魔法先生……? ネギ魔!
 
 
書いた人:U16
 
第22話
 
 紙吹雪舞い散る闘技場、そこに二人の少年の姿があった。
 
 一人は黒髪を長く伸ばし、邪魔にならないように縛った半獣人の少年、犬上・小太郎。
 
 彼は同年代にしては高い身長を最低限度の軽装鎧に身を包んで不貞不貞しい笑みをサングラスで隠しつつも余裕の零れる態度で立つ。
 
 その傍らに並び立つのは、赤毛の少年だ。
 
 小太郎と同じくらいの背丈の少年も伸ばした髪を適当に縛りサングラスで目元を隠している。
 
 小太郎と違う所といえば、その衣装が魔導士然としたローブであるというところか。
 
 その少年、ネギ・スプリングフィールドも小太郎同様不貞不貞しい笑みで観客席を埋め尽くした人々を見渡し、
 
「……俺が前座っていうのが気に入らねぇな」
 
「あん? お前の実力やと、前座くらいが丁度良ぇんやないか」
 
「ほほぅ。良く分かってんじゃねぇか。……自分の実力が」
 
 互いに睨み合うこと数秒。同じタイミングで視線を外し、
 
「後ろにも敵が居る事、忘れんじゃねぇぞチンピラ」
 
「試合中に死んでも事故死扱いやからな? 覚えとけやインテリヤクザ」
 
 互いにいがみ合っていようと関係なく時間は流れ試合開始の時刻はやってくる。
 
『さぁ、今期も開催されましたグラニクス夏季大会ミネルウァ杯! 第一試合西方は、地元一の拳闘士団“グラニキス・フォルテース”の新米自由拳闘士2名!!
 
 対する東方はヘカテスのベテラン自由拳闘士! アルギュレの虎獣人、ラオ・バイロン! ケルベラスの森妖精、ラン・ファオ!』
 
 選手が闘技場に揃った事で、いやがおうにも客席はヒートアップしてくる。
 
「新人ね。揉んでやるかラン」
 
「ういやっホーイ♪」
 
 相手は大柄な虎獣人と手の平サイズの妖精のコンビ。
 
「……オーソドックスな前衛、後衛って所か」
 
「ハッ、ほな相手に合わしたろか」
 
 小太郎の言葉を受け、ネギが下がる。
 
『ルールは皆様ご存じの通り!! ギブアップ戦闘不能で決着!! 武器魔法に使用制限無し!!』
 
 対峙する両者の間に緊張感が走り、テンションが上がっていく。
 
『開始!!』
 
 開始の声と同時に、ラオと小太郎の姿が掻き消え、タイムロス無しに闘技場中央でぶつかり合う。
 
「ぬうぅぅ!?」
 
「らぁあああ!!」
 
 直後、ラオと小太郎を中心に衝撃波が発生。
 
 観客席にまで届く空気の波に観客達はこの試合のレベルの高さを実際に肌で感じ、なおヒートアップする。
 
 その間にも、闘技場中央ではラオと小太郎が、もはや視認不可能な速度で拳を交わし合い、その隙にネギとランが中央の二人を迂回するように魔法の射手を撃ち合う。
 
「……埒が開かねぇな」
 
 一度の撃ち合いでランのおおよその強さを計ったネギは、小技では効果無しと判断して得意の砲撃魔法の準備に入ったその瞬間、闘技場中央で戦っていたラオが手の中に隠し持っていた植物の種をばら蒔いた。
 
「ピピルナ・パピルナ・パリアンナ! 萌え出ずる若芽よ、縛鎖となりて敵を捕らえよ!!」
 
 ラオの手により蒔かれた種がランの魔法によって一瞬で発芽してその蔦を一気に伸ばし小太郎の身体を拘束する。
 
「しもたッ!?」
 
 一瞬の隙を付かれ、身体を拘束された小太郎の腹にラオが一撃を加えようとするが、それよりも速くネギが小太郎に向けて“爆魔の閃光”を放つ。
 
「伏せ!」
 
 まるで犬を躾けるように命令するネギの言葉に反応して小太郎が身体を地面に這い蹲らせた。
 
 進路上に障害の無くなった熱衝撃波は、そのままラオに直撃。……と思われたが、虎獣人の質量を持った咆吼。虎砲と呼ばれる技によって相殺されてしまう。
 
「チッ!?」
 
 ……仏心出さないで、コタローごと殺っとくべきだったか!?
 
 舌打ちし、次の詠唱に入るネギだが、それよりもランの方が早い。
 
「来たれ地の精! 花の精!! 夢誘う花纏いて蒼空の下、駆け抜けよ一陣の嵐!! ──“春の嵐”!」
 
 放たれた魔法がネギと小太郎を直撃する。
 
『おぉーっと! いきなり第一試合から大魔法!!
 
 これは決まったぁ──!?』
 
 粉塵のたちこめる中、あの威力の魔法が直撃してはこれ以上の試合の続行は不可能と読んだランとラオが勝ち誇った表情で、
 
「新人相手にやり過ぎたか!? 意外にあっけねーな!」
 
「いえーい、いえーい♪」
 
 しかし、二人の余裕もそこまでだった。
 
「俺の障壁3枚も破ったんだ。自慢して良いぞ。そこの小っちゃいの」
 
「虎なんぞ、所詮、猫科やと思ってナメっとたら、案外やるもんやないけ」
 
 粉塵が晴れた場所には、無傷のネギと小太郎が居た。
 
 驚愕に目を見開くランとラオ。
 
 対するネギは小太郎に向けて視線を送ると、
 
「コタロー、アレやるぞ」
 
「……アレ?」
 
 ネギの提案に小首を傾げる小太郎だが、すぐに合点がいったのか唇の端を吊り上げて不敵な笑みを浮かべると、
 
「それも一興!」
 
 並び立つネギと小太郎。
 
 始めに口を開いたのはネギだ。
 
「人と獣の二つの道が! 捻って交わる螺旋道!!」
 
「昨日の宿敵で運命を砕く! 明日の道をこの手で創る!!」
 
 二人が声を揃え、同時に吠えた。 
 
「宿命合体、グレンラガン!! ──俺を誰だと思ってやがるッ!!!」
 
 なんだか分からない気迫に押されるランとラオ。
 
「……グレンラガンって何だ!?」
 
 その一瞬の隙を逃さず、縮地で距離を詰めた小太郎がラオの胸に左腕で肘打ちを叩き込み、更に右拳を左手に打ち込む事によって威力を倍加させる。
 
「犬上流、──圧潰ッ!」
 
 巨漢の相棒が吹っ飛ばされ呆然とするランだが、彼女の相手であるネギもちゃっかり詠唱を完成させようとしていた。
 
「ラス・テル・マ・スキル・マギステル! 来たれ深淵の闇! 燃え盛る大剣!
 
