魔法先生……? ネギ魔!
 
 
書いた人:U16
 
第16話
 
 眼前に佇むだけで、物凄い威圧感を放つケルベロスに対し、作戦を練る少女達は夕映のアーティファクトから得られる情報を持ってしても、コレといった弱点が見あたらない事に途方に暮れていた。
 
「と言うか、それ以前に、アレが本物のケルベロスなのか? と問われると答えに困るところですが……」
 
「いや、ここまできて弱気になられても困るんだけどさ」
 
 溜息混じりに裕奈が突っ込むが、彼女にしても何かしらの対策があるわけでもない。
 
「……では作戦を伝えるです」
 
 夕映の立案した作戦はこうだ。
 
 ──彼女が防御を務めるので、裕奈が攻撃。その補助を夕映の魔法によって強化したアキラとまき絵が行う。
 
「それでのどか、ケルベロスの思考は読めたですか?」
 
 という夕映の質問に対し、のどかは力無く首を振り、
 
「ううん。……やっぱり名前が分からないと駄目みたい」
 
 ケルベロスはあくまでも種族名であって、個体名ではない為、のどかのアーティファクト、“イドの絵日記”の力は通用しない。
 
「分かりました。ではのどかは亜子さんの護衛をお願いするです」
 
「──うん」
 
 頷き、のどかは懐から携帯式の初心者用杖を取り出す。
 
「あ、あの……、ウチは?」
 
「……そうですね、亜子さんのアーティファクトの能力はどのような物ですか?」
 
 夕映の質問に対し、亜子は戸惑い、
 
「ご、ゴメン。分からへん」
 
 しかし、その答えを聞いても夕映は何も失望した様子もなく、エヴァンジェリンに向けて声を張り上げる。
 
「エヴァさん!」
 
「何だ? もう良いのか?」
 
「いいえ、その逆です。もう少し時間を戴いてよろしいですか?」
 
「ふん、好きにしろ」
 
 言い捨て、茶々丸(姉)の持ってきた本を読み始めた。
 
「……何か、ゆえちゃんカッコイイ」
 
 一連の夕映の態度を見て目を輝かせるまき絵だが、夕映はさして気にする様子もなく、
 
「いいえ、ネギ先生に比べればまだまだです。
 
 ──先生なら口先三寸でエヴァさんの協力を取り付けているです」
 
 ともあれ、今は亜子のアーティファクトだ。
 
 亜子は夕映の教えに従い、アーティファクトを召還してみる。
 
「あ、アデアット!」
 
 閃光と共に彼女が変じた姿は何故か……、
 
「み、ミニスカねこ耳ナース?」
 
「な、なんやねんの? コレ──!?」
 
 その衣装に取り乱す亜子と夕映達。
 
「えーと……、それは亜子の趣味? それともネギ先生の趣味?」
 
「う、ウチ、そんな趣味ないて!?」
 
「ちなみにネギ先生は、どちらかというとナースよりはメイドフェチですぅ」
 
 何時の間にネギの好みを読んだのか? のどかの発言に数人がチェックを入れる中、どうやら亜子の能力は魔力回復系であるらしいという事が判明する。
 
「……なるほど、それはまた希少な能力ですね」
 
「──先生絶対、喜ぶだろうね♪」
 
 裕奈の発言に、亜子が真剣な表情で詰め寄り、
 
「ホンマ!? ホンマにウチ、先生の役に立てる!?」
 
 その質問に答えたのは夕映だ。
 
「えぇ。元々先生の魔力は人並み外れて大きいのですが、強力な魔法となると消費魔力も大きく、更にそれを連続で使用したりする為、魔力切れが戦闘でのネックでしたが、亜子さんが居てくれれば、その点も解消出来るです」
 
