「え?」

「…だから私に任せてて」
「う、うん」

碇君の言葉を聞き、私はニッコリと微笑んだ。
そして碇君に跨り、碇君の物を剥いて私の中に誘導する。

「「うっ!」」

私は、処女膜を破られる痛みに、碇君は、その為にきつかったのか二人同時に声が出た。
腰を碇君の身体に当たるまで下ろすと、子宮口に碇君の物が当たる。
少し痛いけど、味わった事のない充実感が私の中に産まれる。
私は、碇君に抱きつき唇を吸い、碇君の体中に愛撫した。

「あ、綾波!も、もう出ちゃうよ」
「…構わないわ」

「あっ!あぁぁ」
「…くぅっ」

碇君の物が一層膨張して、熱い液体を噴出した。
それが子宮口に当たり、更に奥に入って来るのを感じる。
なんて幸せなんだろう。
私は、思わず碇君にしがみ付いた。

「綾波!綾波!」

碇君も抱きしめてくれる。
私達は、暫く強く抱きしめ合っていた。

「あ、綾波、ご、ごめん」
「…何を謝るの?」

「だって、綾波にこんな事しちゃって…」
「…私が望んだ事、問題ないわ」

私がそう言うと碇君は、また私を抱きしめ口付けしてくれた。
私達は、その後二人でお風呂に入り、その夜は一緒のベッドで裸で寝た。
これで、第一目標は達成。
後は、碇君次第。



翌日、碇君と共に学校に行くと、ジャージが突然飛び出して来た。

「碇!済まん!この前は知らなんだとはいえ、殴りかかってもうて。せやからわしも殴ってくれ!」

ジャージは、いきなり土下座して叫んだ。
碇君は、困惑している。

「頼むわぁ碇、そうせなわしの気が済まんのや」
「こういう恥ずかしいヤツなんだよ。ま、一発殴ってやったら?」

この餓鬼共は、本当に身勝手だ。
昨日は、殴らなければ気が済まないと言い殴り掛かり、今日は、殴られないと気が済まないと言う。
自分の気が済む為に、相手の事などお構いなしだ。
私は、土下座しているジャージを蹴り上げてやった。

「あ、綾波!」
「なっ!わしは碇に言うたんやぞ!」

「…貴方を蹴らないと私の気が済まなかったの」
「な、なんでじゃ!」

「…貴方達は、戦闘の邪魔をしたの。貴方達のせいで負けるところだった。碇君が負けたらもうNERVには使徒に対抗する術がなかった」
「そ、そやったんか…」

「…もう少しで人類滅亡だった。なのに貴方は自分の気が済まないからと碇君に殴り掛かり、今日は気が済まないから殴れと言う。身勝手過ぎ」
「そ、そやの、わしが悪かったわ。すまん」

「も、もう済んだ事だし、気にしないでよ」
「そっか、お前、ええ奴やったんやな。今日からお前にうだうだ言う奴がおったらわしがパチキかましたる。わしの事はトウジて呼んでくれ」

「あ、じゃぁ僕もシンジで良いよ」
「お、俺は相田ケンスケ。俺もケンスケって呼んでくれ」

失敗した。
碇君は、優しい。
これでまた、三馬鹿トリオと呼ばれる。
でも、こいつらには、釘だけは刺しておこう。

「…相田ケンスケ」
「な、なんだよ」

「…盗撮を止めないなら、碇君に話し掛けないで」
「な、俺が何時、盗撮なんて…」

「…貴方が、勝手に私達の写真を撮って売っている事は、知っているわ」
「い、いいじゃないか、別に減るもんじゃなし」

「…覚えておくことね。あの時乗っていたのが私だったら二人とも踏み潰していたと」
「あ、綾波ぃ」

ごめんなさい碇君。
でも言っておきたいの。

「…それに、貴方達がシェルターの扉を開けっ放しだったために、エヴァがもう少しシェルターの入り口近くに飛ばされていたら、そう、後数メートルの違いでシェルターの中に居た人達は突風が吹き込んで全員死んでいたわ」
「そ、そんな…」

「…貴方達は、自分達が何をしたのか理解していない。行きましょう碇君」
「う、うん」

私達の話を聞いていたクラスの全員が、白い眼でジャージと眼鏡を見ている。
碇君に嫌われたかも知れない。
でも、私は、この二人を許せない。
碇君を苦しめた二人を。



あれから数日経って、司令も戻ってきているはずだが、何の連絡もない。
学校では、私は碇君とずっと一緒に居るためジャージと眼鏡も近付いて来ない。

私と碇君は、毎日身体を合わせている。
リリスと成った私は、気を許すと処女膜すら再生してしまう。
我慢して破けたままにしているため、そこに碇君がまだ入っているような気になってしまう。
漸く最近、処女膜が破れた痛みも無くなって来て、段々気持ち良いだけになってきた。
リリンのこの身体も捨てたもんじゃない。

今日もホテルに帰って、食事をしたところで来客があった。
扉を開けると、葛城一尉と赤木博士だ。

「…何?」
「これ、貴女の新しいカードよ」

もうそんな時期。
そう言う事。
前回は、故意であったとしても起動はメンタルな面が影響を与えると考えられている。
司令は、起動実験が失敗しないように余計な事をせず傍観していたのだろう。

今は、地下のリリスや私達が居なくなった事で、大騒ぎなのも要因だろう。
今までシンクロテストにすら呼び出されず、ずっと放置されていたのだ。

「ちょっと入れて貰って構わないかしら?」
「…碇君に聞いて見ます」

碇君は、当然追い返したりしない。
「どうぞ」と招き入れた。

「良い暮らししてるのね」
「…人類を守る数少ないチルドレンを家政婦のように使うのは、どうかと思いますけど」

葛城一尉がしかめっ面をしている。
この人は、何をしに来たのだろう。
嫌味を言いに?

