第八話
ヒカリ、心の向こうに


「成る程、ケイジでの事は反省していると言う事ね」
「はい!」

司令室でナオコはミサトの始末書を読んでいた。
冬月も今日は隣に立っており、コピーに目を通している。
ミサトはナオコの前で直立不動で立っており、その内容には自信があるようだ。

「では、どう言う対処が適切だったと思っているのかしら?」
「それは、碇シンジ君の言を真摯に受け止め、速やかに第二支部に問い合わせ、支部の合意を得るべきだったと思います」

それは、マコトに散々教え込まれた模範解答であった。
ミサトは、そんなのは事後承諾で構わないと未だに思っている。
本心は、有無を言わせずに放り込めば良かった、説得しようとしたのが間違いだったと思っているし、マコトに見せた時はそう書かれていた。

ここにエヴァがシンクロシステムによりパイロットの思考によって動かされる事が忘れ去られている。
下手にパイロットに敵愾心を持たせたら、エヴァが本部自体を攻撃してしまう可能性だってあるのだ。
怒りの感情こそ、制御が効かないのだから、それこそ14歳の子供を怒らせて切れでもされたら、外部制御など効かなくなる事も充分予想される。
しかし、ミサトはそんな事は考えない。
乗せてしまえば命令するだけだと思っている。

そして、現状でシンジは本部に異動しているのだ。
この場さえ乗り切れば、後は自分の指揮でエヴァを動かせると考えていたのである。

「そう、じゃぁ次に作戦時の行動だけど、あの作戦は妥当では無かったと思うのね?」
「はい!使徒が侵攻している中、のんびりと作戦を考え伝えているのは時間の無駄です。速やかにエヴァを発進させ、敵生態と対峙させ、臨機応変に指示を出すべきだと考えます」

それは、マコトが自分の作戦と行動に対する批判のため、特に指摘しなかった内容であった。
一応、作戦課の上司であるのだから、作戦行動については、ミサトの方が権限があるし、その場での行動は文字で書いても何とも言えない。
特に「臨機応変に指示」などと書かれては、指摘のしようも無かったのである。

確かに、熟練したパイロットならそれで良いだろう。
指揮官と阿吽の呼吸が取れているなら、最も有効であるかも知れない。
だが、その相手は素人に等しいのだ。
シンジはサードチルドレンに選抜されていたとは言え、初号機とのシンクロは初めての事である。
しかもミサトはシンジが第二支部に所属していた事を知らなかった。
素人だと思っているのに、それは無謀と言う物だ。

「ミサトちゃん?貴女NERVを辞めなさい。センスが無いわ」
「なっ!お言葉ですが、戦術については私の方が専門です!是非、私の指揮をごらんになってから判断してください」

それは暗に、お前は戦闘については何も解ってないと馬鹿にした物言いなのだが、必死なミサトにはそんな事に気が付かない。
使徒戦で自分が指揮を執れば、自分の実力を理解してもらえると信じていた。

実は、ミサトがそう思うには理由がある。
ミサトはペーパーテストの成績は、あまり良くなかったのだが、実技は何故か戦果を上げていたのだ。
それは、自らの部隊の被害を考えない戦術であったためだが送り込まれているゼーレの息が掛かった者達が全面的にバックアップしていた為、その事を揉消されて戦果だけが伝えられていたのだ。

従ってミサト自身も、実戦でこそ実力を発揮すると自らも信じていたのである。
しかし、ナオコはそんな内実すら熟知していた。

「解ったわ。現時点を以て作戦課長の権限を戻します」

ナオコがそう言った瞬間、ミサトの顔に満面の喜びが浮かんだ。
それに反して冬月は驚愕の表情を見せる。
ナオコから、チルドレンは彼女に命令される事を拒否していると聞かされたばかりだったのだ。

「但し、チルドレンは現在、技官扱いでNERVに協力して貰っていると言う位置付けです。従って作戦課長の部下でありません。勿論、命令権もありません。戦闘時は戦闘指揮系統に組み込まれますが、彼らの発言は技官として認められており、こちらの命令に対しても拒否する事が出来ます」
「ちょ、ちょっと待って下さい」