 それを聞いた亜子は満面の笑みを浮かべて喜び、
 
「うん! ウチ頑張る!!」
 
 拳を握り、決意新たにネギの力となること誓う亜子。
 
 それを確認したエヴァンジェリンは読んでいた本を閉じ、
 
「そろそろ準備は良いようだな」
 
「はい、お待たせしたです」
 
 エヴァンジェリンが合図すると、それまで地面に伏せ待っていたケルベロスが四本足で立ち上がった。
 
 対する少女達も各々の武器を手に構える。
 
「始めろ」
 
 エヴァンジェリンの掛け声と同時に動いたのは夕映だ。
 
 始めは少し躊躇いながらも、恥ずかしがっている場合ではないと悟り、半ば自棄になりつつ絶叫するように始動キーを叫ぶ。
 
「り……、リリカル・マジカル!!」
 
 始動キーを決めたのは、言うまでもなくネギだ。
 
 魔力を通す為の言霊としては文句無しの威力を誇る上に、詠唱も短いとあっては、断りきる事が出来なかった。
 
「──我が請うは、城砦の護り。若き騎士達に、聖銀の盾を! “守護の力”」
 
 裕奈、まき絵、アキラの身体が光りに包まれ、彼女達の防御力が大幅に向上する。
 
「だぁぁぁ!!」
 
 魔法銃“唱える者(キャスター)”を抜き放ち、気合いと共にケルベロスに向けて引き金を連続で引く裕奈。
 
 次々と着弾する光弾。
 
 しかしケルベロスは、その巨躯に似合わぬ素早い動きで裕奈の射撃する光弾を尽く回避してみせると信じられない程の身軽さで跳び上がり、上空から夕映達に襲いかかった。
 
 しかし、そんなケルベロスの動きを上回る速度で動き、更には魔獣よりも高く跳び上がった者が居た。
 
「ゴメン……。少し、おとなしくしていて」
 
 心底、申し訳なさそうな声で謝罪するのは大河内・アキラだ。
 
 彼女はケルベロスの首の一つを抱え込むと、そのまま強引に地面に叩き付けた。
 
 その動きとパワーに、楓や古菲、刹那といった武闘派の連中はしきりに感心する。
 
 地響きを伴って地面に叩き落とされたケルベロスをすかさず捕縛するのはまき絵のリボンだ。
 
 まるで生きているかのような動きで魔獣を絡め取ったリボンは、タダの布とは思えない強度と伸縮性でケルベロスの動きを封じ込める。
 
「ゆえ吉!!」
 
 それを勝機と見た裕奈が夕映に声を掛けると同時、夕映は頷く時間すら惜しいと詠唱に入った。
 
「リリカル・マジカル! ……我が請うは、捕縛の檻! 流星の射手の弾丸に、封印の力を!! “封印の弾丸”!」
 
 夕映の杖から裕奈の魔法銃に向けて光りの塊が飛ぶ。
 
 光を受け止めた魔法銃は封印の力を得る。
 
「喰らえ!! “シーリング・シュートッ”!!」
 
 裕奈の放った封印の為の光弾がケルベロスに着弾しようとする瞬間、魔獣が咆吼を挙げた。
 
 そして、ただそれだけで魔獣の眼前にまで迫っていた光弾は消滅し、その身体を捕らえていた帯も引き千切られる。
 
「嘘ッ!?」
 
 驚愕に立ち尽くす裕奈達。
 
 そんな彼女達に向けて、ケルベロスの三首が牙を剥く。
 
 大きく大気を吸い込んだケルベロスの口から放たれるのは劫火。
 
「クッ!? ──大気の精よ! 息づく風よ! 疾く来たりて我が敵より我を守れ! “風陣結界”!!」
 
 辛うじて間に合った夕映の展開した風の結界が、炎の直撃から少女達を守るも完全には防ぎきれず、結界が砕かれ少女達は余波で吹き飛ばされた。
 
「うッ!? ……そ、そんな、ケルベロスが火を吐くなんて、聞いたことないですぅ……」
 
「ひ、ひぐ……、痛いよぅ」
 
 初めて体験する痛みに、少女達の心が折れそうになる。
 
 それは最も近くで火炎による結界破砕の直撃を喰らった裕奈も同様だ。
 
 全身を諫なむ激痛。
 
 裂傷なのか火傷なのかさえ判断出来ないような純粋な痛みに涙が流れ、父に縋り付きそうになる。
 
「ちょ、ちょっと!? もう止めさせてよエヴァちゃん! このままじゃ皆、死んじゃうって!!」
 
 凄惨な戦況に、柿崎と釘宮が試験を止めさせようとエヴァンジェリンに抗議するが、そのような抗議を受け入れるような者ではない。
 
 涙で滲む裕奈の視界。
 
 空に浮かぶ雲が見慣れた人影に見えてきた。
 
 ……アレは。
 
 それは最愛の父親か? 己の師か? ──否、どちらでもない。
 
 その人影は、彼女が所属するバスケ部顧問の教師の幻影。
 
 白髪に白い髭を蓄えたメタボリックな初老の男性教諭はいつもの笑っているような表情で彼女に告げる。
 
“……諦めたら、そこで試合終了だよ”
 
「安西先生ッ!!」
 
 呼び名と共に上体を起こす裕奈。
 
 ……誰だよ!? 安西先生!!
 
 その場に居る全ての者達の心がシンクロした。
 
 ともあれ、何とか立ち上がった裕奈だが、既に夕映の施した防御力向上の魔法も切れており、次にケルベロスの攻撃を貰ったりすれば怪我では済まない。
 
 しかし、それでも裕奈はケルベロスに立ち向かう。
 
 そしてそれに続くように立ち上がるのは夕映とのどかだ。
 
 ──彼女達の心もまだ折れてはいない。
 
「……嘘。何で立てるのよ?」    
 
 呆然と呟く柿崎。教え諭すように告げるのはエヴァンジェリンだ。
 
 彼女はどこか誇らしげに、
 
「アイツ等の師匠を誰だと思っている? 柿崎・美砂。
 
 あのぼーやはな、一度たりともあの小娘共に諦めたり勝負を投げ出したりするような真似は見せていない」
 
 口元に笑みを張り付かせ、
 
「スプリングフィールドの眷属をナメるなよ? たとえ敗れようとも、敵に対し心を折るような腑抜けは一人として存在するものか」
 
 エヴァンジェリンの言葉に、柿崎は思わず生唾を飲み込む。
 
 一体、彼女達はネギのどんな戦いを見てきて、どのような教えを受けてきたのか?
 
 ……だが、哀しいかな、心は折れずとも体力が付いてこない。
 
 ケルベロスの攻撃を、無様に転げながらも何とか回避しているというのが現状だ。
 
 そして、遂にのどかと裕奈がケルベロスに掴まってしまう。
 
「クッ!?」
 
 杖を構え呪文の詠唱を開始。
 
「リリカル・マジカル!! ──我が力よ! 魔のもとに凝縮し敵と共に弾けよ!! “爆魔の閃光”!」
 
 現時点で夕映が使える一番破壊力の高い砲撃魔法。
 
 しかし、その砲撃魔法も、ケルベロスの放つ火炎放射のようなブレスに相殺されてしまい、余波で夕映の身体が吹っ飛ばされてしまう。
 
「夕映ちゃん!?」
 
 明日菜達が救援に飛び出そうとするが、彼女達の喉元に氷の刃が突き立てられる。
 
「黙って見ていろ小娘共。──邪魔をする事は、この私が許さん」
 
「ちょ、ちょっと!? そんな事言ってる場合じゃないでしょ!?」
 
 今にもケルベロスの前足で踏みつけられた裕奈とのどかは魔獣の自重により圧死寸前といった様相だ。
 
 対するエヴァンジェリンは余裕とも言える表情で、抗議の声を挙げた釘宮を空中から見下ろし、
 
「別に、貴様等まで助けに入る事を許可せんわけじゃない。……但し、救助に向かうならば、条件を満たすまで貴様等も棄権は許されんと思え」
 
「そんな!?」
 
 何の力も持たない一般人の彼女達で、あの魔獣に勝てる術があるとは到底思えない。
 
 ……何か、良い方法は無いか? と周囲を見渡す面々。
 
 強力な助っ人か、せめて武器になりそうなものを探し慌てふためく彼女達。
 
 そんな明日菜の視界に入ったのは、同じように武器を探す美空の姿だ。
 
 彼女は縋り付くように彼女の肩を鷲掴み、
 
「美空ちゃん魔法使いなんでしょ!? お願い、助っ人に行って!」
 
「無茶言うなぁ──!? 私ってば、タダの見習いよ!? 行った所であの犬の餌増えるだけだって!」
 
 悲鳴に近い叫びを挙げる美空。
 
 だが明日菜も引くことなく、
 
「無茶を承知で頼んでんのよ!? ──いいから」
 
 美空の背後に回り込み、
 
「行って来なさい!!」
 
 無理矢理に蹴り飛ばした。
 
「ぎゃ──スッ!?」
 
 明日菜の蹴りをカタパルトとして加速した美空は、勢いそのままで……、否、己のアーティファクトを召還し、更に加速した跳び蹴りをケルベロスにお見舞いした。
 
 十二分に加速し、運動エネルギーの付随した蹴りを喰らったケルベロスはバランスを崩す。
 
 その隙にいつの間にか恐怖から立ち直り、魔獣に接近していたアキラが右の前足を強引に持ち上げ、
 
「二人を……、放して!」
 
 力ずくで転倒させる。
 
「うわぁぁぁぁ!!」
 
 恐怖を無理矢理に押さえ込み、目尻に涙を浮かべたままのまき絵が何処から取り出したのか? 三つのフープを投擲。
 
 それらは狙い違わずケルベロス達の鼻面に収まり、顎を封印した。
 
「だぁ──ッ!!」
 
 最後に跳躍するのは亜子だ。
 
 彼女は空中で反転すると、
 
 ──オーバーヘッド・キック!
 
 魔犬の顔を蹴り飛ばす。
 
 悶える魔獣を見つつ、エヴァンジェリンは口元に笑みを浮かべ、
 
「ほう、……恐怖を乗り越えた。──いや、別に乗り越えたわけではないか」
 
「何でもいいわよ! 皆、頑張って!!」
 
 こうなってくると、黙っていられないのがチア部の面々だ。
 
 彼女達はどこからかボンボンを取り出すと、それを振って応援を開始する。
 
「いける! いける! もうちょっとだよ! 頑張って!!」
 
「にゃぁー! がんばってぇ!!」
 
 声援を受け、夕映達がゆっくりではあるが立ち上がる。
 
 それを見た釘宮は、最終兵器を導入。
 
「よっしゃぁ──!! 歌え美砂!」
 
 釘宮の要請を受け、コーラス部にも所属する柿崎がアカペラで歌い始めた。
 
 この場面で彼女が選んだ歌は──、
 
「──今、貴●の声が聞こえる。「──ここにおいでと」寂しさに、負けそうな私に……。
 
 今、●方の姿が見える。──歩いてくる。目を閉じて、待っている私に……。
 
 昨日まで、涙で曇っていた●は、今──! 憶えていますか? 目と目とがあった時を! 憶えていますか? ●と手とが触れ合った時、それは初めての愛の旅立ちでした……。
 
 ● love song♪」
 
 ……そ、それは聞く者全ての戦意を向上させるという伝説の大・虐・殺・Song!
 