「その話は止めなさい。ところでレイ?」
「…何?」

「シンジ君がここに住むようになった事は、副司令から聞いたけど、貴女が住むとは聞いていないわ」
「…何か問題でしょうか」

赤木博士は、私を睨みつけている。
本当、NERVは無能ばかり。
私が子供に見えるから威嚇しているだけ。
そして馬鹿な女。
自分が司令から逃れられないから羨ましいのね。

「まぁ良いわ。明日は零号機の起動試験だから、忘れないで来て頂戴」
「…そう。話はそれだけ?」

「いえ、シンジ君?」
「何ですか?」

「この間の事を、ミサトが謝りたいと言うから今日は連れて来たの、ほら、ミサト」
「あっ、うん、この間はゴメンねシンちゃん。私も頭に血が上っていたわ。それで…帰って来てくれないかな?」

「サードチルドレン監督日誌」

碇君が呟いた言葉に、葛城一尉は、「しまった」と言う顔をし、赤木博士は、「馬鹿なんだから」と溜息を吐いた。

「無理矢理乗せて、そんな気持ちで乗られると迷惑だとか、僕にはミサトさんの言ってる事が理解出来ません。ましてや、仕事で一緒に住もうと言う人とまた一緒に住むなんて無理です」
「わ、私は!」
「ミサト!」

言い訳をしようとする葛城一尉を赤木博士が嗜めた。
何をしても中途半端な人だ。
その点については、赤木博士の方が合理的で話は早い。

「解ったわ。今日は帰るわ。明日遅れないで頂戴」
「リツコォ」

「仕方ないでしょ。貴女のずぼらが招いた事よ」

赤木博士に引き摺られるように葛城一尉は帰って行った。
全く、貴重な碇君との時間を下らない事で潰さないで欲しい。

「言い過ぎちゃったかな?」
「…足らないぐらい」

それから、碇君と一緒にお風呂に入り、一緒に裸で寝た。
碇君に抱きついて眠るとポカポカする。
碇君にもポカポカして欲しい。



屋内に有る、起動実験場。
ケイジからLCLを抜いただけのような場所。
エヴァの顔の高さにガラスで囲まれた実験室が有る。

「…レイ、準備は良いか?」

病院で声を掛けられて以来の言葉だ。
幾分焦燥しているようにも見える。
イレギュラーだらけだもの。
私は、クスッと笑みが零れた。

「…はい」

それを誤魔化すように平静を装って返事を返す。

「…実験開始」

司令の言葉で実験が始まる。
たかが起動実験に司令自ら出てくる事の異常さ。
シナリオなのね。
前回の失敗時、逸早く駆けつけ、私を助け、今回の成功を共に喜ぶ。
浅はかなマインドコントーロール。

「第1次接続開始、主電源接続」
「稼動電圧臨界点を突破」
「フェイズ2に移行」
「パイロット零号機と接続開始、パルス及びハーモニクス正常、シンクロ問題無し」
「オールナーブリンク終了」
「絶対境界線まで後2.5」
「1.7」
「1.2」
「1.0」
「0.7」
「0.4」
「0.2」
「絶対境界線突破します」
「零号機起動しました」

「…引き続き連動試験に入ります」

実験場の内線が鳴り副司令が電話を取る。
上層部の全員がここに集結していたと言うことだ。
何かあれば一網打尽ね。

「そうか、解った」

副司令は、電話を置くと司令に耳打ちする。
これもシナリオ?

「未確認飛行物体がここに接近中だ。恐らく使徒だな」
「テスト中断、総員第一種警戒体制」

「零号機はこのまま使わないのか?」
「未だ、戦闘には耐えん。初号機を使う」

「初号機380秒で出撃できます」
「良し、出撃だ」

「…レイ、起動は成功した。戻れ」
「…はい」

まるで用意されていた台詞のようにスムーズに事が運ばれて行く。
碇君、ごめんなさい。
この後、碇君は死にそうになる。
だけど今は止められない。
私は、エントリープラグから出ると、LCLを拭いもせず発令所に向かった。
碇君は私が護る。



発令所のメインディスプレイ上には、第三新東京市付近の上空が映し出されている。
そこには、正八面体の形態をした巨大な飛行物体が存在していた。

「シンジ君いいわね?」
「はい」

「エヴァ初号機、発進!」

またしても、いきなりの決戦兵器投入。
学習と言う言葉を知らないとしか思えない。
しかも、使徒の真正面。

「使徒内部に高エネルギー反応を確認、収束中です」
「何ですって!」

「まさかっ!加粒子砲?!」

赤木博士の口から聞いた事もない兵器の名前が飛び出てくる。
この女は戦闘中はデータを取る事と解析が仕事だと思っているのだから、どうしようもない。

「ダメッ!シンジ君避けて!」

未だ初号機は、ロックボルトに固定され、使徒の前へ高速射出中である。
どうやって避けろと言うのか。
そしてミサトからの「リフトオフ」の号令が無いため、初号機はロックボルトに固定されたままの動けない標的となる。