 闇と影と憎悪と破壊! 復讐の大焔!! 
 
 我を焼け! 彼を焼け! そはただ焼き尽くす者! ──“奈落の業火”!!!」
 
「ちょっと待っ──ッ!?」
 
 涙目で悲鳴を挙げるランだが、ネギの放つ漆黒の大焔は容赦なく彼女の小さな身体を呑み込んだ。
 
 否、ネギの放った魔法はそれだけに留まらず、ランの背後の闘技場の壁をその熱だけで溶かし、その被害を観客席にまで及ぼす。
 
 幸い観客席は頑丈な結界が張られていた為、ネギの魔法を留める事に成功した。
 
 とは言っても結界が耐えられたのは僅かに20秒。
 
 それ以上は結界が保たないと悟った観客達は即座に避難し、一人の怪我人も出さずに済んだが、それでもネギの力を皆に知らしめるのには充分だった。  
 
 魔法の効果が収まり、静まり返った闘技場。
 
 自分以外は、小太郎と審判の少女以外動く者が無くなった闘技場を見渡しネギは小さく溜息を吐くと、
 
「……俺もまだまだ甘いなぁ」
 
 ネギの視線を追って見れば、泡を吹いて気絶するランの姿がある。
 
 彼女の周囲が土まで灼かれ灰になっているのに対し、ランが無事なのは決して彼女がレジストしたからではなく、ネギが態と躱したからだ。
 
 そこで漸く我を取り戻した審判の少女は大きく息を吸い込み、
 
『こ、これは……、大番狂わせ!? いいえ、それよりも何という威力の大魔法! 対戦相手だけでなく、観客さえも黙らせる破壊力!! これはもしや禁呪の類なのではないでしょうか!?』
 
 魔法自体は高位古代語魔法ではあるが、禁呪指定される程のものではない。破壊力が異常なのは、学祭後の特訓でネギの自力が向上したためだ。
 
『それでは勝利者インタビューデス』
 
 実況の悪魔少女がネギの元にマイクを向ける。
 
『新人さん、お名前は?』
 
 対するネギは少女からマイクを奪うと、正体を隠すために付けていたサングラスを外して素顔を晒す。
 
 既に賞金首として公表されている彼の正体に気付いたのか? 観客席からどよめきの声が挙がり始めた。
 
「お、おい! 何考えとんねんネギ!?」
 
 小太郎の静止も聞かず、ネギはマイクに向けて声を張り上げる。
 
「ネギ・スプリングフィールド! ……伝説の英雄、サウザンドマスター、ナギ・スプリングフィールドの息子だ!」
 
 ナギの名前の影響は大きく、ざわめきが一気に静まり返り、むしろ先程の威力も彼の息子ならば、と納得させるのに充分な意味を持たせた。
 
「知っての通り、賞金首だが、喧嘩売る時は遺書書いてから来いよ? 今回は試合だから手加減してやったが、次からは容赦しねぇぞ。
 
 ──死にたい奴だけ掛かって来い!!」
 
 カメラに向けて睨み付けながら叫びを挙げる。
 
 ……こうして威力の高い魔法を見せつけ、更に脅しておけばレベルの低い連中は手を出して来ないだろうという考えだ。
 
 やってしまった以上はしょうがない。小太郎も諦めてサングラスを外してネギからマイクを奪うと、
 
「犬上・小太郎や! 始めに言うといたるけどな。──俺はネギより強いで!!」
 
「フカシこいてんなテメェ!」
 
 直後ネギから殴られた。
 
「事実やろが!」
 
 いがみ合う二人だが、審判の少女は小太郎がネギに殴られた際に落としたマイクを冷静に拾い上げ、
 
『さあ、俄然面白くなってきました!! かの英雄、サウザンドマスターの息子が参戦!
 
 しかもその実力は間違いなく本物です!』
 
 元々、グラニクスの街は賞金首やお尋ね者といった荒くれ者が集まる街だ。
 
 今更参加者の一人や二人が賞金首だという理由で、観客が恐れる理由にはならない。
 
 それどころかネギの血筋、実力、ルックスなどから速攻でファンクラブが発足するほどだ。
 
 今日一番の盛り上がりを見せる闘技場の真ん中で、ネギ対小太郎の第2ラウンドが開始されようとしていた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 ネギ達のデビュー戦から1週間。
 
 その間13戦して全勝(内不戦勝8)という破竹の勢いで勝ち数を増やしていくネギと小太郎。
 
 ネギの派手な魔法に対し、小太郎は最短、最小、最速を狙う玄人好みの戦い方で確実に相手を倒していく。
 
 そして今日も圧倒的な力量差で勝利し、試合後の勝利者インタビューを受けていた。
 
『こんにちはーネギさん。今日は全国中継デスよ』
 
「ん? 全国中継?」
 
 それを聞いたネギは暫し考え、審判の悪魔少女からマイクを奪うと、
 
「全国に散る大ネギま団メンバー共! いいか!? 一ヶ月後にオスティアで開かれる拳闘大会がある!
 