 驚愕に目を見開くエヴァンジェリン。
 
 そして柿崎の歌う歌に呼応するように、少女達の瞳に闘志は宿っていく。
 
「行くです! リリカル・マジカル!! ──光の精霊53柱! 集い来たりて敵を討て!! “魔法の射手・連弾・光の53矢”!!」
 
「魔力の続く限り、ブチ込んでやるわよ!!」
 
 総計100を越える光弾がケルベロスに撃ち込まれた。
 
「や、やったの……?」
 
 恐る恐る問い掛ける裕奈。
 
 対する夕映は分からないと首を振り、
 
「分かりません。……ですが、今の内に魔力の回復を」
 
「その必要は無い」
 
 彼女達を制止したのはエヴァンジェリンだ。
 
 粉塵が収まり、姿を現したケルベロスの姿は無傷。
 
「……これ以上、戦っても、私達に勝ちは無いと言うのですか?」
 
 それを聞いたエヴァンジェリンは口元に笑みを浮かべながら指を鳴らす。
 
 すると、それだけでケルベロスはバラバラになって崩れた。
 
「……へ?」
 
「な、何? いきなり?」
 
 驚愕に目を見開く少女達の眼前で、エヴァンジェリンがからかうように、
 
「なに、ただの人形だ。──気にするな」
 
 言い捨て、彼女達を空中から見下ろし、
 
「──合格だ。認めてやるよ、小娘共」
 
 一瞬、言われた事が理解出来なかった少女達だが、その言葉の意味が理解出来た瞬間、
 
「わぁ──ッ!!」
 
 皆、一斉に飛び上がって喜びを表現した。
 
 それを見ていたエヴァンジェリンは疲れたような溜息を吐き出し、
 
「しかし、私は最初に、ケルベロスに一撃入れたら合格だと言ったはずだがな。
 
 ……貴様等、本気でこの人形に勝つつもりだったのか?」
 
 言われた言葉に少女達の動きが停まる。
 
「そ、……そうでしたか?」
 
 ぎこちない動きで振り向く夕映。
 
 対するエヴァンジェリンは呆れたような眼差しで、
 
「ふん。……目的と手段が反転する所なぞ、あのぼーやに似てきたな綾瀬・夕映」
 
「い、言わないで下さい……」
 
 本気で落ち込み始める夕映に対し、エヴァンジェリンは笑みを浮かべたが、すぐにそれを引っ込めると、
 
「付いて来い、小娘共。──貴様等に武器をくれてやる」
 
 告げ、城の中へと向かうエヴァンジェリンを少女達が追う。
 
 長い階段を登り、彼女が辿り着いた場所は頑強そうな扉の部屋だ。
 
 エヴァンジェリンが懐から取り出した鍵を使い、扉を押し開ける。
 
 石造りの頑丈そうな部屋に納められているのは武器だ。
 
 剣、槍、杖、鎧、盾……、様々な種類の武器、防具が陳列している。
 
「好きな物を持って行け。──餞別だ」
 
「え? 良いの?」
 
「エヴァちゃん、太っ腹ぁ♪」
 
 武器庫に一斉に雪崩れ込む少女達。
 
「ふん」
 
 立ち並ぶ武器を手に、少女達はあーでもない、こーでもないと武器を選別する。
 
 それを横目に眺めつつ、エヴァンジェリンは小さく溜息を吐き出し、
 
「……忘れていたよ。こいつらもあのぼーやの生徒だっていう事をな」
 
 小さく呟くように零すと、彼女の傍らにいたチャチャゼロが、
 
「ケケケ、面白イ事ニナリソウジャネェカ」
 
「あぁ……、だが、どちらに転んだとしてもぼーやの立場が悪化する事はいなめん」
 
「ダケド御主人ノ御主人ハ、ムシロ、ソレヲ望ンデル節ガアルゼ」
 
 その言葉にエヴァンジェリンは再度溜息を吐き出し、
 
「……近年稀に見る正真正銘のバカというだけだ」
 
 最後に見たバカは、誰でもないネギの父親であるナギその人だ。
 
「……親子揃って、バカな所まで似すぎだ」
 
 そう言い残し、その場を後にした。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 自分達の武器をチョイスし終えた生徒達はテラスに戻って作戦会議を開始する。
 
「基本は、エヴァがネギから聞いていた作戦で良いと思うんだけど、相手はネギだからね。
 
 ──油断しちゃ駄目。この作戦自体が罠の可能性も十二分にあり得るわ」
 
「確かにな。……あのぼーやの事だ。その程度の裏切り、鼻歌混じりにやってのけるだろうよ」
 
 酷い言われようであるが、ネギが超側で全力を尽くすと言っている以上、その位の事は平然とやってのけるだろう。
 
「それも有りますが、何よりも怖いのが、ネギ先生自身が他の魔法先生達と直接対決する事です。
 
 そうなると最早、誤魔化しようがなくなってしまう」
 
 刹那の弁に一同は揃って頷き、
 
「最優先事項は、ネギ先生の捕獲。次点で超さんの計画阻止ということですか?」
 
「おいおい、順番狂ってねぇか? あの先生の事だ。お前等の考えを見越して、自分が囮をやることも充分に考えられるぜ」
 
 という千雨の意見も一理あると、全員が再度揃って頷く。
 
「じゃあ、仕方ないけど役割を分担しましょう」
 
 ──本来なら、戦力の分散は控えたい所だが、こればかりは致し方ない。
 
「ネギの言った通り、6体の巨大生体兵器とかいうやつは、ネカネさん、エヴァ、ヘルマン、ユエ、ハルナ、ユーナの6人に任せるとして」
 
 アーニャはそう言うが、実はそれがネギの罠だ。
 
 強制認識魔法を阻害しようとするなら、妨害する生体兵器は一体で充分。
 
 敢えて、六体全ての相手をさせる事でもっとも厄介な4人を多少なりとも消耗させる事が出来る。
 
 言ってみれば、この場合、夕映と裕奈はついでに過ぎない。 
 
 その事に気付かないまま、アーニャは次にネギの相手をする者を選出に入る。
 
「ネギの魔法自体も厄介なんだけど、それよりもキツイのが武道会で見せたあの回避術よ」
 
「……確かに、拙者は直接相対してはおらぬが、あれは回避不能な攻撃でさえも回避していたでござる」
 
「私はすぐに負けてしまって詳しい事は覚えていませんが、ネギ先生の移動術は、アーニャさん達の使う縮地という技よりも速かったように思えましたわ。
 
 ──何というか、移動にタイムラグが無かったような」
 
 不確かな情報故か、自信なさ気に告げる高音。
 
「それに関係あるかどうか? は分からねえけどな。……ちょっとコレを見てくれ」
 
 言って、千雨が自身のPDAを皆に見えるようにテーブル上に置く。
 
 そこに映っているのは、まほら武道会での映像だ。
 
「これ見て気付いたんだけどな……。先生が異常な避け方したり、とんでもない速さで距離詰めたりしてる時って、必ず懐に手ぇ突っ込んでんだよ。
 
 これって、何か関係があんのか?」
 
「……そう言えば、決勝戦でそこから大きめの懐中時計みたいな物を取り出して朝倉さんに渡してましたぁ」
 
 のどかの言葉で真っ先に連想するのは、航時機“カシオペア”だ。
 
 ……つまり、原理は分からないが、
 
「──タイムマシンを戦闘に利用していた?」
 
「だとすれば、攻撃を受けた瞬間に別時間に逃れる事で絶対回避を行い、超高速で同じ時間に連続時間跳躍を行う事で擬似的な時間停止すら可能にしている? といった所かしら?」
 