射出された瞬間、ロンゲのオペレータが機転を利かし初号機前方に遮蔽壁を出したが一瞬で溶け、加粒子砲が胸部に直撃、碇君の叫び声が発令所を埋め尽くした。

「わああああああ!!!!!!!」

唖然とする発令所。
私は、既に童顔オペレータを今度は蹴り退け、コマンドを打ち終わっている。
もっと早く動きたかったが、見えてからでないと不自然。

「早く下げてっ!!」

葛城一尉が喚くが、モニターでは、既に下がり始めている。
貴女の役目は、これで終わり。
後は、殺してあげる。

「ぐわあああああああああああああ!!!!!!」

碇君の叫び声に涙が出そうだ。

「ケイジに行くわ!」

私は、踵を返した葛城一尉の髪の毛を掴んで、引き摺り倒した。

「痛い!何すんのよ!」
「…職場放棄?貴女がケイジに行って碇君が助かるの?」

私を睨み付ける葛城一尉。
その間にもオペレータ達は、碇君の蘇生に遂力している。

「パイロット心音微弱」
「心臓停止しました!」
「生命維持システム最大、心臓マッサージを!」
「駄目です!」
「もう一度!」
「パルス確認!」
「心臓活動を開始しました!」
「プラグの強制排除急いで!」
「LCL緊急排水」
「はい」

「…また何も考えずにエヴァを射出した結果がこれ。貴方達も加粒子砲を受けてみれば良い。何かある度に固まる発令所なんて必要ないわ」

私は、その一言を告げると、司令と副司令を睨み付けた後、ケイジへ向かった。
そう言えば、私が蹴った童顔オペレータは、気絶していたらしい。

「…葛城一尉、使徒殲滅のための作戦を早急に立案しろ」
「は、了解しました」

発令所を出る時に聞こえてきた声。
信賞必罰と言う言葉を彼らは知らないのだろう。
これで3度目だと言うのに、何の罰も受けた形跡がない。
碇君が危険になれば、初号機が、いや中の碇ユイが目覚めると思っているからだろうが、これでは、初号機をピンチにするのを奨励している様に見える。
全く愚かだ。



私は、碇君の病室で碇君の手を握り締めている。
私が回収コマンドを打ったので、加粒子砲の洗礼は一瞬であったため、前より状態は悪くない。
こっそりATフィールドを侵食して、碇君の代謝機能を高める。
可愛い碇君の寝顔を堪能していると、眼鏡のオペレータがやって来た。

「レイちゃん、頼みがあるのだけど」
「…何?」

「ちょっと戦略自衛隊に行って自走陽電子砲を徴発してきたいのだけど、零号機で一緒に来てくれるかな?」
「…自走なのに何故?」

「いや、まだ、自走するまでは出来上がってないらしいから、エヴァで持って来るのが一番早いんだよ」
「…そう、解ったわ。碇君、また後で」

私は、未だ目覚めていない碇君にそう言うと眼鏡のオペレータに付いて行く。
葛城一尉は、自分で来れなかったのね。

「レイちゃん、オペレートなんだけど、言ってくれれば僕達がやるから、その、あんまり強引にマヤちゃんを退けるのは控えて貰えないかな?」
「…私が言って、貴方達が判断、もしくは拒否している間にも碇君は死に曝される。本来、貴方達が判断して即座に対応すべきこと」

「そ、そうなんだけど、何も気絶させる必要は無いんじゃないかな?」
「…固まって何もしていなかったのだから、問題ないわ」

「そんな言い方は、ないんじゃないかな?」
「…じゃぁ貴方も焼鏝をお腹に刺してみれば?加粒子砲をLCLの中で受けて見れば?一瞬で沸騰したLCL。沸点は低いと言ってもそれを肺に入れている碇君、もう少し遅ければ、眼も失明していたであろうし、肺も爛れていたでしょうね。鼻血と耳から血を流していたのは、熱いLCLに粘膜が耐えれなったからよ」

「ご、ごめん。それは解っているつもりだよ」
「…だったら、どうしてそう言う事を言うの?既に3回、貴方達は碇君を殺している。それを忘れないで」

眼鏡のオペレータは、それ以後押し黙った。
実際は、私が手を出さなくても碇君は死んでは居なかっただろう。
だが、苦しみは短い方が良い。
碇君が苦しむ姿は、出来るだけ見たくない。

しかし、本当にエヴァで取りに行く必要があったのだろうか?
結局電源供給が必要なエヴァは、戦略自衛隊の倉庫のようなところから自走陽電子砲を取り出しただけだ。
後はウィングキャリーでエヴァ諸共輸送である。
であれば、最初からウィングキャリーに自走陽電子砲をぶら下げればエヴァの重量分軽いと思う。
戦略自衛隊にエヴァを見せたびらかしたいだけに感じる。



「ん…」
私は、戦略自衛隊から戻り、碇君の手を再び握り締めていた。
既に作戦予定も眼鏡のオペレータから聞いている。
どうやら葛城一尉は、私に対する苦手意識を強めたらしい。
良い大人が、情けない事だ。

「…碇君」
「綾波?」

私は、スカートのポケットから手帳を取り出し伝えられた作戦予定を読み上げる。

「明日午前0時より発動されるヤシマ作戦のスケジュールを伝えます。
碇、綾波の両パイロットは本1730、ケージにて集合。
1800、エヴァンゲリオン初号機、及び零号機、起動。
1805、出動。同三十分、双子山仮設基地に到着。
以降は別命あるまで待機。
明日0000、作戦行動開始。
これ、新しいプラグスーツ」

