第四話
使徒襲来


けたたましく鳴り響く警報。

『繰り返す。総員第一種戦闘配置。対地迎撃戦用意』

「ですって」
「コレは一大事ね」

エレベータを降り、NERV名物の長いエスカレータを降りて、漸くミサトは復活した。
しかし、シンジに謝るでもなく、ただ、別な話題で話し出しただけである。
反省したと言うわけではなく、当面の行動を決定しただけであろう。

「で、初号機はどうなの?」
「B型装備のまま、現在冷却中」

「それホントに動くのぉ。まだ一度も動いた事無いんでしょ」
「起動確率は、0.000000001%。オーナインシステムとは、よく言ったものだわ」

「それって、動かないって事?」
「あら失礼ね、0ではなくってよ」

「数字の上ではね。まぁ、どの道、『動きませんでした』では、もう済まされないわ」
「誰が動かすんです?」

シンジはリツコとミサトの会話に割り込んだ。
リツコは兎も角、ミサトの言い様に我慢ならなかったのだ。

「へっ?」
「動きませんでしたでは済まされないって、誰が動かすんですか?」

「あんたサードチルドレンでしょ?何のためにここに来たの?!」
「さっきの話を聞いてました?」

「グダグダと駄々捏ねてるんじゃないわよ!今は緊急時なのよ!チルドレンならエヴァに乗るのが当たり前でしょ!」
「駄々を捏ねてるのは貴女よ。ミサト」

「リツコ?」
「彼は第二支部所属。同じNERVである以上、NERVの特権は通用しないわ。しかるべき手続きを取らなければ彼をエヴァに乗せるのは組織上、越権行為よ」

「そんなぁ同じNERV内じゃない」
「じゃぁ貴女は、今ドイツに使徒が現れたからレイを寄越せと言われて、ハイそうですかと渡すのかしら?」

「そんな事出来る訳ないじゃない!本部には今チルドレンは、レイしか居ないのよ!」
「第二支部にはそれをするのが当たり前と言うの?」

「そりは・・・だって使徒はもう来てるし、シンジ君はここに居るじゃない」
「葛城さん?仮に僕がエヴァに乗ったとしても、僕に命令出来る人間はここに居ない事になりますよ」

「何言ってるのよ!私がここの作戦課長よ!チルドレンは私の指揮に従う義務があるの!」
「僕は第二支部の所属です」

「屁理屈捏ねてるんじゃないわよ!」
「いい加減にしなさい!ミサト!」

「リツコォ〜」
「組織上の上下で従えと言うなら組織上の横の手続きも解るでしょ!自分の言ってる事が矛盾だらけの我侭だって解らないの?!」

漸く静かになるミサト。
ミサトに取っての優先事項は、今使徒が襲来している事、そしてエヴァを動かせるであろうチルドレンが居る事。
この二つが邪魔をして、エヴァを使って使徒を殲滅する事のみへ思考が流れてしまうのだ。

仮に使徒が来ていなかったならば、ミサトもここまで意固地には、なっていなかったであろう。
シンジの話を聴き、第二支部への手続きを迅速に行ったに違いない。
勿論、実働するのは、彼女を敬愛して止まない腹心、日向マコトである。

「それからリツコさん?全人類を分母とした場合、オーナインかもしれませんが、僕が乗るのなら確率は50:50ですよ」
「随分な自信ですこと!」
「どう言う事かしら?」

シンジの言葉にミサトとリツコが同時に声を発する。

「僕は母さんを憎んでいると言う事です」
「ちょっとあんた!父親の次は母親?全く捻くれてるわね!」

シンクロの実体を知らないミサトには、シンジが単なる反抗期の少年のように感じられた。
しかし、シンクロの実体を知っているリツコにはシンジの言葉の意味が解る。
実際シンジが乗ったなら90%以上の確率で動くと考えられていたのだ。
つまり、シンジの言葉は確率が低いと言っているのである。
ミサトに事実を知らせる訳には行かないため、変な方向に走っているミサトをそのまま放置する事にしたが、シンジには後で詳しく聞こうとこっそり予定の最重要事項に加えていた。



「着いたわ。ここよ」

リツコに促され入った場所は、真っ暗であった。

「節電でしょうか?態々案内する場所の明かりを点けていないって、本当に段取りが悪いですねぇ」
「い、今点けるわ」

内心では、このシナリオを設定した上司を詰りながらリツコは電灯のスイッチを入れる。

「あら?真っ暗だったのに随分作業員の方がいらっしゃったのですね?突発的にブレーカーが落ちたとかでしょうか?」

マユミの言葉に罰の悪そうな顔をするその場に居る作業員達。
リツコも、なんとも言えない顔をしているが、ミサトだけはそんな事は気にも留めていない。
シンジの言った、乗せても指揮を執れないと言う事が頭にこびりついていて、どうすれば良いかを考えているのである。