 それまでの情報からネカネが素早く分析する。
 
 無論、口で言う程簡単に出来るものではないが、ネギがそのような技術を有している以上、彼を倒す事は、ほぼ不可能と言えるだろう。……ある一つの方法を除いては。
 
「……同じ航時機でもない限り、ネギに勝つことは出来ないって事?」
 
「いいえ、一人居るわ。機械の力を借りずに生身で疑似時間停止を行える人が」
 
 ネカネの視線の先に居るのはアーニャだ。
 
「……出来る? アーニャ」
 
 ネカネの問い掛けに対し、彼女は好戦的な笑みを浮かべて己の唇を舐め、
 
「やってやろうじゃない!」
 
 言うほど、優しいものではない。
 
 アーニャの使う疑似時間停止。G−Hi・Topはコンマ数秒程度ならまだしも、長時間、更には連続しようなどしようものなら、確実に彼女の命を削る。
 
 それを承知で敢えて挑もうとするアーニャ。そこから彼女の覚悟の度合いというものが知れる。
 
「でも私が出来るのは、多分、ネギのカシオペアを破壊するまで……。そこから先は別の人に頼む事になると思うわ」
 
 本音を言うと、それすら可能かどうかも怪しい所だが、決して弱音は見せない。
 
 そんなアーニャの言葉に、役割の決まっていない者達は顔を見渡し、候補として数人の名前を挙げる。
 
 そして、明日菜、古菲、高音、楓、刹那の5人の名前が挙がるが、その内、楓には抑えていてもらわなければならない人物がいる。
 
「……ふむ、真名でござるかな?」
 
「あぁ、ぼーやからの情報だと、龍宮・真名が超・鈴音側に付いたらしい。
 
 流石に、アイツの相手が務まるのは貴様か、刹那くらいのものだ。他の小娘共では厳しかろう?」
 
 更にネギからの情報によると、超は空中戦力も有しているらしい。
 
 空中戦の可能な刹那と高音には、そちらの方へ回ってもらわねばならない。
 
「とはいえ、拙者でも真名相手に勝てるかどうか? は微妙な所でござるが……。
 
 全力は尽くさせてもらうでござるよ」
 
 そうなってくると、ネギとの決着を着けられるのは古菲か明日菜の二人。
 
 現状での強さでは古菲の方が上であるが、
 
「神楽坂・明日菜、貴様がぼーやを倒せ」
 
 エヴァンジェリンが選出したのは、明日菜の方だった。
 
「へ? な、何で? 私より、くーふぇの方が強いわよ?」
 
 確かに、明日菜対古菲ならば、古菲に軍配が挙がる。
 
 だが、戦う相手はネギだ。どちらも対ネギ戦の勝率は0であるが、どちらの方が厄介か? と問われると、純正魔法使いであるネギの天敵は、間違いなく魔法完全無効化能力を有する明日菜だろう。
 
 ……とはいえ、既に明日菜対策を万全にしているネギ。それに打ち勝つ為の方法は、
 
「──そのくらい自分で考えろ」
 
「ちょ!? 何よそれ!」
 
 叫き始めた明日菜に対し、エヴァンジェリンは面倒臭げに溜息を吐き出し、
 
「まあ、貴様一人に任せておくと、どれだけあっても時間が足りないからな。
 
 ヒントだけ教えてやる」
 
 まず、本来なら魔法の通用しない明日菜がネギの攻撃でダメージを受ける時、それは砲撃を直接撃ち込むのではなく、彼女の足下に砲撃を撃ち込み、その余波でダメージを与えるという方法をとっている。
 
 勿論、それだけではなく、ネギの持つ魔法の中にある“星屑の乱舞”という魔法は、周囲の瓦礫や岩などを操り、敵にぶつけてダメージを与えるものだ。
 
 これならば、魔法完全無効化能力をもってしても、防ぐ事はかなわない。
 
「つまり、あのぼーやは、魔法そのものをぶつける事が出来なくても、余波や効果を効率的にぶつける事で貴様を打倒してきたのだ」
 
 現に、エヴァンジェリンによって明日菜は氷塊の中に閉じ込められた事もある。
 
「えーと、つまり?」
 
 未だ理解出来ていない明日菜に、業を煮やしたのか? エヴァンジェリンは食ってかかるように、
 
「己の能力を過信して受けに回るな! 躱わすようにしろ! それで多少は、マトモな戦闘になる」
 
 それを聞いてようやく理解したのか、しきりに感心してみせる明日菜。
 
 更に、のどかにはネギと超一味の場所を捜索してもらう。
 
 彼女のアーティファクトを効率よく利用すれば、ある程度の広範囲からでも特定人物を捜し当てる事は出来るはずだ。
 
 無論、彼女一人では負担が多すぎるので、それには相坂・さよにも手伝ってもらう。
 
 こういう時には、彼女の隠密性と飛行能力は役に立つ。
 
「とはいえ、流石に二人じゃキツイかも知れねぇなぁ……」
 
 と、カモは愚痴るが、これ以上戦力を削くのは得策ではない。
 
 ともあれ、その他の者達は夕映と裕奈の護衛に回る事になり、これで対超一味との布陣が決定した。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 最終日、午後五時過ぎからは、世界樹を中心とした直径3q圏内は、映画撮影の為様々なアトラクションが催されると触れこんでおく。
 
 本来ならば、立入禁止にでもしたい所であるが、流石にそれだけの広範囲を立入禁止には出来ず、次善の策として、これで多少の無茶もCGや特撮として誤魔化す事が出来るだろう。
 
 ネット上での情報操作を終えた千雨は一息を吐き、
 
「しかし、こんなのが電子精霊ね……」
 
 彼女の周囲に浮く、7匹のネズミ型電子精霊を見て疲れたような溜息を吐き出す。
 
 その可愛らしい容姿からは到底、想像も出来ないが、彼らの能力は確かに凄まじいものがあった。
 
 ……こいつらさえいれば、アメリカのペンタゴンやCIAとかも落とせるんじゃねえか?
 