 どんな手段を使ってでもそこまでやって来い! 多少の犯罪行為は俺が許す!! 来れない奴はこっちの世界に置き去りにしたまま帰るぞ! 分かったな? 分かったら返事しろ!!」
 
「そう叫くな小僧。ちゃんと聞こえているさ」
 
 背後から聞こえてきた声に振り向く。
 
 そこに居たのは金髪の小柄な少女と茶々丸(姉)、そして春日・美空の姿があった。
 
「早かったな、キティちゃん」
 
「ふん、位置さえ分かれば後は影の有るところなら何処でも転移出来る」
 
 とはいえ、それは使い魔の契約を結んでいるネギの影限定の話だ。強固な繋がりがあるネギとエヴァンジェリンであるからこそ出来る超長距離転移。
 
 久しぶりの再開を果たしたエヴァンジェリンは眉を顰め、
 
「どうでも良いが、勝手にパーティー名を“大ネギま団”に変えるな」
 
「残念だったな。既に全国レベルで大ネギま団として認知された後だ」
 
 心底嫌そうに告げるエヴァンジェリンに対し、ネギは勝ち誇った顔で告げる。
 
 そんな彼らの後ろでは、美空の帰還に観客席から飛び降りて彼女に抱きつくココネの姿が見える。
 
 幾人かの仲間達との合流を果たし、さあ帰ろうとしたネギ達の頭上。
 
 全長3mはあろうかという巨大なタンポポの綿毛に乗った少女がゆっくりとした速度で闘技場に降下してきた。
 
 少女は闘技場に降り立つと周囲を見渡し、そこに見知った顔があるのを確認して満面の笑みを浮かべ、
 
「あ、ネギ先生だ♪」
 
 気楽な調子でそう告げた。
 
「……よーし、取り敢えず事情を説明しろ椎名」
 
 少女の名前は椎名・桜子。3年A組出席番号17番。チア部とラクロス部に所属しており、クラスのムードメーカーでもある少女だ。
 
 どうも、桜子自身も余り事情は理解してないようだが、取り敢えず転移魔法によって跳ばされてからここまで、持ち前のラッキーで辿り着いたらしい。
 
「……ありえねぇ」
 
 それを聞いたネギはウンザリした口調で溜息を吐き出す。
 
「……何で別の大陸からここまで風任せで飛んで来れるんだよ? しかも都合良く木の実がなった木の横を通過したおかげで食料には困らなかったりとか、寝るときにはちゃんと地面に降りるとか、水場で水浴びしてる間は風が止んでるとか、マジありえねぇ。
 
 つーか、お前砂漠に置き去りにしてきてやるから、1ヶ月くらいサバイバルしてこい。
 
 でないと俺の気が済まねぇ」
 
「妬みで無茶苦茶言ってんなぁー!」
 
 乱入した柿崎がネギの頭にギターを叩き付けようとするが、障壁に阻まれてネギまで届かない。仕方なく諦めた柿崎は親友の帰還を素直に喜び合う事にした。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 廃都オスティア。二十数年前に戦争が起こるまでは風光明媚な古都だったが、現在は殆ど廃墟で観光の街となっている。
 
 その無人の街にも旧世界とを繋ぐゲートがあり、それは休止中だった為、フェイト一味に襲われずに済んでいた。
 
「……つまり、俺等が元の世界に戻れる唯一の方法ってわけやな?」
 
「更にそこで優勝すれば、賞金100万ドラクマをGetして、借金も帳消しになるしね」
 
 問題は、大ぴっらに宣言した事により、賞金稼ぎ達が生徒達を捕らえようとするだろうが、
 
「その程度は自力で何とかするだろ?」
 
 ネギは楽観視していた。
 
 何だかんだ言いながらも夏休みの間に鍛え上げ、並の魔術師程度でどうこう出来ない程度にまで鍛え上げてきたのだ。
 
 並以上の戦闘力を持つ者達が相手の場合は勝てないだろうが、その時は勝てないまでも死なないよう、逃げ方、生き延び方を教えてきた。
 
「問題は、今の放送を見てない奴等が居る可能性があるって事だ。
 
 そこで……」
 
「私達の出番ってわけね」
 
 前に出るのは年齢詐称薬で幼くなった朝倉と茶々丸の二人だ。
 
「金に限りがある以上、効率的に廻らないといけないからな。
 
 ある程度の情報が集まるまで、もうちょっと待ってろよ」
 
 そう言って席を立ち、ミーティングを終了する。
 
 その後ネギは気分転換に街へ繰り出した。
 
「……とは言ったものの、どうするか? だ」
 
 フェイト一味がオスティアのゲートを放置したままにしておくとは考えられない。
 
「全員でフルボッコにすれば勝てるだろうけど、先にゲート潰されたりしたら厄介だなぁ」
 
 ……まあ、拳闘大会が1ヶ月後に迫っている以上、大会準備の為少なからず人が出入りしているだろうから妙な工作は出来ないだろうけど。
 
「……つーか、そもそもゲート破壊なんかして、何が目的なんだ?」
 
 考えていたところで答えなど出はしない。
 
 そう結論すると、急に小腹が減ってきた。
 
 ポケットを漁ってみるが、
 
「……半オボルスしかねぇ」
 
 溜息を吐き、
 
「そこらの屋台でリンゴでもパクろうかな?」
 
 ちなみに、6オボルスで1ドラクマの価値がある。
 
 どうやら世界が変わってもネギが貧乏なのは変わらないようだ。
 
 そんな事を考えていると、近くの屋台で食事を摂っていた大柄な男がネギに話しかけてきた。
 
「よう、随分としけた面してんじゃねぇか」
 
 顔を向けてみると、そこには学祭の最終日に見た男の顔があった。
 
「……えーと、スポポビッチ13世だったか」
 
「あぁ、久しぶりだな駄裸厨」
 
 二人はにこやかに挨拶を交わし、次の瞬間ネギの放った魔法の矢と男の拳がカウンター気味に交錯。
 
 とはいえ、男の拳はネギの障壁に阻まれて届いていないし、ネギの魔法の矢も男には効いていないように見える。
 
「誰が駄裸厨だ! この色黒! 無駄にデカイんだよテメェは!?」
 
「言うじゃねぇかヒヨッコが!? つーか、誰だよ!? スポポビッチ13世!」
 
「知るかそんなもん!? そもそもアンタの名前聞いた事ねぇぞ!?」
 
 そこまで言われて自分がまだネギに名乗っていない事を思い出し、
 
「……あれ? 言ってなかったか? ……タカミチからも聞いてねぇのか?」
 
「聞いた覚えはねぇな」
 
 ならしょうがねぇ、と男は溜息を吐き出し、
 
「俺が“紅き翼”の一人、“千の刃”のジャック・ラカン様だ」
 
「ふーん……」
 
 興味なさそうに頷き、ネギはラカンの対面の椅子に腰を下ろすと、フォークが突き刺された肉塊に手を伸ばし、それを自分の口に放り込む。
 
 良く噛んで飲み込み、テーブルに並ぶ料理の中から次の獲物を吟味しながら、
 
「……で? 何か用か? ジャック」
 
 ほぼ初対面に等しいにも関わらず、いきなりファーストネームで呼んでくるネギに対し、ラカンは何処か懐かしさを感じつつ、唇の端を吊り上げ、
 
「あぁ、お前の頭上に凶と出てるぜ、有名人」
 
 ラカンの言葉と同時、ネギの頭上から鋭い刃が襲いかかってきた。
 
 ……敵か?
 