「シ、シンジ君、こっちよ。人の造り出した究極の汎用人型決戦兵器。人造人間エヴァンゲリオン。その初号機。建造は極秘裏に行われた。我々人類の最後の切り札よ」
「パイロットは専属だし、アンビリカブルケーブルが無ければ5分しか持たないのに汎用は無いんじゃないでしょうか?」
「局地戦専用人型決戦兵器と言うところですね」

「何にも知らない餓鬼が偉そうに言ってるんじゃないわよ!」

『そうだ』

頭上のスピーカーから、声が聞こえる。
あまりの脈絡のなさに、ミサト以外の一同は唖然とした。

「誰です?あれは」
「あれが、貴方のお父さんの碇司令よ」

「えぇ〜っ!本当ですか?信じられません。生命の神秘ですね」
「あんなむさ苦しい顔だったかな?」

「貴方が居なくなってから鬚を伸ばしたのよ」
「でも、鬚にサングラスって・・・まんまヤクザですよ?」

「眼鏡が先に行われた零号機起動実験の事故の時に壊れたのよ」
「それにしても、趣味悪いですよ。あんな趣味悪いのを持ってる時点で怪しすぎます」

シンジ、マユミ、リツコがこそこそと話しているが、ゲンドウには聞こえていない。

『フッ・・・出撃』

別段、親子の会話など期待していなかったゲンドウは、シナリオを進めるべく、唐突な命令に出た。

「出撃!?零号機は凍結中でしょ!?まさか、初号機を使うつもりっ!?」

ポカンと開いた口が塞がらないシンジとマユミ。
先程までの遣り取りなど無かったようなミサトの発言である。

リツコは肩を竦めるだけ。
既にシナリオ通りに演じる気は無いらしい。

『シンジ、お前が乗るのだ』

このゲンドウは、リツコの懐柔を失敗している。
リツコが思い通り動かない事は、想定内であったため、自ら、予定していた科白を言い放った。

「待ってください司令!綾波レイでさえエヴァとシンクロするのに七ヶ月もかかったんです!今来たばかりのシンジ君にはとても無理です!」

『座ってさえいればいい。それ以上は望まん』

自分のシナリオに酔っているゲンドウと、緊迫した中の遣り取りに酔っているミサト。

既にシンジ、マユミ、リツコは傍観者と成り果てていた。

『乗るなら早くしろ。でなければ帰れ!』

「えぇっと、なにやら日本語が不自由なようなので纏めさせて頂きます。この電報紛いの手紙で僕を呼び出したのは、初号機に乗せて使徒を殲滅するためで、乗らないのなら帰れと、こう言う事で間違いありませんか?」

『そうだ!』

「僕が第二支部所属であるのに、正式な召喚手続きも無しに、本部に呼び出し、本部の指揮下に入れと言う事ですね?」

『・・・私は総司令だ。何の問題も無い』

「第二支部長から正式に国連に抗議文が上がっていることも存じていらっしゃると言う事ですね?」

『冬月、レイを起こせ』
『使えるのかね?』
『死んでいる訳ではない』

強引にシナリオ通りに進める事しか知らないゲンドウは、ウダウダと言っているシンジが鬱陶しくなり、次の手段に打って出る。
態とケイジまで聞こえるように、残忍さを演出して。

リツコは何もしない。
元々何もする必要がないのだ。
シンジのパーソナルデータなど無いため、レイのパーソナルデータで初号機はスタンバイされている。

そもそも、既にリツコは事の成り行きを面白そうに見守っていた。
ゲンドウの強姦未遂から、リツコは身辺に気を付けるようになり、ゲンドウもおいそれと手を出せなくなっていた。
更には、何故かリツコに懐いているように見えるレイ。
ゲンドウはリツコにレイの秘密を知らせ、レイを人質にリツコに協力させていたのである。

リツコはレイから、「今は大人しくしておいた方が良い」と言われ、レイと共にそこそこゲンドウに従っているような芝居をしていただけだったのだ。
機会あれば、ナオコと結託し、ゲンドウを裏切る算段は出来上がっていたのである。