そこまでえ告げると私は、碇君に真新しいプラグスーツが入った袋を手渡した。

「あ、うん」
「…寝ぼけてその格好でこないでね」

碇君は、全裸である。
出来れば、私も服を脱ぎ捨て一緒にベッドに入りたい。
耐え切れずに私は、碇君に抱きつき碇君の唇を貪った。

「…60分後に出発よ、食事、食べる?それとも私を食べる?」
「あ、綾波、な、何を言ってるのさ」

慌てている碇君。
私は、碇君の股間に手を伸ばし、それが勃起していることを確認すると、シーツに潜り込みそれを口に含んだ。

「あ、綾波ぃ」

戸惑いながらも碇君が、私のスカートの中に手を入れてくる。
積極的になったものだわ。
私は、碇君が触りやすいようにお尻を碇君の顔の前に行くようにベッドに乗せた。

碇君は、私のお尻を堪能すると躊躇わず私の下着を下げ、私の中に指を入れてくる。
お尻とあそこに指を一本ずつ、ちゃんとクリトリスも刺激してくれている。
私は、口の動きに手の動きを加え、碇君のものを喉の奥まで入れた。

「あ、綾波!」

碇君の精液が私の喉に吹き付けられる。
私は、お尻を突き出し碇君の指が子宮口に当たるようにして自らも逝った。
碇君の物を、口と舌で綺麗にし、ベッドから降りる。
碇君、その手に持っているのは、私の下着。

「…ケイジで赤木博士が待っているから」
「う、うん」

「…食事も食べて」
「あまり食べたくない」

「…そう、じゃぁ時間までゆっくり休んでいて。また後で」
「うん」

私は、その言葉を聞いて自然と微笑む。
名残惜しいが、私は、碇君の頬っぺたに軽く口付けをすると病室を後にした。

ケイジには、やはり赤木博士しか居なかった。
どうやら葛城一尉は、私の前に出てくる気が無いらしい。

「貴女のお陰でマヤが入院してしまったわ。猫の手も借りたいのに」
「…貴女達のお陰で碇君は、死に掛けました」

赤木博士は、苦虫を噛み潰したような顔をしている。
それから、零号機のシンクロ調整を行った。
少しでもシンクロ率を上げたいと言うところだろうが、無駄な努力だ。
私は、シンクロ率を誤魔化しているのだから。



私がケイジに居ると碇君がやって来た。
今日は、零号機と初号機が並んで出て行く。
私は、エヴァで初号機と手を繋いでみた。
碇君も初号機で握り返してくれる。

何時もの射出装置ではなく、ゆっくりと射出口に移動され、前がスライドすると、そこは中学校近くの山だった。
学校の屋上ではクラスメート達が手を振っている。
碇君は、初号機で手を振り返していた。
湧き上がる歓声。

双子山でエヴァを降りると、仮設シャワーがあったので、シャワーを浴びて着替える。
またすぐプラグスーツに着替えるのだが、一度外に出るからと言う事だ。
第四使徒の時に葛城一尉が、民間人を何の対処もせずエントリープラグに入れた事がどれだけ危険な事だったのか、解ろうと言うものだ。

制服に着替えた私と碇君の前に葛城一尉と赤木博士が居る。
漸く私の前に顔を出したけど、私とは目を合わせないし、赤木博士の若干後ろに隠れているような形だ。

「本作戦における担当を通告します。シンジ君は初号機で砲手を担当、レイは零号機で防御を担当」
「…はい」
「…了解」

既に聞いている事。
碇君にも伝えてある事。

「これはシンジ君と初号機とのシンクロ率の方が高いからよ。
今回の作戦ではより精度の高いオペレーションが必要なの。
陽電子は地球の自転、磁場、重力の影響を受け、直進しません。
その誤差を修正するのを忘れないで、正確にコア一点のみを貫いてね」
「どうやるんですか?」

「それは大丈夫、貴方はテキスト通りにやって、真ん中にマークが揃ったら撃てば良いのよ。後は機械がやってくれるわ」
「…はい、もし1発目が外れたら?」

「2発目を撃つには冷却や再充填等に合計20秒掛かるわ。その間レイの盾に守ってもらう事になるわ」
「余計な事は考えないで、1発目を当てる事に集中して頂戴」

赤木博士の回答に追従したこの女は、全く思考停止している。
外れた時の事を考えるのは、余計な事でもなんでもない。
使徒に勝つために必要なことだ。

「…私は?私は…初号機を守ればいいのね?」
「そうよ」

外れた時は、私が守ると暗に言った事で、我が意を得たような葛城一尉の顔が気に入らない。
こんな、杜撰な作戦で何を胸を張っているのか。
だから、私は言った。

「…愚かな作戦ね」
「どう言う意味かしら?レイ」

反応してきたのは、葛城一尉ではなく、赤木博士だった。
仕方ないので教えておいてあげよう。
この愚かな女二人に。

「…使徒からエネルギーの集束を検知したのが何時だったのか考えれば、一発目が外れた時を考えるのが余計な考えなどと言えないはずだし、こんな愚かな作戦も立案出来るはずもないわ」