「何か?」
「それでは指揮系統が乱れて、統率が取れません」

「格闘戦を主体とするエヴァの戦闘に於いて、先の戦闘での作戦指示が限界と捉えております。NERVの作戦課としては、如何に彼らを支援するか。それに尽きます」
「たかが中学生の判断に任せる訳には行きません」

「その中学生にNERVは頼らざるを得ないと言う事をお忘れ無く。では、作戦課長の任を解きます。現時点を以て保安部への異動を命じます。以後の指示は保安部長に聞いて下さい」
「ま、待って下さい!」

「私の命令を聞けない貴女が指揮系統の話など、片腹痛い話です。以上よ。下がって下さい」

ミサトはトボトボと司令室を後にした。
またしても自らの傲慢さで、今度は作戦課長から下ろされてしまったのだ。
何が悪かったのか?
こんな事なら3週間休暇を取っておくのだったと言う後悔しかミサトには浮かばなかった。

「良かったのかね?」
「何がでしょうか?」

「葛城君の処遇だよ」
「どうした方が宜しかったと?」

「一度も指揮を執っていないのだから、一度くらい執らせてから判断しても良かったのでは無いかね?」
「その一度で人類滅亡を迎えたくは有りませんわ」

冬月は、ミサトの言葉に遂、恐い物見たさが顔を出したのだった。
科学者の性かも知れない。

「失敗は許されないか」
「時間も有りません事ですしね」



シンジ達も学校が終ると技術部に行き、忙しく手伝って居た。

因みにシンクロテストは、四号機が搬入された時に一度行われただけである。
テスト自体に時間が掛る事もあるが、そのデータは解析しなければならない。
それがまた膨大に時間が掛るのだ。

しかし、今は、他に優先して行う仕事があった。
リツコは一応ゼーレに報告しなければならないため、使徒の解析などで忙しい。
そのため、シンジ達まで駆り出されて手伝わされていたのである。

シンジ達が何をしているのかと言うとデータの打ち込みである。
マユミから得たデータ、ゼーレの本拠地や研究施設などをMAGIに入力しているのである。
その作業は3人一組で行われていた。
マユミが場所を指示し、シンジがMAGIの地図でそれを探す。
レイがデータ化して打ち込むのだ。

シンジ達3人は学校が終ると毎日NERVで夜遅くまで作業を行っていた。
だからと言って夜のお勤めを疎かにしている訳ではない。

シンジ達の夜の営みは、マユミの言葉から始まる事が多い。

「今日は、これを試してみませんか?」

何処から仕入れたのか解らない妖しい道具を持ってマユミは、二人にニコッと微笑む。
日本に来てからマユミは多量に、それらの道具、主に大人の玩具と言われる物を、仕入れていた。
既に【マユミの道具部屋】と書かれた部屋には、所狭しとそれらの道具が並んでいる。
一部屋丸々、それらの道具部屋としている所がマユミらしい。

「・・・一体何処から仕入れているの?」
「企業秘密です。でもこう言う物は日本に限りますね。諸外国の物はどうしても大雑把で」

「大掛かりな物は外国の方が良いよね」
「それは、そうで御座いますね。日本製の三角木馬とかは、チャチですし」

「・・・碇君もそう言う世界の人になってしまったのね」
「シンジ様は、元からで御座います。初めての時なんて私を手錠で・・・」

「あわわ、余計な事言わなくて良いって」
「・・・誘導したのはマユミさんでしょ?」

「それは否定致しません」
「・・・それで、どう使うの」

「それは、ですね、ここに足を通すと、ここの部分が当るようになっておりまして」
「・・・実演」

その言葉が合図となる。
当然の事だが、使い方は仕入れた本人が知っている。
レイは、それを実演して見せろと言っているのだ。

「はい。畏まりました」

静かに返事をすると身に纏っている物を脱ぎ出すマユミ。
そんなマユミをシンジとレイは、ソファーに腰掛け、ドリンクを飲みながら眺めている。

マユミは、ユックリとメイド服を脱ぐと、そこには薄いブルーの下着と黒のガーターベルトに吊られたストッキングが露わになる。
ハーフカップのブラは、マユミの豊満な乳房を押し上げ、胸に谷間を強調させていた。