「シンジ君それでいいの?何をしにここまで来たの?逃げちゃ駄目よ!シンジ君、お父さんから、何よりも自分からっ!」
「鳥頭ですか?僕が来たのは、この電報紛いの手紙のためで、本部に召喚された訳ではないと説明しましたよね?現実から逃げてるのは、あの男と貴女でしょ?」

ゲンドウが冬月に連絡を入れ、然程時間を置かずにケイジの扉が開き、ストレッチャーに少女が乗せられて運ばれて来た。

更に喚き掛けたミサトだが、その状況に言葉を発するタイミングを失った。

予め用意されていたのであろう。
肌にフィットしたプラグスーツの腕の部分が切り離され、ギプスが捲かれている。
病室から呼び出されたにしては、あまりにも迅速過ぎた。

これ見よがしに、シンジの前を通り過ぎ、ストレッチャーから離れる医師達。
リツコ、シンジ、マユミの3人はストレッチャーに近づいて行く。

『レイ、予備が使えなくなった。出撃だ』

「・・・くっ」

返事は無いが身体を起こそうとする蒼銀の髪に真紅の瞳の少女。
その頭には包帯が捲かれ、片目も眼帯が付けられている。

「レイ様、無理を為さっては、いけません」
「・・・マユミさん?・・・くっ」

「綾波さんだね。初めましてかな?僕が碇シンジだよ」
「・・・碇君?」

待ち侘びた想い人にやっと逢えたレイ。
この時のために10年間、ずっと耐えていたのだ。
今にも爆発しそうな力を抑え、ただ只管、シンジに逢う事を想い描いて。

「こんな僕を随分待っていてくれたんだって?」

コクンと頷くレイ。
その瞳からは泪が零れている。
本性は魔性のリリスも、シンジの前では可愛い乙女となってしまっていた。

本当は恐かった。
このシンジは自分の秘密を知らないはずである。
それを知った時、また拒絶されるのではないのか?
そんな不安が、この10年間レイを苛んでいたのだ。

しかし、今の言葉はきっとマユミから自分の事を聞いたのであろうと理解出来る。
どこまで聞いてるかは、解らないが、それでも自分を見てくれるのだ。
ずっと待ち焦がれていたその、優しい瞳で。

レイは感極まっていた。

シンジは携帯電話を取り出すとどこかへ連絡を入れる。

『いつまでそこに居る!お前など必要ない!さっさと帰れ! 人類の存亡をかけた戦いに臆病者は不要だっ!!』

「乗りなさいシンジ君!!シンジ君が乗らなければ、その娘が乗る事になるのよ!恥ずかしくないのっ?!」

「はい、予定通りでした。お願いします」

周りの言葉を煩そうに、電話を切るシンジ。

「葛城さん?綾波を乗せようとしているのは、あそこに居る碇ゲンドウです。僕じゃありませんよ。それに、僕は正規の指示であれば、エヴァに乗る事は吝かではありません」

そのシンジの言葉を待っていたかのように、ケイジとゲンドウの居る部屋に黒服が雪崩れ込んで来た。

「ゲンドウさん、少し計画が粗すぎたようね。貴方には人類補完委員会から召喚命令が出ていますわ。現時点を以って、NERV本部は私、赤城ナオコ第二支部副支部長が、総司令代理を務める事になりました」

「母さん!」

黒服に護られ、真ん中に出てきた女性に向かって、リツコが喜色を浮かべる。
その女性の微笑みを浮かべる唇は紫。

「ちょっとあんた!何勝手な事言ってんのよ!」

「葛城一尉を上官侮辱罪で営倉に」
「「「はっ!」」」

「ちょっと!何すんのよ!放しなさい!私はNERV本部の作戦課長なのよ!」
「その作戦課長さんが、総司令代理を侮辱したんだろうが」

引き摺られて行くミサト。

上方の防弾ガラスの先では、ゲンドウが大人しく捕まっている。
その眼はナオコを殺さんばかりの殺気を持って睨みつけていた。

『貴様・・・こんな事をして只で済むと思っているのか!』

「さぁどうでしょう?でもゲンドウちゃん?貴方の司令解任は決定事項よ。老人達が貴方をどうするかは解っているでしょ?」

そう言って微笑むナオコに、ゲンドウは顔を青くした。
必要の無くなった者は抹殺。それがゼーレの遣り方だからだ。
そして、自分もそうやって今まで遣ってきたのである。
その抹殺に失敗したのが、眼の前に居るナオコであった。