 漆黒の刃はネギの障壁を易々と貫通し、15枚を貫いた所で漸く停止した。
 
「ほう……。私の“影の槍”を阻むとは、……サウザンドマスターの息子、どうやら名前倒れではないようだな」
 
 人影の中から姿を現したのは全身黒ずくめに仮面を被った男。
 
「私はボスポラスのカゲタロウ。──貴様に尋常の勝負を申し込む」
 
「ハッ、奇襲仕掛けておいて尋常の勝負とは、面白い事言うじゃねぇか!」
 
 フォークをテーブルに突き立て、椅子を蹴倒して勢い良く椅子から立ち上がる。
 
 それを決闘了承とみたカゲタロウが20本以上もの影槍をネギに向けて放つ。
 
「ラス・テル・マ・スキル・マギステル!
 
 氷の精霊39頭! 集い来たりて敵を切り裂け! “魔法の射手・連弾・氷の39矢”!!」
 
 変幻自在の軌道でネギに襲いかかる影槍に対し、ネギは貫通力の高い氷系の魔法の射手で影槍を相殺する。
 
「何だ!? 決闘か! ──なら賭けだな! 賭けが出来るぞ!!」
 
「誰と誰だ!? 賭けになるようなカードなんだろうな!」
 
 いきなり始まった街中での戦闘だが、この街の住人達にしてみれば決闘など娯楽以外の何物でもないらしく、あちらこちらで賭けが始まる始末だった。……が、決闘の当事者の一人がネギと知ると様相は一転する。
 
「ネギ・スプリングフィールドじゃねぇか!? 逃げろ! 魔法に巻き込まれるぞ!?」
 
「今日はもう店じまいだ! とっとと店閉めて結界で防御固めとけ!!」
 
「やっと! やっと手に入れた念願のマイホームだというのに!?」
 
「アナタッ!?」
 
 そんな一連の騒動を眺めながらカゲタロウは溜息混じりに、
 
「……大した評価だな」
 
「そう褒めるな。照れるじゃねぇか」
 
 ネギは影から己の杖を召喚し、
 
「さて……、そんじゃまー一丁揉んでやるよ、カゲタロス」
 
「カゲタロウだッ!!」
 
 ──“百の影槍”!!
 
 叫びと同時、カゲタロウの左腕から無数の影槍が飛び出す。
 
 対するネギは後退して距離を取りながら愛杖を振りかぶり、
 
「ラス・テル・マ・スキル・マギステル!
 
 我は完全なる青に申し上げる! それは、損得を抜いて成立する聖なる契約! 青にして空色の我は万古の契約の履行を要請する!!
 
 我は王の悲しみを和らげるために鍛えられし一振りの剣、ただの人より現れて、歌を教えられし一人の魔法使い!
 
 我は逆転する天の意志! 我は号する突き上げたる反逆の拳!
 
 我が一撃は●●の一撃! 蒼天を呼ぶのは我が剣なり! 我は天翔るただの人間なり!
 
 王命によりて我は力の代行者として火の国の宝剣を使役する! 完成せよ! 天拳!」
 
 ネギは己の持つ杖を触媒として劫火の刃を顕現させる。
 
 現れた炎の刃は一瞬で天にそそり立つ火柱と化した。
 
「禁忌! ──レーヴァンテイン(“火の国の宝剣”)!!」
 
 振り下ろした焔刃が無数の影槍を砕き、そのままカゲタロウへと振り抜かれる。
 
 対するカゲタロウも馬鹿ではない。一瞬で作り出した影法師に焔刃を受け止めさせると、その隙に自分はその場から離れた。
 
 直後、影法師は焔刃に押し潰され周囲を爆砕する。
 
 その術後の隙を付き、まるで鞭のように伸びた影がネギの周囲を取り囲み、そのまま彼を輪切りにしようとする。……が、それもネギの障壁に阻まれて叶わない。
 
「……出鱈目な障壁だ。私の影槍には障壁貫通力を付加してあるというのに」
 
「俺にしてみれば、一瞬で10枚以上抜く事の方が驚きだがな」
 
 僅かな間を置いて、再度二人は攻防を開始する。
 
 最初に動いたのはカゲタロウの方だ。
 
 呪文詠唱が必要で無い分、ネギよりも速い。
 
 影槍を全体に散らすのではなく魔法障壁の一転突破を狙う。
 
「ラス・テル・マ・スキル・マギステル! 結わえる髪を加える網と、払える海を浚える無観を、虚空の雲を解き置き削ぎて、大地を穿つその音を我に!!
 
 ──“北翁の愁い”!」
 
 雷光が迸り、影槍を周囲の空間ごと灼き尽くす。
 
 そして一拍の後、轟音が轟き、その余波だけで周囲の家の窓ガラスを砕き散らした。
 
 ……しかし、それでも決定打にならない。
 
 自分に襲いかかる雷光を黒衣で散らす事によって耐えきってみせた。
 
「おおぉぉぉ!!」
 
 耐えてはみせたものの、無傷というわけでもないカゲタロウは、ここが勝負所と踏んだのか? 一気にネギとの間合いを詰めようと吶喊してきた。
 
 とはいえ、縮地は疎か瞬動さえ用いない特攻だ。
 
 ……遅ぇ! ──ここで沈めッ!!
 