珍しくお尻全体を包むパンティは、シースルーで、その中身を隠す役目を果たしていない。
マユミは後ろを向くとパンティを下ろす。
プルンと電灯の下に晒されるマユミのお尻は、丸く艶やかであった。

足からパンティを引き抜くと前を向きブラを外す。
正面を向いたマユミの股間に陰毛は無い。
ブラを外したマユミの胸は、豊満だが垂れておらず、その乳首は上を向いている。
ガーターベルトとストッキングと、メイドらしい頭の飾りと眼鏡を残し、裸体を晒すマユミ。

「・・・続けて」

一通りその姿を観賞し終えるとレイが先を促した。

「はい、ここを足に通します」

そう言って、今日仕入れた道具のゴムのベルト状になっている部分に足を通す。
二つあるその輪っかの真ん中には、蝶々型の物体が存在していた。

「こうして根本まで上げると、これがここに当る訳です」

蝶々型の物体は、マユミの秘部にすっぽりと収まった。

「これがスイッチ?」
「あっ」

シンジがスイッチらしき物を入れると低い駆動音と共に震え出す器具。
マユミは直立のまま、その振動に耐えていた。

「これに、一昨日だかの乳首を責めるベルトを付けて明日は学校に行く?」
「シンジ様が望まれるのでしたら」
「ちょっと付けてみようか」

シンジは、そう言うと【マユミの道具部屋】へ行き、それ以外にも色々な道具を持ってくる。
ブラジャーの縁だけのようなそのベルトは、乳首の先に小さなローターが付いている物であった。
それを、付けるとシンジはソファーに座り直す。

マユミは直立のまま、その刺激に耐えていた。
股間は既に太腿まで濡れ光っている。

「随分気持ち良いみたいだね」
「はい」

シンジは立ち上がるとマユミに口付けする。
貪るようにシンジの口を吸い、口の中に舌を這い回らせる。
シンジは、マユミの内股を手で撫で、そこに流れている物を拭う。

「・・・淫乱」

レイは、そう言うとマユミをソファーに引き擦り込んだ。

マユミを仰向けに寝かせると、自分は黒い下着を脱ぎ、そのままマユミの顔に股間を押付ける。
シンジは、マユミの足の方に座り、膝を立たせて足を開くと、マユミが用意していた玩具をマユミの股間に使い始めた。
マユミの上で唇を重ねるシンジとレイ。

レイは、マユミの顔の上で腰を振る。
その手はマユミの胸を愛撫している。
シンジは、指や玩具でマユミの穴を弄ぶ。
シンジの動作に時々呻きながらも、マユミは必死でレイの股間に舌を這わせ続けた。

始まりは、このように少し変態チックにマユミを苛める所から始まるのだが、クライマックスに入って来ると、3人の姿は人外の物となる。
3人の身体は、あちらこちらが融合し、3人で一つの身体となっている。
腕は誰かの身体を通り抜け、誰かの身体を愛撫している。

レイとマユミは自らの胸をお互いの胸に擦り付ける。
シンジの股間には何本もの陰茎が存在し、レイとマユミのそれぞれの穴を全て埋めている。
陰茎そのものも、食指のように二人の内臓を弄っており、二人の子宮や尿道、直腸、果ては小腸まで、有り得ない陵辱を行っている。

内臓を貪られる快感にレイもマユミも恍惚の表情を浮かべていた。

舌は絡み合い、蛇のように伸びて嘗め回しており、髪は振り乱れ、激しい動きが股間を突き抜けていく。
融合している部分から相手の快感が伝わり、誰の感覚か解らない。
どこまでが自分で、どこからが相手なのか解らない世界。
文字通り、身体も心も一つになって貪る快感。