ギリギリと歯軋りをするゲンドウ。

「さぁレイちゃんは病室でゆっくり休んでいて。シンジ君。出撃よ」
「了解。綾波、インタフェースを借りるよ。後でゆっくりとね」

シンジの言葉にコクンと頷くレイ。
シンジはそっと、レイの頭からヘッドセットインタフェースを取り、自分の頭に付ける。
マユミとリツコは微笑んでその姿を見ていた。

「ナオコさん。四号機は?」
「ごめんなさいマユミ。ここに降りれる設備がなかったの。今は松代に置いてきたわ」

「そうですか、しかたありませんね」
「シンジ君だけじゃ不安?」

「いえ、でもいざと言う時に役に立てないのは、少し寂しいです」
「大丈夫よ、発令所でシンジ君の勇士を一緒に見ましょう」



ドカドカと黒服に護れる形で入ってきた集団に、発令所は一瞬固まってしまった。

「NERV総司令は造反、作戦課長は乱心。従って現時刻を以って、私、第二支部副支部長である赤木ナオコが、総司令代理を務める事になりました。異論の在る者は、営倉若しくは射殺です」

いきなりの言葉に理解するまで時間が掛かる発令所の面々。
ナオコはゆっくりと上段を見上げ、そこに居る副司令、冬月コウゾウと眼を合わせる。

「宜しいですね?副司令」
「あっああ、それが国連の通達なのだね」

「その通りです。ではエヴァンゲリオン初号機発進シーケンス開始!リっちゃん宜しくお願い」
「解ったわ、母さん。マヤ!始めて頂戴」

「は、はい!」

技術部のメインオペレータである伊吹マヤは、いきなりの状況に呆けていたが、尊敬する先輩であるリツコが何も動じず指示を出して来た事に安堵を覚え、はりきってその指示を実施した。

「エントリープラグ挿入」
「プラグ固定終了」
「第一次接触開始」
「LCL注入」

「主電源接続」
「全回路動力伝達」
「第2次コンタクト開始」
「思考形態は日本語を基礎原則としてフィックス!」
「A10神経接続異常なし」
「初期コンタクト全て異常なし」
「双方向回線開きます」

「シンクロ率・・・26.12%」
「ハーモニクス、全て正常位置。暴走、ありません!」


「碇・・・これはシナリオにはないぞ」

刻々と進んで行く状況に冬月は、ゲンドウのシナリオから大きく外れている事を嘆いていた。

ゲンドウが拘束されたのであれば、自分も遠からず同じ運命であろう。
だからナオコ君の処分には反対したんだ。

今更、どうにもならない後悔が冬月の中で蠢いていた。


「やっぱり低いわね」
「はい、シンジ様は御母堂様を憎んでおられますから」

「でも大丈夫なんでしょ?」
「はい、今回は作戦が必要ですが、大丈夫なはずです」

「作戦か・・・ここの作戦担当は何方かしら?!」

ナオコが少し大き目の声で尋ねる。

「お言葉ですが、作戦課長は乱心して営倉だと・・・」
「作戦課長しか作戦課は居ないのかしら?作戦課長が不足の事態に陥ったらどういうバックアップ体制なのかしら?」

「そ、それは小生が代理を務める予定です!」

オペレータ席を立ち上がり、ナオコに敬礼をして答える眼鏡のオペレータ、日向マコト。

「では、パイロットと協力して作戦立案を行って下さい」
「はっ!」

マコトは一応軍人であった。
ミサトの事は気になるが、現状遣るべき優先順位は理解している。
オペレータ席に座りなおすと、マコトはエントリープラグに通信を繋いだ。

「えぇっと、サードチルドレンかな?聞こえるかい?」

『はい、碇シンジです』

「そうか、僕は日向マコト、作戦課長が不在なので急遽指揮を執らせてもらうよ」

『了解です。使徒の位置と、射出位置、それと武装と援護できる物を教えて下さい』

「使徒の位置と、射出位置は今モニターに出すよ。申し訳ないが武装は現在無い。援護出来る兵装ビルも皆無だ」

『了解です。肉弾戦のみと言う事ですね?』

「すまない。準備が間に合っていなくて」

『射出先を、今の予定からもう一つ使徒と離れた所にしてください。使徒とエヴァの線上に射出口が一つ鋏む形です』

「解った、これで良いかい?」

『はい、ありがとう御座います。射出されたら僕は動かないでなんとか使徒の注意を引きます。僕が合図したら、間の射出口を開けてください』

「解った!落とし穴代わりに使うんだね?」

『はい、シンクロ率が低いようなので。緩慢な動きしかできません。使徒が倒れてくれたら儲け物です』

「じゃぁ、用意は良いかい?」

『どうぞ』

マコトが後ろを振り向きリツコに頷く。

「エヴァンゲリオン初号機!発進準備!!」

リツコの号令が響いた。

『第一ロックボルト解除!』
『解除確認!アンビリカルブリッジ移動開始!』
『第2ロックボルト解除!』
『第一拘束具を除去!』
『同じく第2拘束具を除去!』
『1番から15番までの安全装置を解除!』
『内部電源充電完了!』
『外部電源用コンセント異常なし!』