 無論、そういった重要施設のコンピューターは、他の魔法使いの電子精霊が守護している為、一筋縄ではいったりはしないが……。
 
 既にオプションソフトのインストールも終了。準備は万全だ。
 
 とはいえ、今の時刻はまだ昼前。今から気負っていては、とてもじゃないが体力、気力ともに保たない。
 
 ……取り敢えず、昼飯でも食ってくるか。
 
 その事を数人に分身して広告を作成しているハルナに伝たえ、ベース基地としている図書館を出て近場の牛丼屋に入る。
 
 適当に注文を済ませ、食事が届くのを待っていると来店した客が、彼女の隣の席に座り、メニューも見ずに注文した。
 
「無駄だと知りつつ言ってみる。──ハーブチーズ牛丼、特盛り!」
 
「申し訳ございませんお客様、現在、ハーブチーズ牛丼は取り扱っておりません」
 
 それを聞いた客は大げさによろめき、
 
「絶望した! ハーブチーズの無いすき家に絶望した!!」
 
 ……煩せぇ客だな。──大体、それは二度ネタだろうが。
 
 と思い、お冷やに口を付けつつ横目で確認する。
 
 すると、そこに居たのは、彼女の担任である、ネギ・スプリングフィールドだ。
 
「こんな所で何してやがんだ!? アンタ!!」
 
 カウンター席から立ち上がり、隣席のネギに怒鳴り散らす千雨。
 
 対するネギは平然とした態度で、
 
「飯食いに来たに決まってんだろ?」
 
 言って、店員に向き直り、
 
「じゃあ、ワサビ山かけ牛丼、特盛りワサビ抜きで」
 
「ワサビが駄目って……、ガキか? アンタ」
 
「放っとけや」
 
 5分もしない内に注文が届き、二人は同時に食べ始める。
 
「……で? 本気なんですか? 先生。話に聞くと、色々ヤバそうなんですが」
 
「おぉ? 何だ? 心配してくれんのか?」
 
 少し、嬉しそうに問うネギに対し、千雨は丼を持ち上げ、ご飯を掻き込む事で表情を隠しつつ、
 
「別に……、ただ私を巻き込んだ責任をとって貰えるのか? 気になっただけです」
 
「……責任って」
 
 言って、少し考え、
 
「──嫁にでも貰えばいいのか?」
 
 途端、千雨は口の中の物を吹いた。
 
 幸い、丼のお陰で拡散せずに済んだが、千雨自身の受けたダメージは計り知れない。
 
 お冷やを口にし、むせ返る肺を何とか抑えつつ、
 
「だ、誰もそんな事、言ってねぇ!?」
 
 反論するが、ネギは一向に取り合わず、
 
「ははは、図星刺されたからって、照れるな照れるな」
 
「誰も照れてねぇよ!」
 
 一足早く食べ終わったネギはお冷やを口にしつつ、
 
「まあ、ぶっちゃけた話、茶々丸に俺の電子精霊渡したからな、100%お前に勝ち目はねぇよ」
 
 それを聞いた千雨は食べる手を止め、
 
「大した自信ですね、ネギ先生」
 
 引きつった笑みをネギに向ける。対するネギは自信に満ち溢れた表情で、
 
「当たり前だっつーの。昨日、今日、電子精霊に触れたばかりのお前や、電子精霊の本質を理解してない魔法使い如きに、俺の電子精霊が負けるかよ」
 
「……電子精霊の本質?」
 
 ……それは、ネット世界での主のサポートではないのか? という千雨の問い掛けに対し、ネギは余裕の笑みを浮かべ、
 
「その程度の認識しかないようじゃ、俺には一生掛かっても勝てねえよ」
 
 告げ、ポケットから小銭を取り出すと、カウンターに叩き付けるように置いて店を出ていった。
 
 それを呆然と見送った千雨だが、すぐに我に返り、
 
「電子精霊の本質?」
 
 その謎を解き明かそうと頭を働かせてみるが、どうもピンとこない。
 
 ……しゃーねぇ、一旦帰るか。
 
 そう結論し、席を立つ千雨。だが、そこで初めてネギに逃げられた事に気付き、
 
「って、バカか! 私は!?」
 
 頭を抱え、自己批判した後、深く項垂れながら帰路に着いた。
 
 
 
  
 
 
 
 
 
 
 ──同時刻、超の元に取材に向かおうとしていた朝倉だったが、何の因果か? 明日菜と鉢合わせになってしまった。
 
「ちょ、ちょっと朝倉! あんた昨日何で司会なんてしてたのよ!?」
 
「へ? いやー、色々と見返りの情報貰う変わりにって、頼まれてさー」
 
 何の悪気もなく、あっけらかんと告げる朝倉。
 
 対する明日菜はそんな彼女の襟首を掴むと、
 
「……丁度良いわ。今は一人でも人手が欲しかったのよ。
 
 ──アンタも手伝って!」
 
「へ? いや、今日取材出来ないと、昨日頑張った意味無くなるんだけど?」
 
「うっさいわね! 世界が変わるかどうかの瀬戸際なのよ! オマケにネギの今後も関わってるし、下手すりゃ私達も魔法世界のオコジョ収容所に強制送還なのよ!」
 
「あ!? ちょっとちょっと!」
 
「あははー、強引やなぁアスナ」
 
 強引に朝倉を引きづって無理矢理仲間に引き込み、基地となっている図書館へと連れ込む。
 
「……というわけで、アンタの知ってる情報キリキリ吐いて貰いましょうか?」
 
「へ? 何コレ? もしかして私、尋問されてる?」
 
「お望みなら、拷問してあげてもいいけど?」
 
 据わった目つきで宣告する明日菜。……実際、エヴァンジェリンの城になら、その手の道具にも事欠かなそうだ。
 
 身の危険を察した朝倉は態度を一転させて、深々と頭を下げると、
 
「なんなりとお聞き下さい」
 
 従順な姿勢をとってみせた。
 
 その後、朝倉から聞き出した情報はカモの得ていてものと大差なく少々気落ちする明日菜だが、カモとしては朝倉の参戦は有り難い。
 
 これで計画の穴であった索敵要員の補充が出来た。
 
「よっしゃぁ──! いっちょ、朝倉の姉さんもパクってみっか!」
 
「へ? 仮契約?」
 
 言われ、暫く考えた後、
 
「まぁ、高性能アイテムが手に入るのは嬉しいけど、誰とすんの?」
 
 候補は、アーニャ、ネカネ、高音、木乃香、エヴァンジェリン、夕映、美空、ココネ。
 
 この面子の中では、まずエヴァンジェリンとネカネは却下。
 
 エヴァンジェリンは自分の気に入った者としか仮契約しないであろうし、ネカネはネギ以外に唇を許すつもりがない。
 
 ちなみに、木乃香も却下。
 
 ……何だか、桜咲の目が怖いし。
 
 残った面子を見渡し、
 
 ……アーニャさんと高音さんは人使い荒そうだし、ゆえっちは根が真面目だからなぁ……、一番気楽そうなのは、
 
「じゃあ、美空よろしく♪」
 
「へ? 私?」
 
 というわけで、朝倉の仮契約が決定。
 
 一瞬、ココネが寂しそうな表情をしたが、それを見抜いた美空が頭を撫でてやると、それも治まった。
 
「んじゃー、早速」
 
 カモの描いた魔法陣の中で口づけを交わし、
 
 ──仮契約!!
 