その為と言う訳では無いのだが、最近は皆、学校で寝ている。
しかし、そこはNERV権限で不問にするように通達が出されていた。

「貴方の偽善で人類を滅ぼすつもり?なら私が先に貴方を滅ぼしてあげるわ。それでなくても日本政府の偽善のためにあの子達を学校に通わせるような無駄な事をしなければ行けないのよ」

抗議した教師はリツコにそう言われ、銃を向けられた。
冗談だろうと思っていた教師に、リツコは躊躇なく発砲したのだった。
その弾は、教師には当らなかったが、教師を黙らせるには有効であった。

ミサトは現在、保安部で諜報部と協力して第三新東京市に入ってくる敵対組織のスパイ狩りを行っていた。
鬱憤を晴らすのに丁度よい仕事だったらしい。

そして、あっと言う間に2週間と言う時が過ぎた。



一波乱あったのだが、ケンスケは学校に来ていた。
元々白かった女子生徒の目が真っ白になった程度で、然程ケンスケの学校生活に変化は無かったらしい。
模型の飛行機を手で飛ばしながら、ハンディカメラで撮影しているケンスケ。

「プリント持って行ってくれた?」

あまり話したくはないのだが、委員長と言う役職と、それが想い人への用事であったが為にヒカリは、止むを得ずケンスケに確認を行いに来ていた。

「あ、あぁなんか鈴原、家にも居なくってさぁ」

と言いながらケンスケはプリントを机の中に押しやっていた。
すっかり忘れていたのである。

「もぅ・・・鈴原と友達でしょ?ちゃんと届けてよね」

(忘れてたなら忘れてたってはっきり言いなさいよ・・・)

ケンスケの曖昧な返事にヒカリは、少し苛立っている。
ヒカリには、ケンスケが「忘れてた」とでも言えば、自分で届けに行くと言う口実が出来たのだ。

その時、ガラリとドアが開き、ジャージ姿の少年が入って来た。
件の少年、鈴原トウジである。

「鈴原・・・」

ヒカリが呆けているのをこれ幸いにとケンスケは、その少年に声を掛けた。

「よう」
「やっぱ、えらいへっとるのう」

トウジは、鞄を乱暴に掛けると、足を机の上に乗せ腕を組み、不遜な態度で呟いた。

「疎開だよ、疎開。今さら何を・・・みんな転校しちゃったよ、街中であれだけ派手な戦闘やられちゃあ・・・な」
「喜んどんのはお前だけやろな。ナマのドンパチ見られるよってに」

「まぁね・・・トウジはなんで休んで居たんだよ」
「妹の奴がな・・・こないだのドンパチで怪我してしもうてん。うちはおとんもおじいも研究所勤めやさかい、わいが見てたらなあいつ一人になってしまうねん」

「そうだったのか・・・」
「しっかし、あのロボットのパイロットほんまヘボやのお、味方が暴れてどなするっちゅうねん」

「トウジ・・・その事なんだけどちょっとな」
「なんや?」

「トウジが休んでる間に転校生が来たんだよ」
「転校生?それがどないしたっちゅうねん」

「おかしいと思わないか?この時期にだぜ?俺はあいつがパイロットじゃないかと睨んでるんだ」
「ほんまか?!」

トウジが勢いよく立ち上がり椅子が倒れる。
何人かが、その音に振り向いたが、トウジの激怒している顔に、元の向きに戻って行った。

「ま、まだ決定した訳じゃないよ、でもかなり確立高いと見ているんだ」

ケンスケの言葉に、フンッと鼻を鳴らし、ドカッと椅子に座るトウジ。
その目は机に突っ伏して寝ているシンジを睨付けていた。

ケンスケとトウジの会話が聞こえていたヒカリは、顔を青くしていた。
ヒカリはレイがエヴァのパイロットだと言う事を既に知っていたのだ。
相談しようとレイの方を見たが、既に寝てしまっている。
考え倦ねているうちに、予鈴が鳴ってしまい、ヒカリは仕方なく席に着く事にした。