ケイジ内に、逐一、現状が大音量で流れて行く。

「EVA初号機射出口へ!」

マコトの号令で射出口へ移動していく初号機。

『5番ゲートスタンバイ!』

「進路クリア!オールグリーン!」
「発進準備完了!」

リツコは背後を振り返ると、満足そうに頷く母ナオコと、苦虫を噛み潰したような冬月が眼に入った。
思わず笑みが零れる。

「シンジ君!ちょっとGが掛かるわよ!エヴァンゲリオン初号機発進!!」

『くっ!』

その凄まじいスピードによるGの為にたまらず呻くシンジ。

地上に出たエヴァンゲリオン初号機。
目の前に使徒の姿。その姿は地下のNERV発令所にも送られる。

「目標は、最終防衛ラインに侵入しました」

モニターに映る、第三新東京市街へと侵入する使徒の姿が見える。

「最終安全装置、解除!エヴァンゲリオン初号機、リフト・オフ!!後は任せたわ!シンジ君!」

リツコの声にコクリと頷くシンジの姿がモニターに映し出されていた。



地上に射出されるエヴァンゲリオン初号機。
その姿は、紫の鬼とでも形容されよう。

ロックボルトを解除された初号機の立つ姿は、猫背気味であり、どこか不健康を感じさせる。
その気配を感じたのか、使徒が初号機の方を向いた。
対峙する使徒と初号機。

暫く経って使徒も動き出さないのでシンジは、ゆっくりと使徒の方へ進む。

発令所内に湧き上がる歓声。
本部では未だちゃんと動いたエヴァを見た事が無かったのである。

初号機が近付いて来る事に、興味を持ったのか使徒も初号機の方に近付いて来た。
思惑通りだ。
シンジは初号機の歩みを止める。

使徒はゆっくりと初号機に向かって歩いて来る。
いきなり光線で攻撃されなかったのは幸いであった。

『今です!日向さん!』

「了解!」

日向のオペレートにより、絶妙のタイミングで使徒が足を踏み下ろした所に射出口が開く。
盛大にこける使徒。

シンジはここぞとばかりに使徒の背中に乗り、拳を滅多打ちにした。
蠢く使徒。
飛び散る体液。

初号機は使徒の腕を人間では有り得ない方向に曲げ、そのバイルで背中から滅多突きにする。
その光景のおぞましさにマヤは口を押さえた。

使徒の動きが鈍くなったと思ったら、ゴムの様に初号機に纏わり付いてきた。

「自爆するつもり!」

リツコの叫びと共にホワイトアウトするメインモニター。
沈黙する発令所。
映像の回復と共に初号機の立ち尽くす姿が映し出された。

「パターン青消滅、使徒消滅しました」
「初号機健在です」

シゲルとマヤの報告により、緊張していた発令所に安堵の息が漏れる。

「流石シンジ君ね」
「はい、無事に帰ってこれそうで一安心です」

ニッコリと微笑み合うナオコとマユミ。

「現時刻を以て作戦を終了します。第一種警戒態勢へ移行」
「了解、状況イエローへ速やかに移行」

ナオコの戦闘終了の合図と共に、マコトが状況の移行を復唱した。

「初号機とパイロットを回収、パイロットの生命維持を最優先にして」

リツコは最後の指示を出すと、ふぅっと大きく息を吐いた。

「ご苦労様、リっちゃん」
「母さん」

抱き合うリツコとナオコ。

発令所に入ってきた状況を考えると、発令所の職員はナオコに恐ろしい物さえ感じていたのだが、リツコの状況を見て安心していた。
よくよく考えれば、あの不気味で何を考えているのか解らない司令より、よっぽど親しみ易そうである。

「これからが大変よ」
「解っているわ」

そんな発令所の職員達の思いとは裏腹に、抱き合ってる母子は危険な言葉を交わしていた。


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新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAX の作品です。
拙著は当該作品を元に作成した代物です。
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