 ネギは迎撃の為、無詠唱で数発の魔法の射手を放つ。
 
 対するカゲタロウは、その光弾を影槍で迎撃するのではなく、黒衣により防御を選択した。……まるで、少しでも攻撃の為の力を温存するかのように。
 
 そんなカゲタロウの覚悟を見抜いたのか? ネギが一旦間合いを広げようとするが、その時は既に遅く、手を伸ばせば届く位置にまで近づいていたカゲタロウはネギの周囲を影槍によって囲っていた。
 
 逃げ場を封じた上で、至近距離から影槍を一点に集中して連続射出。
 
「チッ!?」
 
 ネギは攻撃を諦め、攻撃面に魔法の盾を複数張る事により何とか耐えようとするが、それよりも速くカゲタロウの右腕が彼の肩を鷲掴みにする。
 
「捕らえたぞ、ネギ・スプリングフィールド!!」
 
 ゼロ距離から放たれる影の剣刃。
 
 直後、ネギの左腕が肩口から切断された。
 
 切り落とされた左腕が地面に落ち、切断面から一拍の時間差をおいて血が飛沫く。
 
 ──明確な殺意を持って放たれた攻撃。
 
 それはヘルマンやフェイトと相対した時にさえ感じなかったものだ。
 
 ……彼らからは敵意は感じはしても殺意は無かった。
 
 石化させ、邪魔が出来ないように仕向けようという程度の敵意。
 
 久方ぶりに叩き付けられる純粋な殺意を前に、ネギの中の狂気が鎌首をもたげる。
 
「ッ!? があああぁぁぁ!!!」
 
 咆吼のような悲鳴を挙げ、苦し紛れに放った風の刃がカゲタロウに降り注ぐ。
 
 豪雨のように降り注ぐ鎌鼬は、カゲタロウの右腕をお返しとばかりに切り飛ばし、それには流石に耐えきれずカゲタロウも大きく後退して距離を取った。
 
 しかし、その選択は間違いだ。
 
 大きく開いた距離はネギの間合い。ここぞとばかりにネギは戦闘中に溜めた遅延魔法を解放する。
 
「おおおおおおぉぉぉッ!!」
 
 まず放たれたのは千を越える数の魔法の射手。
 
 それも数が多すぎて、ネギ自身制御しきれていない節がある。
 
 1/3くらいは周囲の建物を破壊しながらも、残りはカゲタロウへ波状攻撃を続けることでカゲタロウは防御に集中せざるをえなくなり、結果、彼の動きを封じ込める事に成功した。
 
 そして第二の呪文解放。
 
 ネギの得意とする極太の光条がカゲタロウを襲い、彼の身を守る黒衣の外套を強引に剥ぎ取った。
 
 ……無論、その一撃は外套を剥ぎ取っただけでなく、カゲタロウ自身にも相当のダメージを与えている。
 
 その上でネギは更に追撃を仕掛ける為、新たな詠唱に入った。
 
 最後まで冷徹に、完膚無く、徹底的なまでに叩き潰す。
 
 純粋な殺意を持って、ネギは魔術を行使する。
 
「ラス・テル・マ・スキル・マギステル!!
 
 斬の名の下鮮血欲し、弾の名の下円月放洲刃を統べし刀神ルーレイロ! 
 