赤木博士がはっとしたような顔をする。

「この作戦は、最も成功率が高いの。司令も認めた作戦なのよ」

葛城一尉の顔が真っ赤になっている。
自分の考えた作戦が愚かだと言われて憤慨しているのだろう。

「…貴女は、司令や副司令、赤木博士でさえ戦闘の素人と言って排除しているじゃない」

そう、だから司令は上官の強権としての命令でしか彼女を動かせない。
諭しても、自分の方が戦闘のプロだと言ってきかないからだ。

「…そもそも敵の土俵に上がる必要は何もない。私達は、貴女の復讐の駒じゃないわ」
「じゃぁ、どんな作戦があると言うのよ!」

全く愚かだ。
ここまで言っても他の可能性を考えられないらしい。

「…エヴァを射出。地表前で停止。第一層と第二層の装甲板間から使徒に接近。下から撃破」
「・・・・・」

押し黙る葛城一尉。
赤木博士は、計算しているようだ。
時間までにきっとMAGIに勝率を計算させるだろう。

「時間よ、二人とも準備して」
「「…はい」」

何の回答も出さず、葛城一尉は、ただ出撃準備を言い渡しただけだった。



薄いカーテンだけで仕切られた仮設更衣室。
私は、着ていた制服を脱ぎ捨て全裸となる。
ふと、視線を感じ碇君の方を向いた。

「…どうしたの?」
「え?な、なんでもないよ」

私は、カーテンを開ける。
碇君は、下着一枚だった。
股間が膨張している。

「あ、綾波ぃ」
「…まだ時間は、あるわ」

私は、碇君に抱きつき、碇君の下着を脱がした。

「綾波」
「…何?」

「綾波は何故エヴァに乗るの?」
「…碇君を守るため」

「それは、今回の話だろ」
「…くっ違うわ」

挿入しながら質問しないで欲しい。
私は、少し恨めしげに碇君を見つめた。
そうすると碇君は、私の口を塞ぐ。

「これで死ぬかも知れないね」
「…どうしてそう言うことを言うの?あっ!」

「綾波!」
「碇君!」

私達は、同時に果てた。
少し息が荒くなっている。

「…碇君は死なないわ。私が護るもの」
「綾波…」

急場で作られたエヴァの搭乗タラップの最上段で私達は並んで座っていた。
私は、碇君の肩に頭を擡げている。
冷却装置の水の音やライトの操作音、電源関係の車両のエンジン音などもこの高さまでは風でかき消され、静寂が二人の間を流れている。
雲一つなく、月夜の空に星が無数に瞬いていた。

「…時間よ」

私は、またしても碇君に唇を塞がれた。
背中に回された碇君の腕と、腰に回された碇君の腕が私を強く抱きしめる。
私も碇君の身体に腕を回し、碇君の舌を貪る。
二人の唇が離れた後には、一本の唾液の糸が月明かりに照らされ光っていた。



葛城一尉と赤木博士、眼鏡オペレータとロンゲオペレータ達が仮設発令所で作業を行っている。
童顔オペレータの伊吹マヤは、未だ入院中らしい。
意識は、回復しているのだが、自信喪失しているので赤木博士がそのまま入院させているらしかった。

《東京標準時23:59:57》
《東京標準時23:59:58》
《東京標準時23:59:59》
《東京標準時00:00:00》

「作戦スタートです」
「シンジ君、日本中のエネルギー貴方に預けるわ」

「…はい」

「第一次接続、第407区まで送電完了、続いて第408区から第803区までの送電を開始します」
「ヤシマ作戦スタート!!」

葛城一尉の号令で慌しく作業報告が上がってくる。

「電圧上昇中、加圧水系へ」
「全冷却機出力最大へ」
「陽電子流入順調なり」
「温度安定依然問題無し」
「第2次接続!」
「全加速器運転開始、強制収束機作動!」
「第三接続、完了」
「全電力、ポジトロンライフルへ」
「最終安全装置、解除」
「撃鉄、起こせ」

葛城一尉の号令で、碇君が照準を示すマークに集中しているのが解る。

「地球自転誤差修正、プラス0.0009」
「電圧、発射点へ上昇中。あと15秒」
「10・・9・・・8・・・7・・」

カウントダウンが始まり、私も緊張してきた。
碇君は、私が護る。

「6・・5・・4・・」

あと少しと言うところで、急に使徒の明るさが増した。
そのスリットに光が走り始める。
やはり、エネルギーを感知しているのだ。

「目標に高エネルギー反応!」
「なんですって!」

だから言ってあげたのに。

「撃てぇ!」

しかし、葛城一尉は、当然のように発射命令を出した。
「あっ馬鹿」と言う赤木博士の声が聞こえる。
碇君は、律儀に葛城一尉の叫びと同時にスイッチを押した。

当然の如く、こちらの放った陽電子と使徒の加粒子は交差し合い、お互いあらぬ方向へと着弾する。
陽電子は使徒の少し横のビル街に着弾しエネルギーの柱を立てている。
加粒子砲は山の中腹に激突し、爆風が周囲の木々を薙ぎ倒した。

「第2射急いで!!」

葛城一尉が喚いている。
初号機は、場所を移動し、再度、弾を込め始めている。

『ヒューズ交換』
『再充填開始!!』
『目標内部に再び高エネルギー反応!!』
『銃身冷却開始』
『使徒加粒子砲を発射!!』

私は、初号機の前に移動し、盾を翳した。
初号機だけを護れる程、初号機の近くに。

『発射まで15秒』
『発射まで10秒』
『零号機、盾消失します!』
『早すぎる!』

私は、初号機の前で両手を大の字に翳し、初号機を護った。

「綾波!」

仮設発令所からの音声が途絶えている。
それは、そうだろう。
私は、初号機だけを護ったのだ。
零号機は、初号機の目の前に立ち、加粒子砲を遮った。

零号機の陰に隠れているのは、初号機と陽電子砲程度だ。
仮設発令所は、初号機が移動していたため、零号機の陰から外れ、加粒子砲をまともに受けていた。
碇君の辛さが解った?