 これで、メンバーは揃った。
 
 後は、始まりを待つばかりである。
 
  
 
 
 
 
 
 
 
 
 そして時刻は夕刻。
 
 ネギの言動に対して迷いはあるものの、先行して電子世界に潜んでいた千雨の元に警報が響き渡った。
 
「おいでなすったか!?」
 
 ここで千雨が学園結界を守り続けている限りは、巨大生体兵器の出番は無い。
 
 逆に言えば、ここさえ守り通せれば、超の計画を阻止する事が出来るという事だ。
 
「防壁展開! 同時に逆探始めとけ、守ってばかりじゃ、いずれ抜かれるぞ!」
 
「了解です、ちう様」
 
 だが、受け止めた防壁が、わずか一撃で砕かれる。
 
「……何だ? このプログラム?」
 
 不審に思い、電子精霊に解析を命令する。
 
 すると、答えはすぐに返ってきた。
 
「解析終了っす、ちう様」
 
 言って、千雨の元へデータを転送する。
 
 そのプログラムは、
 
「……BASIC言語だと!?」
 
 ……おいおい、マジかよ?
 
 流石に自分の組んだプログラムでは、そんな石器時代の言語で作られたプログラムにまでは対応していない。
 
 そう思い、ゲンナリする千雨の元へ茶々丸から通信が入る。
 
『ネギ先生曰く、初代冥王は、BASICを用いてクローン人間を作成し、世界中のコンピューターを乗っ取ったらしいです』
 
「何の話だそりゃ!?」
 
 ちなみに、二代目は言わずと知れた管理局の白い人で、ネギは三代目を目指しているらしい。
 
 ……つーか、こんなのが、アイツの言ってた電子精霊の本質かよ?
 
 プログラムの根幹が分かれば、対処のしようがある。
 
 現に先程のプログラムに対する防壁用プログラムは既に完成している。
 
『では、そろそろ本命と参ります。……よろしいですか? 千雨さん』
 
「上等……、来なよ。茶々丸さん」
 
 モニター越しに睨み合う二人。茶々丸が頷き、勝負が始まる。
 
『では……、転送いたします』
 
 茶々丸の言葉と共に、千雨の眼前の空間に現れたのは一人の少女だ。
 
 少女は目を開けると、意地の悪そうな笑みを浮かべ、
 
「にひひ、ウィル子、参上なのですよー!」
 
 八〇年代のアイドルのような清純という言葉を少々勘違いしたような衣装を身につけた少女はそう言って千雨に視線を向ける。
 
「おや? 貴女は長谷川・千雨さんですねー。
 
 こうやってお会いするのは初めましてですね。よろしくですよー」
 
 そう告げるウィル子と名乗った少女に不審気な視線を向ける千雨。
 
 彼女の言い方ではまるで、
 
「……私の事を知ってんのか?」
 
 という千雨の質問に対し、ウィル子は胸を張りつつ、
 
「そりゃ、当然なのです。マスターの命令で“ちうのホームページ”を色々と弄くってました!」
 
 その発言で、おおよその見当が付いたが、取り敢えず、尋ねてみる。
 
「ほ、ほう……、で? アンタのマスターってのは一体誰だ?」
 
「勿論、ネギ・スプリングフィールド様がウィル子のマスターですよー!」
 
 堂々と告げるウィル子に、千雨はコメカミ辺りの血管が切れそうになる。
 
 それを悟ったのか? 割ってはいるように、茶々丸からの通信が届く。
 
『彼女の正式名称は、Will.CO21。ネギ先生が作り出した電子精霊です』
 
「そうなのです。でも電子精霊と言っても、そんじょそこらの凡骨と一緒にしないでほしいのです。
 
 何故ならば、ウィル子は神の雛形として開発されたのですから!」
 
 ……神の雛形?
 
 だが、千雨の思考は次のウィル子の言葉によって中断させられる。
 
「では、超愉快型極悪感染ウイルス、ウィル子征きます!!」
 
 ──ウイルス。
 
 千雨のようなハッカーや、プログラマー達が最も敏感に反応する言葉。
 
「ギャーッ!? こっち来んな、馬鹿野郎!!」
 
 こうして、ネット上での鬼ごっこが、世界の命運を賭けた前哨戦となった。 
 
 
 
  
 
 
 
 
 
 
 その頃、湖から多数の田中型ロボットや、多脚戦車が現れ、世界樹周辺の魔力溜まりを目指していた。
 
「……何? アレ」
 
「ん? ほら、映画の撮影あるって告知してたじゃん。それじゃないの?」
 
「ってー事は何? 私達も、エキストラで出てるの?」
 
「マジ? カメラ何処よ?」
 
 そんな声が聞こえる中、学園側に所属する魔法先生達の間では凄まじい量の情報が交錯していた。
 
「超・鈴音が動いた? 目的は!?」
 
「分かりません。ですが、ロボット軍団は世界樹周辺に集まっています!」
 
「クッ!? 行動を抑えようとしても、人目が多過ぎる!」
 
「いえ、……何者かは知りませんが、現在世界樹周辺で映画の撮影中との告知が出ています。
 
 上手く便乗すれば──、あっ!?」
 
「……どうした?」
 
 焦った声で問い掛ける明石教授に、オペレーターを務める夏目・萌が何かに気付き報告する。
 
「迎撃入りました! ……これは、麻帆良学園女子中等部、3年A組出席番号2番明石・裕奈……、って、明石教授の娘さんとそのクラスメイト達です!」
 
「なにぃ──!?」
 
 思わず、モニターに食いつく明石教授。
 
 そこでは魔法銃片手に、ロボ軍団を攻撃する裕奈と、巨大なチャクラムを投げて敵を切り裂くまき絵。そして長槍で敵を屠るアキラに、脚甲を装備した脚で田中を蹴り飛ばす亜子の姿があった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
−世界樹前広場−
 
「ゆーな、本命なんだからもっと抑えなきゃ!?」 
 
「超よゆーだって!」
 
 言って、腰に下げた魔法薬の満たされた小瓶を引き抜いて敵軍に向かって投げつける。
 
 敵陣の真ん中に落下したソレは、数体の田中を巻き込んで氷結。その成果に裕奈はガッツポーズを取る。
 
 巨大チャクラムを操るまき絵は、それを投げながら、
 
 ……うん、大体フープと使い方は一緒だ。
 
 他にも、新体操で使う道具と酷似した4つの武器をチョイスしている。    
 
 ……アキラと亜子は。
 
 親友が気になり視線を向ける。
 
 そこでは巨大な穂先の長槍を用いて、敵を刺し貫き、更にはその重量を利用して粉砕し、押し潰す。
 
 正に鬼神の如き強さを誇るアキラの姿があった。
 
「……アキラ、凄い」
 
 まき絵の褒め言葉に対してアキラは槍を振るって刃先に貫いたままの田中を振り落とすと、
 
「いや……、私じゃない。……槍が勝手に動いてる」
 
 性格が優しすぎるアキラが戦えるように、とエヴァンジェリンがチョイスしたのが、この“水魔の槍”だ。
 
 無論、主人と認めてもらうには相応の膂力や素質が必要になってくるが、その辺りは完全にクリアしている。しかも、この“水魔の槍”の特性は、その名の如く、水を使用者の意のままに操る事が出来る。
 
 何だか良く分からないまき絵だが、とにかく、その槍があればアキラの方は問題無いようだ。
 
 ……亜子の方は?
 
「わぁぁぁぁあああ!!」
 
 気合いと共に放たれる回し蹴り……、否、あれはボレーシュートか?
 