 我に汝の指を与えよ! ──“刀身の公矜”!!」
 
 ネギの周囲に現れ出たのは、剣。
 
 ──その数、百は下らないだろう。
 
 既に満身創痍。……避ける術を持たないカゲタロウは、眼前に浮かぶ剣の群を見て覚悟を決める。
 
「やるが良い、ネギ・スプリングフィールド。貴様にはその権利がある」
 
 無念はあるのだろう。──だが、後悔は無い。
 
 自ら殺す気で仕掛けた以上、殺される覚悟も出来ている。
 
 どこか吹っ切れたような声色で告げるカゲタロウに対し、ネギは術を放った。
 
 100を越える剣刃がカゲタロウに向かって飛ぶ。
 
 しかし、それがカゲタロウに当たることは無い。
 
「──“来たれ”!」
 
 その声と共に出現した無数の剣が、悉くネギの剣の群を相殺していく。
 
「チッ!?」
 
 舌打ちするネギの周囲。そこは既に飛来した剣によって檻が構成されていた。
 
「その辺にしておけよ、ぼーず」
 
 まるでカゲタロウを庇うように、立ち塞がるのは巨漢の男ラカンだ。
 
「……何のつもりだ?」
 
 睨み付け、殺意を叩き付けてみるも、ラカンは効いた様子もない。
 
「おいおい、随分とご挨拶だな。……折角人が生徒の前で人殺しを見せないようにしてやったって言うのに」
 
 そう言ってラカンが指さすのはネギの背後。
 
 そこに居たのは彼の生徒の一人、長谷川・千雨だ。
 
 おそらく、拳闘大会を覗き見て千雨がネギの生徒の一人だと判断したのだろう。
 
 年齢詐称薬によって幼い容姿となっている彼女は、持っていた紙袋をその場に落とすと、そのままネギの元まで駆け寄ってジャンプ。
 
 彼の襟首を掴むと体重を利用し、強引に引き落とす。
 
「何のつもりだテメェ!?」
 
 ネギの凶行を目の当たりにしながらも、臆する事無く睨みながら、
 
「今、何しようとしたって言ってんだ!?」
 
 殺人を犯そうとしていたネギに対し、彼女は本気で怒っていた。
 
 別に彼女は死刑廃止論者というわけでも無い。ただ、勝敗の決した勝負において、トドメを刺そうとしたネギの行動が気に入らなかっただけだ。
 
「決闘だか、何だか知らねぇが、勝負は着いていたはずだ! 殺す必要は無かっただろが!!」
 
「…………」
 
 ネギは答えず、ただ千雨の目を正面から見つめ返すのみ。
 
 膠着状態が生まれ、お互いに次の一手を打ち倦ねた状況を打破したのは、意外な事に殺されかけたはずのカゲタロウだった。
 
「私はその男を殺すつもりで決闘を仕掛けた。殺されたからといって文句を言うつもりは無い」
 
「そんな事言ってんじゃねぇだろ!?」
 
 即座に反論する千雨。
 
「殺す必要は無かったのに、トドメを刺そうとした先生の態度が気に入らねぇって言ってんだ!」
 
 甘い考えだ、と思う。
 
 そんな考えでは、この世界では生き抜いていく事は難しいだろう。……と、思いそこで漸く考えに至った。
 
「……なるほど、そういう事か」
 
「分かったら、テメェも被害者の立場からコイツに何か言ってやれ!」
 
 千雨の言葉を聞いたカゲタロウは仮面の下で小さく笑い、
 
「コイツが私を殺そうとしたのは守る為だ。……お前のような甘い考えの子供を、な。
 
 そうだろう? ネギ・スプリングフィールド。
 
 ここで自分の残虐性を示し、自分は疎か、その身内にさえ手を出そうという考えそのものを無くさせるといった所か」
 
 見透かしたように告げるカゲタロウ。
 
 だが正直な所、
 
 ……キレてただけで、深い考えなんか無いんだよなぁ。
 
 というのが本音だが、流石に空気を読んで口をつぐむネギ。
 
 ネギの凶行が自分達の為という事を聞いて、千雨はネギの襟から罰が悪そうに手を離すが、それでも彼女の表情は未だ納得していない。
 
 カゲタロウは踵を返し、
 
「今回は素直に負けを認めよう。──そして、改めて闘技場で正式な試合として貴様に挑戦を申し込もう、ネギ・スプリングフィールド!」
 
 対するネギは足下に転がっていたカゲタロウの切断させた腕を彼に蹴り返すと、
 
「そうだな……。拳闘大会には、俺の手下その1も出てるからな。
 
 そいつに勝てたら、その再戦の申し込み受けてやるよ」
 
「その言葉に二言は無いな?」
 
「テメェが勝てたらな」
 
 カゲタロウは深く頷き返すと、その場を去っていった。
 
 それを確認したネギは傍らの千雨に向け、
 
「……ところで」
 
「何だよ……?」
 
 機嫌の悪い声色で問い返す千雨だが、ネギは一向に構うことなく、
 
「俺の左腕が何処いったか知らねぇか? さっきから探してるんだけど、見当たらないんだよなー」
 
「……アンタ、魔法で腕くらい生やせるだろ?」
 
 不審気に尋ねる千雨だが、ネギの眼差しの焦点が合ってない事に気付く。
 
「いや、正直魔力が足りなくてな……。後、出血も多くてちょっとヤバイかな?」
 
 言うと同時、倒れ伏すネギ。
 
「お、おい! 先生!! ヤベッ!? 救急車か? いや、そもそもそんなモンがあるのか!?」
 
「はっはっはっ、ナギの息子にしちゃ、えらく貧弱な野郎だな」
 
「笑ってねぇで、運ぶの手伝えオッサン! 後、腕だ!」
 
 こうして、ドタバタの内にネギは病院に運ばれ、次に目を覚ましたのは二日後の事だった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 目が覚めたネギの視界に入って来たのは白い天井だ。
 
 ガラスの無い窓からは、空飛ぶクジラが見える事から、ここが何処なのかを悟り、自分が言うべき言葉を模索し、二秒で結論。
 
 声にして発してみた。
 
「……知らない天井だ」
 
「よーし、それだけボケられたら充分だな?」
 
 丁度見舞いに来ていた千雨が、全力の拳をネギの腹に叩き込んだ。
 
「げふぉ!?」
 
 油断した。戦闘と意識を失った事により障壁が全て失われており、ネギは千雨の一撃をもろに喰らってしまう。
 
 今の彼女は小学生くらいにまで縮んでいる状況だというのに、全力で体重を乗せた一撃をピンポイントで鳩尾に入れてくれた。
 
 元々打たれ弱いネギがベッドの上で悶絶するのを睥睨する千雨。 
 
「言っとくがな先生。私はまだアンタの事を怒ってんだ!」
 
「ちょ!? ちょっと長谷川!」
 
 それまでネギを看病していた亜子が必死に千雨を停めに入るが、彼女は身動きを封じられようとも口撃は止めない。
 
「いいか!? 私達を守るって名目で人を殺されても迷惑なだけだ! 人の所為にして無駄に罪重ねてんじゃねぇ!!
 
 アンタがもっと強くなれば、殺さなくても守れるんじゃないのかよ!?
 