初号機が放った陽電子が使徒を打ち抜く姿を確認した私は、零号機を跪かせエントリープラグを射出したが、溶けているのか半射出にしかならない。
だが、ガコンンと言う音と共に浮遊感が生まれる。
きっと碇君が取り出してくれたに違いない。

「綾波!」

エントリープラブの扉が開き、碇君が顔を覗かせる。
私は、思わず碇君に抱きついた。

「あ、綾波?大丈夫?」
「…えぇ問題ないわ」

私は、碇君の唇に貪りついた。
碇君もそれに応えてくれる。
私達が回収されたのは、それから2時間以上経った後だった。



私と碇君は、あれから爛れた生活を送っていた。
双子山で2時間以上放っておかれた私達は、LCLが乾き、その臭いがこびり付いていたが、それも今では殆ど感じられない。
毎日、何回も肌を合わせ、日に何度もお風呂に入るからだ。

私達が回収されるのに2時間以上経っていたのは、当然、仮説発令所の中が悲惨な事になっていたからだ。
装甲車を改造して作られたそれは、なんとか原型を留めるものの、概観からしてもドロドロに溶けていた。
直撃では、なかったのだろうが、中はローストされた葛城一尉や赤木博士が確認されたらしい。

勿論、司令は、初号機の回収を最優先に命令していた。
しかし、そのパイロットたるチルドレンは、後回しであったと言う事だ。
これが、葛城一尉や、赤木博士が存命なら、私達は先に回収されていただろう。

NERVは副司令が忙しく動き回っているらしい。
技術部は、童顔オペレータだった伊吹二尉が復帰して、なんとかエヴァの修復に当たっているそうだ。
彼女は、現在、技術部長代理となっているらしい。
どちらにしても今は、私達は二の次なのだろう。
ここ数日は、放置されている。

口煩く言う人間が居ないため、私と碇君は、学校にも行っていない。
碇君も特に行きたいとは、思って居ない様子だ。
その代わり、碇君がお腹が空いたと言えば何かをルームサービスで頼んで食べ、それ以外は、裸で引っ付いている。
碇君が私を求めれば身体を合わせ、シャワーを浴び、時には湯船にお湯を溜め二人で入り、疲れたら寝る。
その繰り返しだ。
偶に碇君はテレビを点けてニュースを見る。
一応、周りの状況は確認しているようだ。
新聞もホテルに頼んでいた。

そんな中、NERVから呼び出しがあった。
呼び出しは伊吹二尉からであった。
どうやら、弐号機を迎えに行くらしい。

向かうヘリの中で伊吹二尉は、ビクビクしているように見える。
昔の碇君みたいだ。
私は、そんなどうでも良いことより、初めて見た青い海の方が何故か切なく感じていた。

確かに私は、彼女に思い入れが無いとは、言い切れない。
第壱拾参使徒戦で神経接続を切らずに零号機の腕を切り落としたのは、彼女だ。
だが、彼女に取って未だそんな事実は無いことであり、その時命令を下したのが司令だと言う事も理解している。
少なくとも、今日、私達と逢って真っ先に今迄の事を謝罪してきた彼女に含むものはない。
私は、碇君を護っただけだ。

そう言えば、こんなのも居たわね。
オーバー・ザ・レインボーと言う空母に降り立った私達を待ち受けていた赤毛の女。

「あら?ミサトは?」
「葛城さんは…、戦死しました。私は技術部長代理の伊吹マヤ二尉です。貴女がセカンドチルドレンの惣流・アスカ・ラングレーさんね?」

そこまで伊吹二尉が言った時、黄色いヒラヒラのワンピースが捲れ上がり、お子様な下着を披露してくれた。
何故か碇君に殴りかかって来たので私が応戦する。
碇君に向かって振り上げた手を取り、合気道の小手返しの応用で投げる。
セカンドは、回転する形となったため、今度はワンピースが胸まで捲れ上がり、その下の下着を全て曝け出した。
碇君は、それを冷めた眼で見ている。
私、嫌われた?

一瞬浮かんだその考えは、即座に稀有だったと否定された。
碇君が私の腰に手を回し、引き寄せてくれたのだ。

「危ないよ、綾波」
「…も、問題ないわ」

私は、少し驚いてしまう。
碇君は、確かセカンドの事を気に掛けていたはず。
最初の段階では、なんとも思っていなかったのか?
それとも私の作戦が、思いの外効果を上げていて、セカンドに興味が沸かないのか?
どちらにしても、私にとっては、良い傾向だ。

「痛い!あんた何すんのよ!信じらんない!」
「…貴女が殴りかかってくるから」

「そいつが、アタシのパンツ見たからでしょ!見物料よ!」
「…そんなもの勝手に見せておいて、押し売り?」

「ち、違うわよ!で、噂のサードチルドレンてアンタ?」
「・・・・・」

碇君は、何故かセカンドを睨みつけているだけで、答えようとしない。
私は、碇君の腕にしがみ付いた。

「な!は〜ん、アンタらそう言う関係って事!やってらんないわ!ふんっ、アタシが来たからには、もうアンタらには用はないわ!使徒は全部アタシが倒してあげる!」

セカンドは、そう吐き捨てると何処かへ行ってしまった。
伊吹二尉は、オロオロしていたが、ふぅっと溜息を吐き出した。

「行きましょう」
「はい」

碇君は、伊吹二尉に付いて行くので、碇君の腕にしがみ付いていた私もそのまま付いて行く形になる。
どうしたんだろう?
碇君の様子が何時もと違う。

伊吹二尉は、滞りなく国連軍と交渉を終え、今は、3人でラウンジに居る。
私達に飲み物を持ってきてくれ、私と碇君は、それを飲んでいた。

「やぁ、ここ良いかい?」

無精髭を生やした男が伊吹二尉の隣に返事も聞かずに座る。
その横には、セカンドが座った。
セカンドは、碇君を睨み付けている。
碇君は、何故か、目の前の男を睨みつけていた。