授業中、シンジの端末にポップアップメッセージが届く。

『碇君があのロボットのパイロットって言うのはホント?Y/N』

しかし、爆睡しているシンジは気付かない。
マユミの端末にも同様のメッセージが届いていたのだが、こちらも同じく爆睡中であった。



「おいっ!転校生何時まで寝とんねん!」

授業が終るといきなりシンジの腕を掴み起こすトウジ。

「何?」

シンジは眼を擦りながら、腕を掴んでいる相手を見上げる。

「話があるんや。ちょう付き合えや」

トウジは、そう言うなり、シンジの腕を引っ張り強引に連れ出そうとする。

「ちょ、ちょっと!何するんだよ!」

シンジもいきなり起き掛けに行われた、理不尽な扱いに機嫌を悪くした。
掴まれていた手を振り払い、トウジを睨みつける。

「・・・何?」
「シンジ様に何をなさるんですか?!」

レイとマユミがトウジの前に立ちはだかる。
この二人はシンジの危機には敏感なのだ。

「なんやお前達?わいは、転校生に用があるんや!関係無い奴は引っ込んどれ!」
「私も転校生ですが?」

マユミの言葉にたじろぐトウジ。

「くっ、ほんならここでかまへんわ。お前があんロボットのパイロットってほんまか?!」
「ロボットってエヴァの事?それなら僕もマユミも綾波もパイロットだけど?」

「「「「「えぇ〜〜〜っ!」」」」」

「どうやって選ばれたの?」
「乗ってて恐くない?」
「必殺技とかあるの?」
「綾波さんもパイロットだったの?」

トウジは押し退けられ、シンジばかりかマユミとレイも答える間もなく矢継ぎ早に質問責めにされる。

「どけっ!どかんか!おのれらぁっ!」

人垣を押し退けトウジはシンジの胸座を掴み上げた。

「くっ!すまんな転校生。わしはお前を殴らなあかん。殴らな気がすまんのじゃ!」

言うが早いかシンジは殴り飛ばされる。
人込みがクッションとなり、シンジが床に激突する事は無かった。

「碇君!」
「シンジ様!」

レイとマユミが駆け寄り、マユミがシンジの頭を抱える。
レイがハンカチを出し、唇から血が出ているシンジの血を拭う。

「今度から戦う時はちゃんと足下見て戦うんやな!」

そう言うとトウジは自分の席に着こうとする。

「お待ち下さい!」
「なんや?」

マユミの言葉にトウジは振り返り、さも鬱陶し気に答える。

「何故、シンジ様が貴方に殴られなければならないのですか?!」
「わしの妹はこの前の戦闘で瓦礫に挟まれて怪我したんや。そいつがロボットで無茶苦茶暴れたせいや!」

「妹さんのお名前は、何と仰られるのでしょうか?」
「そんなん関係あらへんやろ!」

「鈴原!」
「な、なんや?委員長」

「鈴原様ですね。そうすると妹さんと仰られるのは鈴原ナツミ様でしょうか?」
「あぁそうや」

忌々しげな顔をして答えるトウジ。
マユミは手帳を開きながら確認する。

「でしたら、戦略自衛隊の作戦であるNN地雷の衝撃波により、瓦礫の下敷きになり、病院に収容とありますね。シンジ様が出撃なされたのは、そのずっと後ですが?」
「なっ!そんなもんさっさとロボットで出撃せえへんからやろ!」

「NN地雷は戦略自衛隊の作戦と申し上げました。その時点でNERVに指揮権は御座いません。当然出撃する事は叶いません。何故シンジ様が貴方に殴られなければならないのでしょうか?」
「くっ!知るか!そんなもん!そいつのせいで妹が怪我したんや」