 その一撃で田中の首を吹き飛ばし、着地と同時に再度跳躍、空中で姿勢を制御して落下地点の田中に浴びせ蹴りをお見舞いする。
 
「ご、ごめんなさい、ごめんなさい」
 
 あちらも、亜子の意思というよりは、脚甲に操られているような感があるが、まあ、戦力としては問題無いだろう。
 
 ……ゆえちゃんやパルは大丈夫かなぁ?
 
  
 
 
 
 
 
 
 
 
−麻帆良大学工学部・キャンパス中央公園−
 
 まき絵の心配する夕映だが、勿論、彼女にも護衛が着いている。
 
「来た来た来たよ──!」
 
 何故か喜びながら告げる桜子の声に反応して夕映と釘宮が構える。
 
 夕映の手に握られているのは杖。釘宮はミドルソードの二刀流だ。
 
「さて、……どこまで粘れるかな?」
 
「出来れば、最後まで粘ってほしい所です」
 
 ……そりゃ、ちょっと難しいかも。
 
 圧倒的な数の敵戦力を前に弱気になる釘宮。
 
「ある程度、数が減るまでは、私がサポートしますから、思いっきり暴れてきて下さい」
 
「せやな、怪我してもウチが治したれるし」
 
 そう告げるのは木乃香と刹那の主従コンビだ。
 
「そんじゃ、ま! 一曲行っとく?」
 
 柿崎の問い掛けに、皆が笑みで頷き返す。
 
「ほにゃらば、一丁頑張りましょう!!」
 
 桜子が片手に弩弓を持ちながら、もう片方の手を派手に振り上げるのと同時、それを合図に柿崎がギターを掻き鳴らしながら歌い始める。
 
「──戦争なんてくだらないわよ! 私の歌を聴けぇ──!!」
 
 そして始まる曲は戦意向上を主としたあの名曲。
 
「Let’s Go ●き抜けようぜ! 夢で見た夜明け♪ まだまだ遠いけど……。
 
 Maybe 本当に叶うのさ、●があれば何時だって!
 
 俺の歌を聴けば……、簡単な事さ、●つのハートをクロスさせるなんて!
 
 夜空を駆けるLove Heart 燃える想い●乗せて、悲しみと憎しみを撃ち落として行け!
 
 お前の胸にもLove Heart ──真っ直ぐ●け止めて、Destiny 何億光年の彼方へと●撃Love Heart!!」
 
「あにますぴりちあぁぁ──!!」
 
 意味不明な叫び声を挙げて桜子が手にした弩弓をロボ軍団へと乱射する。
 
 弩弓から飛ぶのは通常の矢ではなく魔法で出来た光の矢だ。それも魔法の射手のように着弾して爆発するのではなく、貫通力を主目的に作られているので、一発で多くの敵を倒す事が出来る。
 
「私達も征くですウィーペラ!」
 
「くきゅー!」
 
「“火炎の息吹”!!」
 
 夕映の命令に従い、ウィーペラの口から吐き出された火球が田中に命中し燃え上がる。
 
「わ、私も行くよ!!」
 
 戦場に駆ける釘宮に向け、背後から木乃香が補助魔法を掛ける。
 
「──善なる神よ、立ち上がりし勇者達に祝福を。悪しき闇を阻む聖なる盾、邪悪を退ける正義の力を与え給え! “祝福”!」
 
 白魔術の基本魔法。攻撃力と防御力の向上。更には戦意高揚の効果のある魔法だ。
 
「何か、漲ってきた──!!」
 
 二刀を用い、敵の真ん中で暴れ回る釘宮。
 
 二刀流の基本は、両手の剣を別の軌道で個別に振り、時には同期させて振るう事だ。
 
 普通ならば、それには熟練の技を要するのだが、ここでは釘宮のチアリーダーとしてのスキルが生きる事になる。
 
 散々練習してきたチアリーダーとしての動きが、上手く二刀流としてのそれと連動する。
 
 左右から襲いかかる田中に対し、両腕の剣を持って個別に迎撃し、正面からの敵に対しては直蹴りをお見舞いしてやった。
 
 その動きは正に、
 
「おぁ、“持ってけセーラー服”だね♪ 円」
 
 そこに、中型の多脚戦車が現れるが、それは一瞬で間を詰めた刹那の手によってアッサリと両断されてしまう。
 
「よっしゃぁ──! ばっち、来ぉ──い!」
 
 こちらの方は今の所、概ね問題無さそうだった。
   
 
 
 
 
 
 
 
 
 
−龍宮神社・神門−
 
 同時刻、ハルナの受け持つ龍宮神社にも多数の機械兵が押し寄せていた。
 
 この場を受け持つのはハルナと古菲、そして美空とココネの4人だ。
 
「……しかし、これは案外、つまらないアルね」
 
 不満そうに口にするのは古菲だ。
 
 彼女の眼前で繰り広げられるもの……、それは最早戦闘行為ではなく、一方的な暴虐だった。
 
「いやいや、楽できていーじゃん♪」
 
 ……しかし、ホント出鱈目だね、こりゃ。
 
 呆れ果てる美空の視線の先、圧倒的な火力を持ってロボ軍団を制圧しているのはハルナの能力によって作り出された簡易ゴーレム。
 
 名を高町・なのは、9歳Ver.
 
 二次創作だからこそ出来るインチキ技だ。
 
「いやー、ハッハッハッハッ♪ 私ってば、最強?」
 
 調子づくハルナだが、その強さは本物だ。
 
 そのアイデアに閃き、ネギと模擬戦を行った際、彼が一方的に嬲られた程に。
 
「ディバイィ──ン……、バスタァ──!!」
 
 そして、また、数体の田中が纏めて宙を舞う。
 
「たーまやー♪」
 
「ミソラ……、花火と違う……」
 
「いやいや、良く似たもんだって」
 
 このチームは案外余裕っぽかった。
 
 
  
 
 
 
 
 
 
 
−麻帆良国際大学附属高等学校−
 
「ケケケケケ」
 
 楽しそうな笑みを浮かべながら無数のナイフを操り、迫り来る田中を殲滅するのは、エヴァンジェリンの従者の一人、チャチャゼロだ。
 
 彼女は更に、自分の身長よりも巨大なナイフを振るい、一体の田中を両断すると、心底嬉しそうに、
 
「アー、愉シ♪」
 
 逆に、つまらなそうに鼻を鳴らすのはエヴァンジェリンだ。
 
「本命はまだか? いい加減、雑魚ばかりで飽きてきた──」
 
 告げ、“氷神の戦鎚”で数体の田中を纏めて押し潰す。
 
 ……このチームは心配するだけ、無駄だった。
  
 
  
 
 
 
 
 
 
 
−フィアテル・アム・ゼー広場−
 
 この場を守護するのは、ネカネ、高音、明日菜、アーニャの4人だ。
 
 だが、実際に戦っているのは……、
 
「あ、あの……、ネカネ様?」
 
 恐る恐る尋ねる高音に対し、ネカネは襲いかかる田中を迎撃しながら、
 
「何かしら? 高音さん」
 
「い、いえ……、私達にも、何かやることは……」
 
 尻窄みになるのも仕方ない。
 
 これまでに襲いかかってきた数十体の田中、……否、既に百は越えているだろうか?
 