「なんか、俺、悪いことしたかな?」
「マヤさんのお知り合いですか?違うなら随分と失礼な方ですね」

「アンタ!加持さんになんて事言うのよ!」
「おぃおぃアスカ、そう怒鳴るなって、俺は、NERVの加持リョウジ。確かに悪かったね、碇シンジ君」

「で、マヤさんのお知り合いなんですか?」
「いや、初めてだと思うよ。それより俺は、君に興味があってね」

「僕は、そう言う趣味は、有りません。気分が悪いので失礼させて頂きます」

そう言って、碇君は席を立って行ってしまった。
碇君が私を置いて行くなんて珍しい。
よっぽど怒っているのか、私は、碇君の後を追う事にした。

「…私も失礼します」
「おやおや、嫌われちゃったな」

「はん!あんな奴ら放っておけば良いのよ」
「だが、彼のシンクロ率はいきなりの実戦で40%オーバーらしいぞ。ね?伊吹マヤ技術部長代理殿」

「うそっ!」
「私の事を?」

「そりゃ、リッちゃんがいつも自慢してたからな」
「先輩のお知り合いだったのですか…」

私は、碇君を追いかけたが、碇君は見当たらなかった。
それより丁度良い、今の内に始末しておこう。
私は、この状況を利用し、先にアダムを処理してしまう事にした。
本部に入ってしまえば厳重な監視がついてしまう。
そう考えた私は、アダムの波動の方へ先に行く事にした。

アダムは、どうでも良いと思っていたが、あの男を始末するにも丁度良い。
自分の欲望のために、乗りたくない碇君を焚き付けエヴァに乗せた男、加持リョウジ。
葛城一尉の元に送ってあげる。
アダムも処理して一石二鳥。



何故?
アダムの波動を辿り、部屋に入るとそこに碇君が居た。

「やぁ綾波。どうしたの?」
「…碇君こそ」

「うん、この世界の僕の力を取り戻しに来た」
「…貴方誰?」

「う〜ん、なんて言えば良いかなぁ。サードインパクトから戻って来た碇シンジ?」
「…碇君…なの?」

「うん、ちょっと人の道を踏み外しちゃってるけど、こんな僕でも今まで通りに付き合ってくれるかな?」
「…碇君!」

感極まるとは、こう言う時に使う言葉なのだろう。
この碇君は、私の本当に求めていた、あの碇君だったのだ。
こんなに嬉しい事は、無い。
そして、今の碇君は、私と同じ感じがする。

「…私は、…私は、…」

上手く言葉が出てこない。

「解ってるよ。綾波もなんでしょ?」

私は、碇君の胸の中で何回も頷いていた。

「お取り込み中、悪いが、それは返してくれるかな」

無粋な男だ。
私と碇君の本当の意味での逢瀬なのに邪魔。
アダムの入っているアタッシュケースに何か細工でもしていたのだろう。
私が、振り返り睨みつけると、その男は血反吐を吐き、壁に叩きつけられていた。

「ぐふっ、な、なんだ?」
「精々、後悔して下さい。貴方にしかできない、貴方なら出来る事を、自分で考え自分で決めた結果でしょ?自分が今何をすべきか、後悔のないように決めた結果でしょ?」

「な、何を言っているんだ?」
「8年前に言えなかった言葉を言う相手は、既に居ません。彼女の元に行って言うのですね」

ぐしゃっと言う音と共に、男はミンチの様に潰れてしまった。

「まだ、上手く力を制御出来ないや。綾波は、これをLCLに出来る?」

コクリと私は、頷くと、そのミンチをLCLへと還元した。
血の臭いが漂うが私達には、慣れ親しんだものだ。

「流石、やっぱり綾波だね」

ニッコリと微笑む碇君に見蕩れてしまう。
この碇君は、やっぱりあの碇君だ。
私は、碇君の唇に貪り付いた。
碇君も応えてくれる。
ここは、あの男の部屋だ。
扉を閉めれば、誰も入って来ない。
私は、自ら服を脱いで行く。
我慢出来ない。

「…碇君」
「綾波」

身体を合わせている間に、碇君は、色々と話をしてくれた。
どうやら私達の時間を遡らせたのは、タブリスらしい。
流石に自由を司る使徒、何でも有りね。
碇君は、第参使徒戦の後の病院で目覚めた時に遡って来たと言う事だった。

私の行動で、私がきっと戻って来ているのだろうと気付いていたそうだ。
でも、アダムを取り込むまでは、力が無いので出来るだけ前と同じ行動を取るようにしていたらしい。
力が無いと言ってもSS機関が無いだけで、ちょっとしたATフィールドぐらいは操れたらしい。
その力でこの部屋に入り、アダムが入っていたアタッシュケースも壊してアダムを取り込んだそうだ。
力を使うと異常にお腹が空くらしい。
そう言えば、碇君は、結構沢山食べていた。
リリンとは、そう言うものかと見ていたけど、こっそり碇君は力を使っていたのね。
私の行動が嬉しかったと言ってくれた。
そのために、予定が狂ったけどと笑っていた。

アダムを取り込んだ碇君は、凄かった。
これを絶倫と言うのね。
外が騒がしくなり、船が大きく揺れたので、私と碇君の結合は中断されたのだが、リリスであるはずの私の腰が立たない。
今夜が待ち遠しい。
どれ程、激しくなるのだろう。

「綾波って、結構、淫乱だったんだね」
「…何を言うのよ」

私達が、ブリッジに移動しようとしている時に船が大きくゆれ、海水が浸水してくる。
どうやら使徒が体当たりを行った結果、船倉に穴が開いたらしい。

「やっぱり弐号機より、覚醒したアダムの波動に引かれるか。それとも弐号機は、もうやられちゃったかな?」

碇君、頼もしくなった気がする。

「ちょっと行ってくるよ」
「…駄目。一緒に」

私は、碇君にしがみ付いた。
今は、一時も離れたくない。

「解ったよ、じゃぁ一緒に行こう」

私は、コクリと頷いた。
碇君は、私を抱えたまま、水の中に飛び込む。
泳げなかったのじゃなかったの?