トウジは頬に衝撃を受け、一瞬何が起こったのか解らなかった。
激しい音を立て、トウジの頬を平手打ちしたのはヒカリであった。

「鈴原の馬鹿!」
「い、委員長・・・」

走り去るヒカリ。
辺りに沈黙が流れる。

その時3人の携帯が鳴り響いた。
最初に携帯を取り出したのはレイであった。

「・・・碇君、マユミさん、非常招集」

レイの言葉にシンジとマユミは頷くと、3人は教室を後にした。
その場に残ったのは呆然としたトウジと、トウジに白い目を向けるクラスメート。
ケンスケだけは、これはまずいなとトウジの事を心配していた。



シェルターの中、ケンスケは、ただ黙ってじっと自分のハンディカメラのモニターを見ている。
切り替えても切り替えてもどのチャンネルも画面は同じ。
お花畑の静止画像に思わずケンスケは声を漏らした。

「ちっ、又だ!」
「又、文字だけなんか?」

後ろから詰まらなそうに天井を見つめながらトウジが言う。
皆から白い目で見られていたが、ケンスケだけは、普段と変わらず接していたのだ。
先の盗撮事件で白い目に晒されたケンスケは、同類が出来たと思っているのかもしれない。

元々、この二人はいつも連んでおり、今回の件で更にクラスから浮き上がる事になった。
シェルターの一角では、ヒカリがまだ泣いており、トウジにはそれがいたたまれない。
ケンスケと話でもしていなければ遣り切れなかったのだ。

「報道管制って奴だよ。我々民間人には見せてくれないんだ。こんなビッグイベントだって言うのに!」

ケンスケが天井を見上げると爆音のような音と共に、微震が連続している。

「ねぇ、ちょっと二人で話があるんだけど」
「なんや?」
「ちょっと、なっ」

目配せするケンスケ。

「しゃーないな、委員長!」
「なによっ!」

振返ったヒカリの目は赤く腫れており、口調も怒気を含んでいる。
一緒に居た回りの女子生徒も、トウジの事を睨付けていた。

「わ、わしら二人、便所や」
「勝手に行けばいいでしょ!」

ヒカリは、そう言い放つとプイッと皆の輪の方に顔を戻す。
トウジは、それを受けて踵を返し、トイレのある出口へとケンスケと向かった。



「で、何や?」

ジャージを膝まで下ろし、用を足しながらケンスケに尋ねるトウジ。

「死ぬまでに一度だけでも見たいんだよ!」
「上のドンパチか?」

腰を縦に振ると、トウジはジャージを擦り上げた。

「今度またいつ敵が来てくれるかどうかもわかんないし」
「ケンスケ、お前な・・・」

流石のトウジもケンスケの言葉に呆れる。

「この時を逃しては、あるいは永久に・・・なっ、頼むよ。ロック外すの手伝ってくれ」
「外に出たら死んでまうで」
「ここにいたって、わからないよ。どうせ死ぬなら見てからがいい」

拳を握り締め熱弁するケンスケの口調には熱意が篭もっていた。
だが応対する方のトウジには気が入っていない。
シンジを殴った事が気に掛っているのだ。
今では、明かに八つ当たりだったと自覚している。

「なんの為にNERVがおんねん。NERVが守ってくれるわい」
「そのネルフの決戦兵器って何なんだよ。あの転校生が操縦するロボットだよ。この前もあいつが俺たちを守ったんだ。それなのにトウジは殴りかかってさ。そのせいであのロボットが満足に動かないようだったら・・・・・」

ケンスケは態と次の言葉までの間を作った。
そしてトウジの耳元に口を寄せ、小声で言う。

「みんな、死ぬぞ」
「・・・・・」

「トウジにはあいつの戦いを見守る義務があるんじゃないのか?」
「しゃあないなぁ。お前ホンマ自分の欲望に素直なやっちゃな」

頭をポリポリ掻きながらトイレを出るトウジ。
満面の笑みを浮かべてケンスケは後を追った。



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新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAX の作品です。
拙著は当該作品を元に作成した代物です。
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