 アンタならそれが出来るんだろ!? 中途半端な所で妥協してんじゃねぇよ!!」
 
 それはネギの都合を無視した。……しかし、彼の強さを信じた上での言葉だ。
 
 対するネギは溜息を吐き出し、
 
「やれやれ……、随分と期待されてるもんだな」
 
 とはいえ、千雨の意見に一理あることは確かだし、強くなる事に否があるわけではない。
 
 独りごち、ネギはベッドから立ち上がると千雨と共に見舞いに訪れていた茶々丸に着替えを要求する。
 
「どうせあの程度の雑魚に手間取ってるようじゃ、あのクソ親父を越えるのは夢のまた夢だからな……」
 
 ネギにとっての目標はあくまでナギ。カゲタロウやフェイトに手間取っている暇は無い。
 
 着替え終わったネギは、見舞いの品の中からリンゴを手に取るとそれを囓り、
 
「さてと……、どっかに良い修行場は無いもんかね、と」
 
 茶々丸から渡された地図を広げてどうしたものか? と悩んでいると、新たにやって来た見舞客がヒントをくれた。
 
「ここにオアシスがある」
 
 横から伸びた繊手はエヴァンジェリンのものだ。彼女の指さすのはグラニクスから少し離れた場所にある地点。
 
「ここにラカンの奴が住んでいるそうだ。……どうする? ぼーや」
 
 挑発するようなエヴァンジェリンの問い掛けに対し、ネギは唇の端を吊り上げ、
 
「上等上等♪ “紅き翼”のメンバーだろ? 相手にとって不足無しだ」
 
 だが、問題が一つ。
 
「……拳闘大会のトーナメントの方か。まあ、小太郎一人でも大丈夫だろうけどなぁ」
 
「ふん、それなら私がぼーやの代理で出場してやるさ」
 
 面倒臭がって出ないだろうと思われたエヴァンジェリンの参戦表明にネギは驚きを隠せない。
 
「……どういう風の吹き回しだ?」
 
「ふん、どうも暫く姿を消していた間に、私への恐怖心というものが薄れているようだからな、ここらで私の実力を見せてやろうと思ってな」
 
 なにしろエヴァンジェリン・A・K・マクダウェルといえば、ナギ・スプリングフィールドと同じくらい魔法世界では有名人だ。
 
 かの大悪党の正体が見た目、幼い女の子と知った賞金稼ぎ達が勝てると勘違いして次から次へと襲いかかってくるのが正直鬱陶しいことこの上ない。
 
 要するに、無駄な戦闘は好まないのだ。この自称大悪党は。
 
 ネギは小さく鼻で笑い、立て掛けてあった愛杖を手に取ると窓に足を掛け、出掛けの挨拶も無しにオアシスへと飛び立った。
 
 その直後、数枚の紙を手にした美空を先頭に何人かが病室に飛び込んで来る。
 
「大変大変! 行方不明の人達から連絡がきたよ!!」
 
「ほう。……で? 誰だ一体?」
 
 その場に居た皆を代表してエヴァンジェリンが問い掛ける。
 
「んー……、盗聴を気にしてかイニシャルでしか書いてないんだけど、多分アスナと桜咲さんが一緒にこのか探してるみたい。
 
 他にはいいんちょとネカネさんと高音さんが一緒。
 
 釘宮は双子の姉と茶々丸シスターズと一緒。
 
 ザジさんとヘルマンの旦那とスライム’sと翼竜が合流。
 
 それと朗報が一つ。龍宮さんがマクギネスさんが助っ人に呼んだ高畑先生と天ヶ崎先生と合流したらしいッス」 
 
「ほう……。となると、後行方不明なのは──」
 
 明石・裕奈、綾瀬・夕映、古菲、近衛・木乃香、早乙女・ハルナ、佐々木・まき絵、超・鈴音、長瀬・楓、宮崎・のどかに、アーニャとカモの10人と1匹。
 
 どいつもこいつも一癖も二癖もあるような奴等ばかりだ。問題はあるまい。
 
 ひとまずの安堵を得ると同時、朝倉と茶々丸。そして相坂・さよの三人からなる捜索班が残りのメンバーを捜す為、最終的な打ち合わせを開始した。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 ネギは病室を飛び立ってから小一時間ほど飛行し、目的のオアシスを発見した。
 
「……ここがジャックの隠れ家か?」
 
 取り敢えず湖の中央付近の桟橋上に昼食が用意されていたので、ラカンが居ない間に美味しく頂いた。
 
「さーて、飯だ飯だ」
 
 ラカンが最後の一品を持って現れた時には、既にネギはテーブルに並べられていた料理を平らげた後。
 
「よう、遅かったなジャック。顔に似合わず、結構、料理美味いじゃねぇか」
 
 不貞不貞しい態度で告げるネギに対し、ラカンは大人の余裕を見せつけ、そのまま卓に着くと、取り敢えずネギの頭に拳骨を落として制裁を加え、
 
「……で? 何しに来たんだ? ぼーず」
 
「痛ってぇ……」
 
 涙目で呻き痛みが治まるのを待ちってから、
 
「えーと何だっけ? って、そうそう、修行」
 
「あん? 俺がお前に教えられる事なんぞねぇぞ?」
 
 ネギとラカンでは戦闘スタイルが違い過ぎるので、教えを受けても余り役には立たない。
 
 それにネギには今の戦闘スタイルを崩すつもりは無い。
 
「いや、別にアンタから何か教わろうとは微塵も思ってねぇしな。……ただちょっと新しい魔法の実験台になってくれれば文句は言わねぇって」
 
「帰れバカ野郎」
 
 即答で答えたラカンに対し、ネギはオアシスの中で最も大きな塔を見上げ、
 
「……魔導書とかあるか?」
 
「何冊かはあるが、テメェの役には立ちそうもねぇな」
 
 それほど魔法が必要でもないラカンの使える魔法は、本職であるネギからすれば既に修得している物ばかりだろう。
 
 手っ取り早く強くなる為にも、新たな魔法を修得しようとしていたネギは、どうしたものかと考え始める。
 
「……何だ? ぼーず、強くなりたいのか?」
 
「まあ、今でも充分過ぎる程に強いんだけどな。やっぱ、ハンデマッチであのクソ親父に余裕で勝てるくらいじゃないと、あのバカは絶対に負け認めねぇだろうし」
 
 ──傲岸不遜。
 
 ネギの態度に彼の父親を連想したラカンは唇を吊り上げ、
 
「強くなりてぇんなら、方法が無いわけじゃねぇ」
 
「あん?」
 
 訝しげな視線を向けるネギに対し、ラカン笑みを濃くして一言を告げる。
 
「──必殺技だ!」
 
 揺るぎない自信の下、
 
「当たれば必ず殺す技。……男なら必殺技の一つや二つ持ってなくてどうする!!」
 
 対するネギは、
 
「……ハッ」
 
 嘲るように一笑した。
 
「必殺技ぁー? 考えが古過ぎるな。……これだから、ロートルは」
 
「……何だと?」
 
 詰め寄って来るラカンに対し、ネギは一歩も引くことなく己が考えを告げる。
 
「強くなる為に必要なもの……。それは、──変身だ!!」
 
 ネギの放った言葉に、驚愕を受けるラカン。
 
「へ、変身だと……」
 
 ……確かに、それも有りだ!
 
「わ、若いくせになかなかやるじゃねぇか。……流石はナギの野郎の息子だぜ」
 
 精神的な衝撃の余り流れ出た、頬を伝う汗を拭いながらもネギへの認識を改める。
 
 ちなみに他には合体とかもあるが、それはハルナ辺りが妙な事を連想しそうなので却下した。
 
「ふむ……、それで何か心当たりはあるのか?」
 
 とのラカンの問い掛けに対し、ネギはあっさりと首を振り、
 
「いや、全然。……もしかしたら、名のある魔導書なら何かヒントがあるんじゃないかと思って、ここに期待してたんだがな」
 
「ふむ……。魔導書か……。まぁ、ここには無いが学術都市アリアドネーの図書館ならひょっとするかも知れねぇな」
 
 地図を取り出して場所をネギに教える。
 
「……この位の距離なら、2,3日もあれば行けるな」
 
 ネギの使える転移魔法の最大距離は精々数十km程度。燃費を考えると飛んでいった方が速い。
 
 それに学術都市とまでいうほどならば、さぞかし高位の魔導書もある事だろう。
 
 ほくそ笑みながらネギは杖に跨り、
 
「それじゃあ、ちょっと行ってくる」
 
 そう言い残し、ネギはアリアドネーへと向かった。
  
 
  
 
 
 
 
 
 