よく見ると私達は、ATフィールドに包まれていた。

「僕、泳げないから」

ニッコリと微笑む碇君に、顔が熱ってしまう。
私は、碇君にしがみ付いてしまった。
私、邪魔にならない?

「さぁ、帰っておいでガギエル」

碇君が、そう言うと巨大な使徒が霧散していき、紅い塊だけとなる。
それも小さく収縮していくと碇君の手の中に納まった。
碇君が、ぎゅっと手を握り、開いた時には、その紅い塊も無くっている。

「アダムより産まれし者は、アダムに帰る。ただそれだけのことさ。サードインパクトなんて起こらないのにね」

また碇君は、ニッコリと笑った。
私達は、出てきたところに戻り、そこからブリッジに向かう。
ブリッジでは、伊吹二尉が弐号機の回収をお願いしていた。
無事だったのね。
少しがっかりしたが、回収された弐号機は、手足が無く達磨のようだった。
エントリープラグからは、気絶しているセカンドが運び出されている。

セカンドは、そのまま入院らしい。
ブリッジには、弐号機を制御出来るような物は無かったため、セカンドはフィードバックの後遺症が酷いらしい。
シンクロしたまま手足をもがれたのだから、そうだろう。
目覚めても、暫くは手足を動かせないだろうと言う事だった。



本部に戻ると、私達は司令室に呼び出された。
早くホテルに戻りたいのに。
司令室には、司令と副司令が、何時もの姿勢で居た。
司令は、机に両肘を付き、顔の前で手を組んでいる。
その横に副司令は、直立している。

「…シンジ、レイは人では、無い」

言う時期を間違えたわね。
以前なら、碇君に嫌われるかも知れないと動揺したかも知れないが、今は、問題ない。
この碇君は、私の全てを知っている碇君だ。
しかも、碇君自身がアダムを取り込んでいる。

「だから何?」
「…お前は、意味を理解していない」

司令は、いきなり拳銃で私を撃った。
私の前には自動的にATフィールドが出現する。
当然だろう。
私のこの身体はATフィールドで形作られているのだ。

「酷い事するね。で?だから何なの?」
「…お前は、レイが化け物でも構わないのか」

この状況に驚かない碇君に、司令も副司令も逆に驚いている。
副司令などは、口を唖然と開けていた。
こちらは、司令の取った行動に対しての方が衝撃が大きかったのかも知れない。

「化け物って、本当に酷いなぁ。言ってる意味が解らないよ。何が言いたいのさ」
「…お前は、レイと今まで通りに接する事が出来るのか」

「当たり前じゃない」
「し、シンジ君、レイが使徒でも構わないと言うのかね」

碇君の答えに嬌声を上げたのは、副司令だった。
そう、私は、嬉しいのね。

「へぇ〜綾波って使徒だったんだ。じゃぁ殲滅対象?」
「い、いや、そうでは無い」

「…お前は、シンジなのか?」
「うわっ、今度は僕?もう帰っても良い?付き合ってられないよ」

司令は、どうやら私と碇君を引き離したいらしい。
いや、碇君の心を壊したいのか。
どちらにしても言ってる事は、意味の無い事。
碇君が司令室を出て行こうとするので、私も付いて行く。

「…シンジ、お前には失望した」
「僕は、とっくに父さんに失望しているから」



それから使徒は、やって来ない。
碇君がガギエルの魂を取り込んだから、次の使徒に魂が宿らないらしい。
使徒と呼ばれていたのは、アダムの欠片で、アダムに帰るまで進化を続けて行くと言うことだった。
前回は、タブリスがアダムに帰っていたそうだ。
生と死が等価値だと言っていた彼は、身体を持ってアダムと同化するか、魂だけがアダムに帰るかと言う話だったと言うことだと碇君が、言っていた。

一度、私と同化したアダム。
その彼が、碇君に私と共に一度は溶け合っている。
碇君が他人を求めた時、私は碇君を元の姿に戻したが、その際、タブリスは碇君の中に残ったそうだ。
そして、碇君の望みを聞き、過去に戻したと言う事だった。
碇君だけでなく、世界を戻したのだが、リリスである私は、タブリスの力の影響を受けずに意識を持ったまま戻ったと言う事だろう。
戻った時間の違いも、私の力のせいだと思うと碇君は言っていた。

第参使徒が現れたのは、セカンドインパクトから15年ぶりだったため、使徒が来ないと言ってもNERVが即、解体される事はなかった。
私は、現状の爛れた生活に満足している。
後は、碇君の望むままにだ。

「綾波」
「…何?」

「リリンなんて要らないね」
「…そうね」


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夢魔で御座います。
これは、紫の狂気の最初に考えていたプロットを起こしたものです。
勿体無いので短編で、出してみました。
それでは、今後とも宜しくお願い致します。



新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAX の作品です。
拙著は当該作品を元に作成した代物です。
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