 その全てをネカネ一人で鎮圧してきたのだ。
 
「貴女達は休んでいてくれて良いわよ……。この後で、大事な仕事があるんですもの」
 
 それを言うならば、ネカネも同じだ。
 
 彼女はこの後、巨大生体兵器の相手をしなくてはならない筈なのだが、これまでにネカネが使用した魔法は、“戦いの歌”のみ。
 
 その圧倒的な力量差の前に、高音はただ溜息しか出なかった。
 
 そんな彼女に対し、アーニャは諦めの言葉を吐く。
 
「いい加減慣れなさいって。ネカネさんなんだから……」
 
「いえ、そんな理由もどうかと思うんですが……」
 
 とはいえ、納得出来てしまうから不思議だ。 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
−女子普通科付属礼拝堂−
 
 迫り来るロボ軍団を蹴りから発生する鎌鼬によって数体同時に両断し、その攻撃をかいくぐってきた者達でさえも、近接戦をもって退ける少年は、不平不満を纏めた怨嗟を口にする。
 
「──騙された!! ここに来たら、ネギと戦える言われたのに、出てくるの雑魚ばかりやないけ!!」
 
 小太郎に協力させる為、そう言ってこの場の守護を任せたのは夕映だ。
 
 ……あのデコチビ、ホンマ、ネギに似てきたな。──将来、ロクな人間にならへんで。
 
 と一人ごちる彼の後方、そこには二体の式神を従えた天ヶ崎・千草の姿もある。
 
「……まったく、告白阻止だけでも面倒やっていうのに、何余計な仕事増やしてくれとんねん」
 
 そうは言うが、彼女の顔には笑みがある。
 
 ……とはいえ、これはあのクソガキに合法的に復讐するチャンスや!
 
 アーニャ達の援護に回れという命令である以上、ネギと敵対しても、それは命令通り。
 
 彼女にしてみれば、これ以上のシチュエーションはもはや有り得ないだろう。
 
 ……まぁ、そうは言うても、このロボット何気に強いしなぁ……、そんな余裕あらへんで。
 
 視線を前方に向ける。
 
 そこでは獅子奮迅の活躍を見せるヘルマンとスライム娘達が居る。
 
 ……しかし、ウチここに居る必要あるんやろか?
 
 圧倒的な強さを誇る小太郎達を前に、思わずそんな事を考えてしまう千草だった。
 
   
 
 
 
 
 
 
 
 
 その頃、ベース基地となっている図書館では、精神が電子世界にダイブしている為、抜け殻になっている千雨の身体と、ネギや超一味を索敵する仕事を請け負ったのどか、朝倉、そして護衛を兼ねた楓の姿があった。
 
 のどかの眼前に広がるのは十冊を越える数の小冊子。
 
 各エリア事でネギ、超、葉加瀬、真名の名前を検索してみるが、一向に見つからない。
 
 無論、彼女一人の力では、直径3qに及ぶ広範囲を調べ挙げる事など不可能だ。
 
 そこで朝倉のアーティファクトである小型偵察機を触媒に、各エリアを調査しているのであるが……、
 
「……私が読めるのは、あくまで表層意識だけですから、強い精神防壁を持っている人だと、心が読めないんですぅ」
 
「んー……、私の方も、個別に探してはいるんだけどね、……流石に学祭最終日だけあって人が多いわ」
 
 それに彼女達の事だ、何らかのステルス技術を持っていても不思議ではない。
 
 ……敵に回すと厄介な相手だねぇ。
 
 それはネギを指しているのか? それとも超か?
 
 ともあれ、
 
「……何とかして見つけないとね」
 
 超の考えにも一理あるとは思うが、被害が自分のクラスメイト達にまで及ぶとなれば話は別だ。
 
「後味悪いのは、嫌だしさ……」
 
『龍宮さん発見しました!』
 
 さよからの通信に、朝倉は急いで手元の地図を覗き見る。
 
 携帯電話や念話が妨害される事を見越し、エヴァンジェリンが採用した第三の通信手段。
 
 ──それは世界樹を中心とした直径3q範囲内に張り巡らせた糸を使って通信する糸電話だ。
 
 ……よもや、携帯全盛期のこの時代に糸電話とはねぇ。
 
 勿論、ただの糸電話ではない。
 
 糸自体はエヴァンジェリンが人形を操るのにも用いている特殊なものであるし、それに魔力を通しているので、生半可な攻撃では断ち切る事が出来ない。
 
 さよから連絡のあった地点に偵察機を向かわせ、目視で真名の存在を確認。
 
「長瀬!」
 
 名前を呼ばれた楓は場所を確認すると、小さく頷き、すぐさまベース基地を出て迎撃に向かう。
 
「龍宮はこのまま私が監視してるから、さよちゃんは超りん達の行方を追って!」
 
『りょ、了解です……!』
 
 モニター越しにこちらを見つめる真名の視線を受けつつ朝倉は一人ごちる。
 
「……なんだか、上手く誘い出された感じがしないでもないけども──」
 
 今は、楓に賭けるしかない。
 
 ……頼んだよ、長瀬。
 
 
    
 
 
 
 
 
 
 
 一方その頃、電子世界では……。
 
 ウィル子の仕掛ける攻撃を辛うじて回避しつつ逃げ回る千雨の隙を付き、茶々丸が学園結界を落としていた。
 
「しまった!?」
 
 舌打ちするが、手遅れだ。
 
 それに茶々丸の妨害をしようにも、ウィル子が邪魔で彼女に攻撃を仕掛けられない。
 
 しかもこのウィル子、とんでもなく質が悪い。
 
 千雨の仕掛ける攻勢プログラムや防壁さえも喰らい尽くす食欲。
 
 しかも、それを取り込み更に成長しているのだ。
 
 ……くそ!? せめて時間稼ぎを!
 
 そんな千雨の視界に入ったのは、大企業IAIのホストコンピューターのデータバンク。
 
 ここなら、以前侵入した事がある。
 
 というか、ここのお偉いさんがちうのファンらしい。
 
 前にハッキングした際に仕掛けておいた直通のドアを開き、中へ飛び込む。
 
 それを追うようにしてウィル子も中に飛び込むと同時、別のドアから千雨が外に出て、手にしたツールで頑強にドアをロックする。
 
 中ではウィル子が喜び勇んでデータを貪り食っている事だろう。
 
 無論、食われたデータは消えていく事になるが、
 
 ……あんなデータは無くなった方が、世の中の為だ。
 
 ホストコンピューター内に収められたデーターの内8割が18禁ゲームのデーターだった。
 
 しかも、それはたった一人の人間の手によりプレイされたもので、実名プレイでフルコンプリートされた物ばかりだったのだ。
 
 その情報量は数十テラバイトにも及ぶ。
 
「よし、今の内に学園結界を復活させるぞ!」
 
「はい、ちう様!!」
 
 そして、千雨の反撃が始まる。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 同時刻、学園結界が落ちたことにより、巨大生体兵器が活動可能となっていた。
 
「学園結界が、落とされましたの!?」
 
 叫ぶ高音の視線の先、そこに現れたのは機械で制御された巨大な鬼神。
 
「うわっ!? でっかいわね……」
 
 流石にこの大きさは想定してなかったのか? 明日菜が不安気に見守る中、眼前の田中を殴り倒したネカネが一息吐き、
 
「あらあら……、でも見た所、京都のリョウメンスクナよりは霊格が低そうね」
 
 どこかつまらなそうに告げる。
 
 ともあれ、超一味対3−A選抜+α。第2ラウンドの開幕となった。
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