 
 魔法世界最大の独立学術都市国家アリアドネー。
 
 学ぶ意志と意欲のあるものならば、例え犯罪者であろうとも受け入れ、またそれを捕らえることを許さない国。
 
 その魔法騎士団候補生の中に、綾瀬・夕映の姿があった。
 
 ……とはいえ、今の彼女に以前の記憶は無い。
 
 転移直後に起きた事故に巻き込まれ、記憶喪失になっている今、彼女はユエ・ファランドールと名乗って、魔法学校に通っていた。
 
 記憶を失っているとはいえ、ネギによって教え込まれた魔砲少女としても知識と魔法は顕在であり、その実力は秀才、佐倉・愛衣と互角に戦い合える程だ。
 
 ネギが学科内容を疎かにしていた為、その辺りは素人同然であったが、元より勉強は苦手でも知識を得るという事に関してはどん欲な夕映。
 
 授業内容を悉く吸収していき、攻撃魔法以外も覚え、メキメキと頭角を現し始めた。
 
 という夕映の近況だが、ネギも既にアリアドネーに侵入していた。
 
 とはいえ、アリアドネーの中にも多数の図書館が存在する。
 
 ネギがまず目を付けたのが、貴族の子供達が通う魔法学校。
 
 青い髪の少女が黙々と本を読み続ける横を通り抜け、金髪眼鏡のキツイ印象を受ける女性にアドバイスをもらいながら、書類にサインしていく黒髪の少年を横目にネギは奥まった場所にある厳重に鍵を掛けられた扉の前にまで辿り着いた。
 
 “開錠”の魔法で鍵を開けると、音を発てないようにして侵入し、そこにあった危険度の高い魔導書を片っ端から自分の影の中へと押し込め、転移魔法を使って脱出した。
 
 次にネギが向かったのは公共機関直属の大図書館。
 
 空間を弄り外見以上の広さを持つそこでは、館内が無重力に保たれており、その中を職員達が忙しく行き来していた。
 
 その中でも凄いのは、数十にも及ぶ書物を同時に読み進めつつジャンル毎に整理していく青年だ。
 
 ……ありゃもう、魔法とかじゃなくて、個人の素質のレベルだな。
 
 ネギも読書魔法は使えるが、一度に読めるのは精々が10冊前後。
 
 それ以上は脳の処理能力の方が保たない。下手をすれば廃人となってしまうだろう。
 
 そんな事を考えつつも、本を探すふりをしてめぼしい物は影の中へと忍ばせて、何喰わぬ顔で図書館を後にする。
 
 職員達の仕事が忙しくて、ネギ一人に構う余裕が無かった事も幸いし、特に問題無くミッションクリアー出来た。
 
 そして3件目。
 
 ……というか、これは今までと同じ様にはいかない。
 
 今度の図書館は生きている人間なのだ。
 
 完全記憶能力をフル活用し、10万3千冊の魔導書を頭の中に宿した少女。
 
 生半可な手段では、彼女から知識を引き出す事は出来ないだろう。
 
 ……だからネギは、
 
「──外典5話での登場権利」
 
 そう言った瞬間、泣き出された。
 
 慌ててネギが慰め、別の条件に変えようとすると、必死になってそれを押し停めた少女は涙を拭い満面の笑顔で、
 
「そ、それで、どの魔導書を教えて欲しいのかな?」
 
 出血大サービスとか言って、50個くらいの魔法をノートに書き写してくれた。
 
「約束忘れないで!」
 
 と別れ際に手を振りながら笑みを浮かべる少女。
 
 ……彼女には酷な話だが、5話でも彼女に出番は無いのだ。
 
 4件目にネギが向かった先は、湖の畔に立てられた紅い館だ。
 
 如何にも魔女ですという格好の少女に聞いた通り、正門脇で居眠りしていた門番を力業で撃破し館に侵入。怖いメイド長と合わないように地下の図書館へと向かった。
 
 そこで夕映によく似た少女が読書している後ろを通り過ぎて本棚から数十冊の魔導書を拝借した時点で気付かれたので、白黒の魔女に教わった通りの捨て台詞、
 
「ちょっと借りて行くだけだ。……俺が死ぬまで」
 
 と嘯いて、強引に脱出した。  
 
「大漁大漁♪ ……これだけありゃ、1000まで行くんじゃねぇか?」
 
 杖に跨り、ほくそ笑みながらネギは帰路に着く。
 
 そんな夜空を駆ける人影に気付かず、夕映は一心不乱に勉強を続ける。
 
 記憶には無いが、偶にふとした事で思い浮かぶあの人に追いつけるように……。
 
  
 
 
 
 
 
 
 
 
 さて、その頃の他の生徒達の近況。
 
−明石・裕奈&佐々木・まき絵−
 
 テンペテルラという街でウェイトレスのアルバイトをしながらオスティアまでの旅費を稼いでいる最中。
 
−神楽坂・明日菜&桜咲・刹那−
 
 二人で修行しつつ、木乃香の捜索を行いながらオスティアを目指す。
 
 時折、刹那が木乃香の事が心配で暴走するが、それ以外は順調。
 
−雪広・あやか&ネカネ・スプリングフィールド&高音・D・グッドマン−
 
 凄まじい勢いでグラニクスに向けて爆進中。おそらく到着まで後3日ほどと思われる。
 
 その際、ネカネがネギに会えなかった場合の被害は考える方が怖い。
 
−釘宮・円&鳴滝・風香&茶々丸(妹)&茶々丸(幼)&チャチャゼロ−
 
 龍宮、タカミチ、千草の三人と合流。
 
 安全を確保した上で確実にオスティアを目指す。
 
−ザジ・レイニーデイ&ヴィルヘルム・ヨーゼフ・フォン・ヘルマン&スライム’s&ウィーペラ−
 
 路上パフォーマンスで旅費を稼ぎつつオスティアに向け進行中。
 
 どうやら、ヘルマンもザジとのコミュニケーションが可能らしい。
 
−近衛・木乃香&長瀬・楓−
 
 木乃香が占いで稼ぎ、彼女を楓が守りつつ、オスティアを目指す。
 
 ……明日菜達とはすぐ近くまで接近中。 
 
−古菲&超・鈴音−
 
 用心棒で荒稼ぎしつつ山奥で修行中。
 
 Nノーチラス号は超が所持してはいるものの、運行には茶々丸シスターズ全員の協力が必要な為、現在封印中。
 
−宮崎・のどか−
 
 気の良いトレジャーハンター達と行動を共にしながらオスティアを目指す。
 
 その際、幾つかの魔導具を入手し、着実にパワーアップ。
 
−早乙女・ハルナ&アンナ・ユーリエウナ・ココロウァ&アルベール・カモミール−
 
 現在、行方不明。
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